さまざまな木工機械が並び、多種多様な製品が製造されるダイワ産業の本社工場=奈良県高取町
昔ながらのヒノキのまな板や、サワラ製のおひつ、すし桶(おけ)、包丁やナイフを収納するナイフブロックなどのキッチン用品、ヒノキの風呂いす、湯桶などの浴用品といった木工品を製造しているのがダイワ産業だ。家庭・業務用を合わせると、特注品を除いた自社定番品だけでも、数百アイテムの商品があるという。
配置薬の木の薬箱の製造会社として創業。木工職人が手作りしていたすし桶の製造を機械化して量産、当時発展期にあった総合スーパーに提供することで成長を遂げた。
◆素人目線で柔軟発想
中西正幸社長(67)は「すし桶やまな板を作ってきた木工の基本的な技術がベースにあり、その上に『何でもやろう』という気があるから、他ではできないようないろんな木の商品を量産できる」と話す。実は、「社員の中に木工に関わってきた専門的な職人はいない」というが、「それが、かえって木工に対する考え方が柔軟になっている理由では」と話す。
奈良県高取町にある本社工場では、パートの女性従業員も含め、日々30人ほどの社員が、さまざまな木工機械に向かい作業している。並ぶ機械は、木材を切断する「横切盤」、曲線のカットや穴開けに使う「ルーター」、仕上げをする「ベルトサンダー」や「カンナ盤」など。一般的なものから特注品まで、50台以上に上る。
多種多様な「木の商品」作りを支えているのが、積極的な機械化だ。桶を製造するには、側板を円筒形に組むために、板の切断面に角度をつけなければならない。つまり量産するには、そういう小さな側板を速いスピードで数多く作る必要がある。この作業をだれでもできるようにと、自社で企画して桶製造のための機械を特注した。
「機械化とマニュアル化によって、まだ経験が浅いパートさんでも、安全に木工職人と同様の品質で製造することが可能になっています」と長男の中西正智専務(37)は説明する。
◆特性を徹底研究
新商品の開発やヒット商品を生み出すためには、材木の研究も欠かせない。熱や乾燥に弱いヒノキ製のまな板を、奈良県森林技術センター(高取町)と行った研究を元に、食器洗い乾燥機も使えるようにしたことで、現在も売れ続けているヒット商品となった。大手うどんチェーン店も使っているという食器洗浄機対応の「釜揚げうどん桶」は、速く乾くように特殊な表面加工を施して実現したという。
「これまでの加工技術の蓄積や、研究によって得た多くの専門知識があって商品化できたものです。素人だからこそ、5倍も10倍も考えて開発しています」と中西専務は強調する。
特注品への対応では、木の性質に応じたより適切な加工方法やコスト削減方法を提案することで、顧客からの信頼を獲得してきた。
2年前にはレーザー加工機とUVプリンターも導入。企業のノベルティーグッズなど、新たな高付加価値の商品づくりにも取り組んでいる。レーザー加工機を使い、細い線で伝統的な和柄を彫刻した箸置きや、欄間の透かし彫りのような繊細な文様が美しいディフューザーなど、「やすらぎ」「心地よさ」を感じられる製品づくりを目指すオリジナルブランド「KOMURA(木叢・木群)」も立ち上げた。
日本の木の文化と木工技術を大切にしながら、新しい木工製品づくりに挑戦し続けている。
(山本岳夫)
【会社概要】
ダイワ産業
▽本社=奈良県高取町市尾897-1((電)0744・52・2926)
▽設立=1970年
▽資本金=1000万円
▽従業員=35人
▽事業内容=国産材を使った家庭用品、業務用品、ノベルティーグッズ、特注品の製造販売
中西正幸社長
■国産材使い時代に合った製品開発
--国産材を使った木の製品作りにこだわるのは
「『国産材をいかに使うか』ということにこだわっている。日本の山にある木という素材を生かせば、製品を作り続けられるだけでなく、日本の林業の役にも立つのではないかと考えてきた。ヒノキを主に使っているが、良い商品を作るには、良い材を使わないとだめだ。『国産材を創造する』というわが社のキャッチコピーは、国産材を使って時代のニーズに合った製品を開発・提案するという意味だ」
--木製品の売れ行きが厳しい時期もあったのでは
「海外の安価な製品が市場を席巻(せっけん)し、国産品の市場が狭くなった時代があったが、国産の製品に市場が回帰するときが必ず来ると信じていた。需要が低迷した時期にも、市場回帰の時に備えて、さまざまなニーズにあった製品開発を着実に進めていた。厳しい時期にも、開発を続けていることで、新しい技術、ノウハウを習得することができ、それらが後の開発に役立っている」
--企業理念は
「基本は『ものづくり』。社員には、『ものづくり』の仕事を通じて、いろんな人と交わり、自分を成長させ、『家庭をつくる』ことも大事だと言っている。そうすることで、おのずから会社は良くなると考えているからだ」
--今後は
「さらに技術力の幅を広げ、いろんな製品を作ることで、多くのお客さんの希望に応え、より満足してもらいたい。また、ヒノキだけでなく、スギ材を使った商品も開発したい。スギ材は加工が難しいという難点はあるが、独特の良い香りがある。特に、奈良県の特産品である吉野杉は木の色合いが美しく、触れたときの感触が優しい。また新しい魅力がある製品を作ることができると考えている」
【プロフィル】中西正幸
なかにし・まさゆき 大学中退後、ダイワ産業でのアルバイト勤務を経て正社員に。全国に販売網を構築すべく営業に力を入れ、2003年創業者から会社を引き継いで社長に就任。67歳。奈良県出身。
≪イチ押し!≫
UVプリンターを使って製造されたノベルティーグッズ
■UVプリンターでノベルティーグッズ
UVプリンターで社名やロゴマーク、キャッチフレーズをプリントした木製のスマートフォン用スタンドや、まん丸でかわいいマグネット、ヒノキの木目が美しいコースターなど。企業が宣伝を目的に配布するノベルティーグッズの数々は、最新のプリント技術を使い、木の良さを生かした商品として人気だ。
シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色に、白と光沢の出るクリアを加えた計6色のUV硬化インクを採用した「UVプリンター」を使うことで、木の表面にも文字や模様がフルカラーで鮮明に印刷できる。硬化したインクははがれにくく、「木との相性も良い」という。
マスコットキャラクターのキーホルダーなど小さな商品も、成型にレーザー加工機を使用。細かくシャープな加工と鮮やかな色が印象的だ。
「フジサンケイビジネスアイ」