日本の原風景の代名詞、茅葺(かやぶ)き屋根の民家が減少する中、茅葺き屋根の工事などを手掛ける「山城(やましろ)萱葺」が今年2月に発売した、建物に茅葺きを部分的に取り付ける「茅の庇-ひさし-」が話題を集めている。門や室内の一部に手軽に設置可能で、原料となるイネ科の植物ヨシが群生する河川の環境保全にもつながるという。
茅葺き屋根をデザインした山城萱葺の「茅の庇-ひさし-」=京都府城陽市
山城茅葺は、戦前から宇治川に生えていたヨシを採取し、業者に販売していたのが始まり。現在の5代目社長、山田雅史氏が法人化した。ヨシは茅葺きのほか、紙などの原料としても使用される。同社は現在、茅葺き屋根の工事も手掛ける。
茅葺きは、乾燥させたヨシを屋根に隙間なく敷き詰める。日本では戦前まで農村地域を中心に広く普及していた。しかし戦後、瓦の普及や、火災時の外壁の延焼につながる素材の使用を制限する法規制などにより、次々と姿を消した。
ヨシには水中の窒素やリンを吸収し、水を浄化する作用があるが、茅葺き屋根の減少で刈り取られないまま放置されるヨシが増え、近年は腐敗したヨシが川の水を汚すなど環境問題になっている。
「フジサンケイビジネスアイ」