エーアイ・吉田大介社長
音声合成技術開発を手掛けるエーアイは、機械的に合成した音声ではなく、人の声を合成した自然な音声の自動読み上げシステム『AITalk(エーアイトーク)』を提供している。主に防災行政無線や電話の自動応答などの用途で自治体や企業に採用されている。6月27日に東証マザーズ市場に新規上場した、吉田大介社長は、音声合成以外の多様な技術開発にも取り組む考えだ。
◆ドコモアプリで躍進
--音声合成技術が使われている分野は
「防災行政無線や全国瞬時警報システム(Jアラート)のような防災分野、テレホンバンキングなどの電話自動応答システム、ゲームなどに活用されている。ほかに人型ロボットのペッパーにも採用されている。日常の幅広い場面で使用されているので、当社でも全てを把握しきれていない。売上高の8、9割は企業など法人向けが占める。個人向けにはパッケージソフト『VOICEROID(ボイスロイド)』を販売している。主にユーチューブ用動画のナレーションに使用されている」
--業績の推移は
「2003年の設立から4、5年は、実演してみせても『すごいね』といわれるだけで売り上げには結びつかなかった。しかし、5年目以降は防災行政無線機器メーカーに採用され、市場が形成されるようになった。13年にはNTTドコモのスマートフォンアプリサービスで、キャラクターと会話を楽しむ『しゃべってコンシェル』が始まったことで、売り上げが大きく伸びた。18年3月期の売上高は前期比30.9%増の5億9100万円、経常利益は同27.3%増の1億4700万円となった。とくに経常利益率は25%を達成し、今後も高収益を維持していきたい」
◆話し方の特徴も再現
--独自の強みは
「多くの話者の声を用意していることだ。人によって声の好みは違う。女性7、男性4、男児2、女児2の計15種類の話者のラインアップをそろえている。また収録したオリジナルの音声については声色に加えて、話し方の癖や特徴も再現する技術もある。自社で研究開発から販売まで一貫しているため、音声合成に関しては、どんな要望でも受け入れる柔軟なサポート体制を備えている」
--今後はどう事業を展開していくのか
「これまで音声合成に特化してきたが、音声認識や翻訳など、多様な技術開発を進めていく。多言語化のほか、一方向だけでなく双方向での対話にも取り組む。これらを実現するため、他社との連携を図っているところだ。とくに牽引(けんいん)役として期待しているのが、来年4月の発売を目指す業務用スマートスピーカー『AISonar(エーアイソナー)』だ。商業施設の受け付けや会議での自動議事録作成などの用途を想定している」
【プロフィル】吉田大介
よしだ・だいすけ 同志社大工卒。1977年大真空入社。東洋ハイテック、TIS、NTTアドバンストテクノロジ、国際電気通信基礎技術研究所を経て、2003年、エーアイを設立し、現職。66歳。兵庫県出身。
【会社概要】エーアイ
▽本社=東京都文京区西片1-15-15 KDX春日ビル
▽設立=2003年4月
▽資本金=9900万円
▽従業員=29人 (2018年6月末時点)
▽売上高=6億8000万円 (19年3月期予想)
▽事業内容=音声合成エンジン及び音声合成に関連するソリューション提供
「フジサンケイビジネスアイ」