フュービックのアスリート採用スポーツ選考会で、ストレッチに取り組む学生ら。トレーナーと客の役はともに学生
ストレッチ専門店「ドクターストレッチ」を展開するフュービック(東京都新宿区)は、2018年度の新卒者を対象にアスリート採用を開始した。身体能力のほか、チーム競技などで培ったコミュニケーション能力の高さが期待できる“スポーツ学生”を採用したい考え。学生生活を通して部活に注力し、トップクラスの成績を残してきた選手でも、その競技に関連して生計を立てられるのはほんの一握り。スポーツ経験を生かしたキャリアを築けるよう、「アスリートの第2の人生を応援したい」との思いもあり、新しい採用制度を導入した。
◆高いマネジメント力
ドクターストレッチのトレーナーである「コアバランスストレッチトレーナー」への配属を前提として採用する。同職の募集ではこれまで、スポーツ経験のない人も含めた一般選考を行ってきたが、結果として現在所属するトレーナーの9割が元アスリートとなっている。
身体能力に優れるだけでなく、競技を通して目標に向かって取り組む力やチームをまとめるマネジメント能力を高めている人材が多いからだ。こうした実績も新採用制度導入を後押しした。
新制度ではまず、エントリーした学生にスポーツ選考会を実施。バランスボールやチューブを使ったトレーニングを行うほか、店舗で実際に行われているストレッチについてトレーナーから手ほどきを受け、客とトレーナーの両役に分かれてストレッチに取り組んでもらう。
東京、大阪など4都市の会場で複数回のスポーツ選考会を昨年12月から開催。部活後でも参加できるよう、午後7時以降の回も用意した。経団連加盟企業の選考開始時期である6月よりも半年ほど早い、3年次の12月から採用プロセスを開始したのも、部活に忙しい学生への配慮だ。
「当社が採用したいと考える、部活に真剣に取り組んでいる学生ほど卒業ぎりぎりまで引退しない。通常の就職活動時期には練習や試合に忙しく、応募してもらえない状況があった。試合や大会が少ないこの時期に短期間で採用を決め、4年生の1年間も部活に集中してもらいたい」と、同社で採用を担当する石川恵子さんは語る。2次選考、3次選考を経て、3月上旬には内々定式を行う計画だ。
◆人間性見る選考会
石川さんによれば、選考でのトレーニングはスポーツで優秀な成績を残してきた学生にとっても「かなりきつい内容」だという。「どういう表情で取り組むのか、しんどい顔をするのか、楽しんでいるのか、といった姿勢も見ている。また、他の学生が取り組んでいるときの反応も重要だ。ライバルでもある相手を応援するのか、無関心なのか、人間性が出る」(石川さん)。また、ストレッチを実際に行うことで、トレーナーとしてのカンの良さや顧客とのコミュニケーション能力を見る。
ヨガスタジオの運営やホテル事業も手掛けるフュービックは、10年にドクターストレッチ事業をスタートし、現在は海外(シンガポール、上海)を含め112店舗と、急成長を遂げている。
今後もスピード出店を続ける方針で、18年度新卒採用計画でもドクターストレッチのスタッフが採用人数のほとんどを占める。
「フジサンケイビジネスアイ」