■先着50人 引っ越し代ゼロ円
レントラ便が提供しているサービス。運転手が引っ越し作業も行う
運転手付きトラックのレンタル事業を展開するハーツ(東京都品川区)は、不動産業のインベスターズ(福岡市博多区)が運営する賃貸仲介のチンタイズと提携した。これに伴い「引っ越し代ゼロ円キャンペーン」というサービスを導入した。
ハーツは「レントラ便」として関東圏を中心に事業を行っている。運転手が作業を手伝う仕組みで、30分から利用でき、簡単な引っ越しや文化祭の荷物運搬などに利用されている。同社の山口裕詮(ひろあき)社長は引っ越し、宅配便に続く第3のサービスと位置づける。業績も好調。1カ月当たりの平均売上高は、前年同月比20~30%台増のペースで伸びている。
一方、提携先のチンタイズは、家賃の1カ月分である仲介手数料を取らない「タダギメ」という物件を1000件以上取り扱っている点が売り物だ。
タダギメ物件と引っ越し代ゼロを組み合わせれば、家探しの初期投資が大幅に引き下げられるため、顧客の評判が高まり、結果として知名度の向上につながるとの思惑で一致。提携に至った。
キャンペーンは先着50人までで、(1)チンタイズでタダギメを成約(2)引っ越し区間が東京23区内(3)25平方メートル未満の部屋へ引っ越す-が条件となる。
今回のキャンペーンが終了した後は、第2弾の導入も計画している。対象は東日本大震災によって被災した岩手、宮城、福島の住民で、首都圏のタダギメ物件への引っ越しを希望する世帯。敷金・礼金もゼロの物件を極力紹介するようにし、4トントラックで対応する。その分、日時指定となる。
実は山口社長、震災の翌日に当たる3月12日から20回以上にわたって、被災地を訪問。無料で運搬、配送するボランティア活動を継続している。活動に当たってはツイッターやフェイスブックなどを駆使。「現地では何が不足しているのかといった情報を、随時発信している」(山口社長)。
こうした活動を通じ、支援の輪も広がって、ハーツの下に多くの支援物資が集まるようになり、4トントラックが満杯になれば被災地に向かう。東京に本社を置く他の中小企業経営者らとも新たに交流をスタートするなど仲間も増えた。当然ながら、現地住民からの信頼度も抜群で、東京や千葉へ避難する人の引っ越しも手伝ったことがある。
引っ越し代ゼロ円キャンペーンという取り組みは、山口社長の被災地に対する思いを踏まえて新たな形に発展し、ハーツの事業戦略を支える上で重要な役割を果たしそうだ。(伊藤俊祐)
「フジサンケイビジネスアイ」