孤独な気持ちを抱くお年寄りとシングルマザー(母子家庭)が支え合って楽しく暮らす-。生活支援会社「ナウい」(東京都杉並区)は、そうした世代間交流を促進する「シェアハウス生活支援サービス」を11月から本格展開する。東京都に申請中の特定非営利活動法人(NPO法人)「世代間交流生活推進協議会」などと連携しサービスを提案。東日本大震災を機に再認識された「人とのきずな」を深める一助となりたい考えだ。
「1人で過ごすのが寂しい」「もっと人に役立ちたい」「楽しい生活を送りたい」-。
同社の桑山裕史社長は、明治大学卒業後に大手通販ベルーナに入社。そこで顧客宅を直接訪問する外商の業務に従事した。その際に、多くの単身中高年が発したのが3つのフレーズだった。桑山社長は、営業活動に励む中で「統計で表せない顧客のニーズを大切にしたい」という思いを強め、2009年にナウいを創業した。
そうした姿勢で普及を目指すサービスが、一つの家を複数の人と共有して暮らす「シェアハウス」方式の世代間交流支援。生活支援の専門家で構成されるNPO法人などと協働で取り組む予定で、同法人の一員としてナウいも加わる。
流れはこうだ。仮に世田谷区の一軒家で1人で暮らす70歳の女性が「食後の団欒(だんらん)」を夢見てシェアハウス生活に関心を抱いた場合、まずNPO法人が案内・運営する生活体験会への参加を申し込む。
次に体験会で単身女性は、特設会場で一緒に食事を作り食べる企画などで、シングルマザー世帯と実際に交流する。
単身高齢者の自宅で行われたシェアハウス体験会の対面の瞬間
共同生活を送る物件のパターンの一つが、単身高齢者が保有する建物の未使用の部屋にシングルマザー世帯が入居する形。体験会では、サービスや入居物件の説明も行われる。
単身女性が複数の体験会を経て気の合う世帯を見つけると、ナウいが個別面談の場を設定。そこでの合意を踏まえ、オーナー(単身女性)と入居者(シングルマザー)が賃貸借契約を取り交わし、単身女性が賃貸料などを受け取る。
ナウいは、入居後にトラブルが発生しないよう共同生活の運営ルールを決めるほか、スタッフを定期的に巡回させて生活上の相談にも応じる。入居成立時などに家賃の一定割合を成功報酬として受け取る。
桑山社長は「単身高齢者世帯は年々増加し約400万人に達する一方、シングルマザー世帯が安心して暮らせる温かい住居を求めている。双方のニーズを結びつけ、年間で50件のシェアハウス生活を実現したい」と意気込んでいる。(臼井慎太郎)
「フジサンケイビジネスアイ」