セキュアルCEO・青柳和洋氏
■ホームセキュリティーを身近に
ホームセキュリティーをもっと身近にするために創業したSecual(セキュアル)は、窓やドアにセンサーを張るだけで異常を早期に把握できるサービスで「革新ビジネスアワード2015」の大賞に輝いた。「安価で手軽」をキーワードに、高額所得者・持ち家世帯が中心だったホームセキュリティー市場を広げ、安心・安全な社会づくりに貢献する。最高経営責任者(CEO)の青柳和洋氏は「防犯から高齢者世帯の見守り、防災まで領域を広げていく。海外進出の可能性も探る」と市場開拓に意欲を見せる。
--受賞効果は
「アワード受賞のおかげで、川崎市の第100回かわさき起業家オーディションに呼ばれてグランプリの『かわさき起業家大賞(川崎市長賞)』を受賞した。昨年度では最初で最後の市長賞だった。イベントへの出展も増え9月初めには東京・渋谷、京都のほか、米サンフランシスコのスタートアップイベントにも参加した。海外にも積極的に出ていく。現地のニーズに合うのか、その可能性を探っている」
--昨年12月の受賞時には製品がまだ完成していなかったが
「熊本地震の影響などもあり2月完成予定が5月にずれ込んだが、6月から通常販売を始めた。今後1年で1万台を販売する計画を立てたが、それを上回るペースで売れている。販売は代理店と自社EC(電子商取引)だが、全国展開するため代理店を積極的に増やし、来年6月には10社体制を実現したい。今期(17年5月期)の売り上げは3億円程度を目指す」
--事業拡大に向け資金調達を活発化させている
「受賞後に事業会社など5社から6000万円を、今年3月にはさらに1億5000万円を調達することができた。在庫商売なのでセンサーをそろえておく必要があるが、資金管理が難しく、黒字倒産もあり得る。このため8月にファイナンスのスペシャリストとしてCFOを迎え入れた。資金コントロールや資本提携などを任せる」
--ホームセキュリティー市場に参入した理由は
「国内では富裕層しか利用しておらず普及率は2%。所得の差がセキュリティー格差になっており社会的課題と認識した。われわれが提供する製品『セキュアル』は初期費用9000円から、使用料も月額980円からと圧倒的に低価格なので、残る98%を狙える。しかもIoTが盛り上がっている。日本のセンサー技術は世界的にも優れており事業展開できると判断した。IoTを使って新しいホームセキュリティービジネスを創る」
--攻める領域は
「セキュリティーの意味も変わってきた。当初は防犯だけだったが、見守り、防災も加わった。トイレなどにセンサーを張って一定時間反応しないと通知するソフトなどの開発が追い付かず見守りに参入できていないが、年末にもサービスを提供したい。防災では地震や台風などの災害情報はテレビテロップなどで情報発信されているが、居住地域にあわせた地震・災害情報や台風などの避難情報を出せるようにしたい。防災との親和性は高い」
--上場は
「5期目を狙う。20年の東京五輪に向けインバウンド系ビジネスは拡大する。例えば防犯では民泊などが普及するとセキュリティーニーズが急に増える。移民問題もある。また見守りは高齢化に伴い市場は拡大するだろうし、防災も日本は台風、地震、津波などの災害が起き得る。こうしたニーズの波に乗る」
【プロフィル】
青柳和洋あおやぎ・かずひろ PDMメーカー、デロイト トーマツ コンサルティングを経て2014年イグニション・ポイント設立し代表取締役。15年6月スピンオフとしてSecualを設立しCEO就任。36歳。群馬県出身。
【会社概要】セキュアル
▽本社=東京都渋谷区渋谷2-22-6
▽資本金=2億1630万円
▽設立=2015年6月2日
▽社員=15人(パート、アルバイト含む)
▽事業内容=スマートセキュリティー製品の開発・製造・販売などとその運営サービスの提供
「フジサンケイビジネスアイ」