小瀧龍太郎社長
サトーホールディングスは、自動認識技術を使ったハードやソリューションの開発、コンピューターシステムを構築するインテグレーションまで、一気通貫で事業を展開。本格的なIoT(モノのインターネット)時代の到来に伴い、存在感は一段と高まっている。4月に就任した小瀧龍太郎社長は「『凡事徹底』という言葉にこだわり、社内の一体感を醸成。グローバルな観点から真の“ワン”サトーを実現していきたい」と話す。
--新社長就任に当たっての抱負を
「例えば携帯電話のアプリを開発する企業の場合、『いつまでにこれを開発しなさい』といった役割分担が定められているケースが多い。一方、われわれは、顧客の経営課題の解決に向けてソリューションを販売するのがビジネス。いろいろな情報を共有しなければ成果は出せない。このため社内の一体感を強化することで、個人や部署の中にある経験値や暗黙知を国内外で連鎖させることによって、戦力を最大化させたい」
--そのためには何が鍵となるのか
「凡事徹底を貫くことだ。現代はとかく効率化が求められがち。しかし、営業担当者に技術サポートや開発担当者が同行して顧客ニーズを把握したり、きちんとあいさつを行うなど、雑にならないように配慮することが必要だ」
--こうした取り組みで成功した事例は
「プリンター関連事業のサトーテクノロジーの社長を務めたときのことだ。従来は顧客ニーズを反映させた製品になっておらず、品質が低くサービス担当者が呼ばれる頻度も多かった。このため根本的な変革が必要と判断。一体感やベクトルの方向性を合わせる意義を徹底的に説き、顧客に驚きや感動を与え続けるための仕組みをつくり、徹底化した。結果として開発期間の短縮やコスト削減など諸課題をクリアしていった」
--現在の事業環境は
「全ての企業が変革期にあり、追い風が吹いている。『合理化したい』『収益率を上げたい』といったニーズに応えるビジネスを数多く展開しているからだ」
--今後についてはどういった成長戦略を描いているのか
「現在の売上高は日本が3分の2で、残りは海外だが、2025年までに日本と海外の比率は逆転するとみている。そこに向けて日本のビジネスモデルを根付かせたい。アジアは多くの日本企業が進出しているので国内と攻め方も一緒。現在の手法を進化させていきたい。一方、欧米市場はM&A(企業の合併・買収)で広げてきた。このため提携先の力が必要となるが、パートナー経由でエンドユーザーのニーズを吸い上げるのは難しい。すでに構築されているインフラを活用しながら、やり方を変えていかなければ」
--サトーHDの企業文化で誇れる部分は
「三行提報という127文字で会社をよくするための工夫、提案を、全社員が毎日提出していることだ。すでに40年以上続いており、その中から私の下に1日当たり数十件が届く。コメントを関係部署に戻している。現場で何が起こっているかを把握でき、仕事の仕組みが変わったり、事業戦略の強化につながったりしている」
【会社概要】
サトーホールディングス
▽本社=東京都目黒区下目黒1-7-1 ナレッジプラザ
▽創業=1940年
▽資本金=84億円
▽従業員=5076人 (2018年3月末時点)
▽売上高=1134億円 (18年3月期)
▽事業内容=自動認識技術を活用したハードの開発など
【プロフィル】
小瀧龍太郎
こたき・りゅうたろう 日本工学院専門学校卒。1988年サトー(現サトーホールディングス入社)。サトーテクノロジー社長などを経て、2018年4月から現職。サトー社長も兼ねる。53歳。東京都出身。
「フジサンケイビジネスアイ」