シャノンのシステムを導入した展示会で、登録する来場者
■仮想イベント空間で市場開拓
景気低迷などで一時縮小した感があった展示会が見直されてきている。こうした中、イベント・セミナーの情報処理サービスからスタートし、企業向けにクラウド型マーケティングソリューションを提供してきたのがシャノン(東京都港区)だ。
同社は過去の投資が結実し成長期に入っている。2011年5月期の売上高は前期比64.5%増の5億4081万円、今5月期も8億円強と約5割増収を目指す。
中村健一郎社長は高い成長の理由について「企業がシステムを自社開発しても5年ともたない」ことに加え、「クラウドをどんどん使おうという風潮が強まっている」ことを挙げる。IT利用への企業の考え方が大きく変わってきたことが事業拡大の追い風だ。
企業は事業のスピードを速めるためシステム開発の外部委託やASPの利用を進めてきた。リーマン・ショック以降、厳しさが増し効果的な投資はより難しく、変化の速度は高まる一方で、外部システムを利用して変化のスピードに合わせようとする機運が高まった。その時々の状況に合わせてITを活用するには、クラウド型はもってこいというわけだ。
同社自身の進化も大きい。「これまでの蓄積で信頼感が高まってきた」(中村社長)。2000年の創業以来、情報を預かるビジネスを継続した実績が、イベントやマーケティングの関係者に評価され、定着してきた。
顧客からの要望を形にすることで、こつこつとシステムを改良し、大きなノウハウが蓄積した。当初のライバルは徐々に手を引き、築き上げたノウハウは新規参入の大きな壁となってシャノンを守る。
クラウド型サービスの登場以前には不可能だったマーケティングができるようになった企業や、情報処理の専門部署を持つより時間とコストを大きく節約した企業など顧客に大きなメリットを生んだ。
同社のシステム導入には初期投資に平均で100万円台前半、継続して使う場合、月額利用料は同じく約15万円かかる。まだ導入可能な潜在市場は、130億ないし165億円はあるとみている。
展示会やセミナーの情報処理からスタートした同社はいま、イベントビジネスの革新に動き出した。クラウド型システムの大手、米セールスフォース・ドットコムと提携し、「バーチャルイベントプラットフォーム」の開発に乗り出した。クラウドを使う仮想イベント空間を作り出すこのシステムで、イベント市場をさらに開拓する考えだ。(広瀬洋治)
「フジサンケイビジネスアイ」