■セルフ運搬 スマホで内容充実
レントラ便の軽トラック。セルフサービス運搬は、学園祭などで活用されるケースが多い
運転手は「顧客の荷物に触らない」「トラックまで運ばない」「一切お手伝いしない」の“3ない”主義を貫き、運転だけに専念する-。そんなセルフサービスの荷物運搬が人気を集めている。仕掛け人は運送業のハーツ(東京都品川区)だ。
同社では、運転手付きトラックを1時間単位でレンタルする「レントラ便」サービスを今から6年前の2006年から展開。運転手自らが簡単な引っ越しや荷物運搬などの作業を手伝うのが売り物で、明朗で割安な価格を設定。顧客も着実に増やしてきた。
さらに、セルフサービス運搬を10年に開始、今年に入って急激に利用者が増え、1カ月の受注件数が前年の6倍まで伸びた月もあった。人気の要因は「格安引っ越しの最終兵器」(山口裕(ひろ)詮(あき)社長)というように、価格帯にある。セルフサービスを活用した場合、軽トラックの1時間料金は5040円。通常のレントラ便(6300円)に比べて20%低くしたことから、コストを重視する企業や学校などの引き合いが強くなっている。
セルフサービス運搬の効果も手伝って全体の業績も好調だ。今年に入ってからの月別の売り上げは、前年同月比30~40%増と高水準が続いている。
こうした勢いを加速させるため、新規顧客の開拓に向けた新たなサービスに、相次いで乗り出した。武器は利用者が急増しているスマートフォン(高機能携帯電話)だ。
その一つが、スマートフォンに内蔵されているGPS(衛星利用測位システム)を利用した住所入力を不要とするシステムだ。具体的にはレントラ便のスマートフォンサイトのトップ画面から「お見積り・ご予約」ページへ移行。住所欄の現在地ボタンを押せば自動的に住所が表示される。音声に対応したシステムの開発も進めている。
また、見積もり時に自動発行した番号を予約時に入力すると、見積もり情報がそのまま反映され、入力の手間が省けるサービスも実用化した。とくに繁忙期に威力を発揮するとみられ、山口社長は「女性や高齢者の雇用も進めやすくなる」と効果に期待する。カード決済についてもスマートフォンを活用できるようにする考えだ。
同社はこれまで主に、口コミを中心に顧客開拓に努めてきた。今後はスマートフォンの有効活用で顧客を増やしていく。(伊藤俊祐)
「フジサンケイビジネスアイ」