ハグカム・道村弥生社長
子供向けオンライン英会話サービス「GLOBAL CROWN(グローバルクラウン)」を運営するハグカム(東京都渋谷区)が、本格的にサービスの拡大に乗り出している。2020年に向けた文部科学省の英語教育改革をにらみ、未就学児からの英語教育に親世代の関心が高まることは必至とみており、道村弥生社長は「子供たちが学びたいと思ったときに知的欲求を満たせるような良質な教育環境をつくりたい」と意欲を示している。
◆イラスト使い楽しく
グローバルクラウンは、3~10歳を対象にした子供向けのオンライン英会話サービス。スマートフォンやタブレット端末を使って、マンツーマンで英会話のレッスンを受けられるアプリを提供している。
子供たちが集中できる20分を1回のレッスン時間に設定。「自宅でできる“おうち英会話”なので、親が送り迎えする必要がなく、子供のペースに会わせてレッスンを受けられることが評価されている」(道村社長)という。
子供向けに特化した独自のカリキュラムで、イラストを使いながら楽しく英会話を学んでいく。「生徒の9割がサービスに満足してもらっている」という。
講師は日本語と英語が両方話せる若い世代の登録者が多い。秋田の国際教養大学(AIU)や国際基督教大学(ICU)、立命館アジア太平洋大学(APU)などで学び、「子供とのコミュニケーション能力が高く、発音がきれいであることを基準に講師を選定している」(道村社長)という。
道村社長は「生徒が困ったときにも、日本語でフォローできるので、親が英語が苦手でも安心して任せてもらえる」と話し、既存の外国人講師によるオンライン英会話レッスンよりも、この世代の子供たちのレッスンには適していると強調する。「おにいさん、おねえさんの先生と実際に会って交流できるイベントなども用意しており、英語が好きになる仕掛けを盛り込んでいる」という。
さらにハグカムは3月から、グローバルクラウンのレッスンを幼稚園や保育園、学習塾などの事業者向けにもサービスの提供を始めた。バイリンガル講師が少ない地域でも、手軽にオンライン英会話を受けてもらうのが狙いだ。
まず、第1弾として、鹿児島県鹿屋市のつるみね保育園で、週2回(各20分)のグループレッスンを始めた。タブレットの画面をスクリーンに投影し、あいさつや自己紹介、感情表現などを中心に、日常で使える英会話フレーズを学ぶ内容だ。
◆国の教育改革にらむ
ハグカムが、未就学児からの英語教育に力を入れる背景には、2020年までに行われる文科省による英語教育改革がある。「特に3~5歳の未就学児は、改革後の英語教育を全て受けることになり、入学試験などでも、聞く、話す、読む、書くの4技能が求められる世代となる」からだ。
また、IQや学力など数値化が可能な能力である「認知スキル」に対し、やり抜く力や社交性など人間が生きる基盤となる能力である「非認知スキル」が注目されている。道村社長は「幼少期は非認知スキルが伸びやすい時期であるという専門家による指摘もあり、人間の総合力を伸ばせるようなレッスンにしたい」と話し、英会話によるコミュニケーション能力養成の重要性を強調する。
もちろん、インターナショナルスクール(プリスクール)に通わせることができれば、保育の用途を満たし、ネイティブの先生と接するため、上達スピードが速い。しかし、「月謝が高く、富裕層でなければ、通い続けるのは大変」という。
グローバルクラウンは、月謝を1.2万円から1.8万円程度に抑えることで、多くの家庭が良質なレッスンを受けられる環境の提供を目指す。道村社長は「英語学習を日常的に繰り返すことができる環境を与えることが何よりも大事だ」と話し、オンラインレッスン事業のさらなる拡大を目指している。(小島清利)
≪Q&A≫
■幼少期の原体験が影響
--英語学習サービスを立ち上げた理由は
「子供たちに対する投資について数十人の親にアンケートした結果、『英語の習い事に困っている』との回答が多かった。市場規模もあり、親のニーズもあるならば、子供にとって良い学ぶ場を提供することに意義があると判断した」
--教育に対する思いが強いのは
「両親、祖父母が全員教員の家庭に育った影響があるかもしれない。内向的だった幼少期に、両親による好奇心を育む接し方や愛情のおかげで人一倍好奇心が旺盛な性格になった。幼少期の原体験が人間形成に大きな影響を与えていると感じ、子供向けの教育サービス事業を立ち上げた」--幼少期に英語学習を体験する効果は
「英語学習を始める時期については、さまざまな議論がされているが、一般的には『英語耳』や『英語脳』ができあがるのは6歳前後までといわれている。日本人が英語に苦手意識を持っているのは、発音とスピーキングといわれているが、発音に関しては幼少期から慣れていくことが非常に大事だ。グローバルクラウンでは、会話中心のレッスンを子供たちに提供することで、英語を英語のままで理解し、会話フレーズをどんどん覚え、英語に対する苦手意識を取り除くことを目指している」
【プロフィル】道村弥生
みちむら・やよい 明治大商卒。2007年サイバーエージェント入社、子会社の立ち上げや本体の人事本部で採用などを担当した後、Ameba総合プロデュース室室長を務める。複数の事業経験を経て15年独立。神奈川県出身。32歳。
◇【会社概要】ハグカム
▽本社=東京都渋谷区神南1-20-15 国際101号館7階
▽設立=2015年9月
▽資本金=6462万5000円(資本準備金含む)
▽従業員数=11人(アルバイト含む)
▽事業内容=子供向け教育サービス事業
「フジサンケイビジネスアイ」