■海の家でゼロから“船出”PR
価格比較サイトなどを展開するECナビ(東京都渋谷区)が、10月1日から社名を「ボヤージュ(VOYAGE)グループ」に変更するのに合わせ、神奈川・湘南に「海の家」を出店するユニークなプロモーションを展開している。社名変更は、1999年の創業から12年を迎え、新たな領域へとこぎ出す姿勢をより鮮明にするのが狙い。新社名とともに、自由闊達(かったつ)な社風を伝える場として、海の家をオープンした。
店名は「Beach House AJITO(アジト)」。渋谷の本社内にある、社員らが利用するバーの名前と同じで、海賊が集う場所をイメージした。藤沢市片瀬海岸の西浜海水浴場で、31日まで営業する。
看板にさりげなく新社名を入れたほか、イベントなどを通じて、同社の企業カルチャーを発信していくという。
IT企業と海の家という意外な組み合わせは、サーフィン好きの役員が、めったにない営業権の売り出しをインターネットで知ったのがきっかけ。新社名のボヤージュ(航海)にピッタリと、営業権の取得を決めた。
同社は、宇佐美進典最高経営責任者(CEO)が26歳のときに「アクシブトットコム」として創業。2005年にECナビに社名変更した。今回、価格比較サイトのサービス名として知名度が高まってきたにもかかわらず、あえて知名度ゼロの社名から再出発することにした。
宇佐美氏は「ECナビ関連の売り上げは、いまやグループ全体の3割程度。幅広い事業を展開していることを知ってもらうには、サービス名と社名を変えた方がいいと考えた」と話す。
10年9月期決算の売上高約73億円のうち、ECナビなどのメディア事業が約37%に対し、新規事業のネット広告関連が約48%、リサーチ事業関連が約15%を占める。
今年3月にベンチャーキャピタル事業に参入したほか、中国やベトナム、インドネシアなど海外進出も積極化。自らの業種を“事業開発会社”と位置づけている。「ECナビの社名に縛られていると、可能性が狭められ、新しい価値を生み出していけない」と宇佐美氏。
社内にお酒が飲めるバーを設けたのも、コミュニケーションの中から自由な発想を引き出すのが狙いという。
今後は「縮小する国内だけでは成長できない。国内事業が安定し、失敗が許されるうちに布石を打っておく必要がある」(宇佐美氏)と海外展開を加速。「生活を変える」と予測するスマートフォン(高機能携帯電話)関連事業にも注力する。
「ネットビジネスでは、新しいサービスや事業も、アッという間に陳腐化する。立ち止まっているわけにはいかない」(同)。新社名にはそんな思いが込められている。(小塩史人)
「フジサンケイビジネスアイ」