球状太陽電池「スフェラー」を製造販売する「スフェラーパワー」の井本聡一郎社長=JR京都駅前
世界的に二酸化炭素の削減と省エネルギーが課題となる中、「スフェラーパワー」(京都市中京区)が展開する太陽電池「スフェラー」が少しずつ販路を広げている。パネル型が主流の他社製品に比べ、同社の製品は球形をしており、ガラスに取り付けても重たい印象にならないという。建物が美しく仕上がるため、国内外の建築家も注目。同社は将来的に生産能力を増強し、ニーズに応えたいとしている。
同社は、光半導体メーカーの京セミ(京都市伏見区)の太陽電池の開発部門を分社化する形で設立された。
この研究開発に携わっていた井本聡一郎さんが現在、スフェラーの社長として普及に取り組んでいる。
スフェラーは「スフェリカル・ソーラー」の略。球状の太陽電池という意味をこめた。
京セミが炭鉱の町として栄えていた北海道上砂川町に製造拠点を構えた際、鉱山の縦穴を利用した無重力の実験施設の存在を知り、その施設で半導体に使うシリコンを球状化する開発をしたのが始まりという。
主流となっている他社製品は、黒色の大きなパネルを使用しており、パネルを太陽の方角へ向けて設置する必要があるという。
これに対し、小さな球形のスフェラーは、あらゆる方向からの光で発電が可能。置き場所に制約が少ないという。デザイン性に優れているため、ガラスなどと一体化させ、建物の窓や壁面などに使用するのを推奨している。
特にガラスに取り付けたときの見た目の美しさなどが高く評価され、ガラス大手の旭硝子と取引を開始。再開発中のJR京都駅前の自転車置き場に、スフェラーを内蔵した案内板6台も設置された。日中に生み出した発電で約6時間、照らすことができるという。
消費者向けには、ランタン形とペンライト形の製品を販売している。
ランタン形は東日本大震災が発生した年の2011年に発売された。節電意識の高まりなどを受けて、売れ行きは好調という。
あえて家電量販店などを避け、セレクトショップなど価格は高めでもデザイン性の高い商品が好まれる店を選んで販売している。
数年前、パリに新設される美術館のガラス壁面に製品を使用したいという申し出を受けたが、生産能力が足りずに断った苦い経験を機に、対応力を高めるための分社化を決めた。量産体制の整備が今後の課題だ。
年内は販売実績をあげて顧客からの信頼性を高め、近い将来、大規模な設備投資に踏み切るのが目標という。
井本氏は「製品の普及を進め、街の景観美化につなげたい」と話している。(栗井裕美子)
◇【会社情報】スフェラーパワー
▽本社=京都市中京区蒔絵屋町267 烏丸二条ビル2階
▽設立=2012年5月
▽資本金=8億円(2016年2月現在)
▽従業員=13人(正社員のみ)
▽事業内容=球状太陽電池の製造販売など
「フジサンケイビジネスアイ」