エコスタイル社長・木下公貴さん
地球温暖化を防ぐ太陽光発電など再生可能エネルギーの普及に尽力するエコスタイル。そのために提案するのが、発電事業者となって電力を売り、収益を得る太陽光投資だ。国が売電価格を保証してくれるため不動産投資のような空室リスクはなく、株式やFX(外国為替証拠金取引)のような価格急変の心配もない。子供たちに今と変わらない地球環境を引き継ぐために必要な投資と訴える。
--倒産寸前の会社を継いだ
「他では経験できないことをやらせてもらっています。2008年11月、39歳のとき、サラリーマンから突然社長になりました。当時は『社長って何するの。経営って何』という状況で、京セラ創業者の稲盛和夫さんら経営者の本を読んで考え方や精神を学びました。利益を追求しても利益は上がらず、給料も出せないほど貧乏でした。そこで無理やり商品を買ってもらうのではなく、自分は何が欲しいかを自問自答。『これなら買いたい』と思う製品とサービスを、われわれが買いたい価格で提供する仕組みを作りました」
--その後、事業は軌道に乗った
「オール電化製品の電話勧誘や訪問販売でスタートしましたが、09年から住宅用太陽光発電の補助金制度や余剰電力買い取り制度が始まったためビジネスを太陽光発電事業に転換。安くて質の高いサービスの提供という経営努力が奏功、お客さまがつくと利益率も改善しました。すべてウェブサイトによる集客なので、リスクは約束を守れないこと。トラブルに誠実に応えないと淘汰(とうた)されかねません。こうした誠実対応が顧客満足につながり、認められました。アンケートでは、顧客の92%が『ぜひ勧めたい』『勧めてもいい』と回答しています」
--提供している太陽光投資とは
「遊休地の有効利用を考えているお客さまには太陽光発電設備の購入を呼びかけているほか、土地と設備のセット購入も提案しています。国が保証する20年間固定価格買い取り制度(FIT)のもと、手元資金がゼロでも金融機関の融資により投資を始められます。20年間の売電収入による平均利回りは約10%で、確かな老後資金を得られます。老後に向けて始める投資ですから『発電年金』を商標登録しました。2件目、3件目を購入する顧客もいてリピーター率は30%超。施工実績は6970件に達しました。また1口10万円のファンド『エコの輪ファンド』も用意。15号まで完売しており、利回りは5%になります。もうからないと投資資金は集まりません」
--FIT終了後は
「21年目以降は当社が市場価格で買い取ります。買い取り料金は下がりますが、ユーザーメリット(利益)を提供します。再生エネを普及させるためです。FITがなくても投資モデルを維持し、安く提供できる努力を決して怠りません。太陽光投資は温暖化ガス削減に貢献でき、心温まる商品ですから」
--再生エネの普及にこだわる理由は
「日本は温室効果ガスを30年度に13年度比26%削減する目標を国連に提出しています。30年度の電源構成は再生エネ22~24%、原子力20~22%ですが、原子力を動かすのはつらい。世界との約束を守るには再生エネの普及が欠かせません。再生エネの普及がわれわれの使命です。自分の将来のため、子供たちの未来のための投資です」(松岡健夫)
【プロフィル】
木下公貴 きのした・まさたか
1995年神戸大経営学部卒。大学時代から会計を学び、証券会社、商品取引会社、損害保険会社などで経理・財務の仕事を経験した後、エコスタイルに入社。経営不振に陥った同社の創業者から経営権を譲り受けて2008年11月に社長就任。福岡県出身。
≪DATA≫
【趣味】
「貧乏会社だったので仕事しかありませんでした」と、躊躇(ちゅうちょ)なく「仕事」を挙げる。「ずっと仕事でしたのでゴルフでもしようかな、と昨年3月に47歳で始めました。スコアは良くないが、楽しい」と同12月には社内にゴルフ部を創設、社員の活発な交流と健康増進を図る。
【サッカー少年】
高校時代はサッカーばかり。足が速くポジションは右ウイングを任され、点取り屋として活躍した。マラソンも得意で校内マラソン大会では陸上部員に次いで2位に入った。「忍耐力は絶対負けません」
【好きな言葉】
「思えばできる」。昨年初めに、売り上げ5000億円(2017年3月期は138億円)を宣言したが、「そのためにどうするかを考えて挑戦すれば可能」と意気込む。社長就任でいやなことも経験したが、「子供には自分が体験したことを自分の言葉できっちり伝えられるようにしたい」と仕事にかける。それだけに「やり残したことはないようにする」と言い切る。
「フジサンケイビジネスアイ」