「赤ちゃんを産む女性の気持ちを知ろうと、おなかに重りをつけて車の乗り降りをしたこともある」と話す松沢香奈波さん
タクシーやバスを運行する国際自動車(東京都港区)で、タクシー運転手をしている。同社は全部で約4400人のタクシー運転手が勤務しているが、女性運転手は120人ほどしかいない。日本全体でも女性のタクシー運転手は、まだ非常にまれな存在だ。
三鷹市にある営業所から仕事に出る。出勤日は1カ月間でほぼ11回。1回の勤務で朝8時から翌朝4時まで働く。休憩時間もあるが、つらく感じるときもある。
運転しながらタクシー待ちの客を探したり、電話で予約を受けた客を自宅などまで迎えに行ったりして、目的地まで早く安全に送る。「夜遅く乗る女性のお客さまは、女性運転手だと安心するようだ」という。
妊娠している女性も通常と同じ料金で、病院に送り届けるサービスをしている。あらかじめ女性客の住所と通っている病院を聞いておき、出産が近づくと車で自宅にかけつけ病院に向かう。「今までに夜中に3回、病院に送った」ことがある。
自宅に着くと女性客を励まして車まで体を支え、荷物も持ち運ぶ。赤信号で停車したり、カーブを曲がったりするときは乗客をいたわり、揺れないように優しくブレーキを踏む。「病院に着くと、無事に元気な赤ちゃんが生まれるようにと、祈りながら見送っている」。女性ならではの心遣いを大切にしている。
◇【プロフィル】松沢香奈波
まつざわ・かなは 事務職を目指したが、女性が少ない職場で活躍したいと大学卒業後、2014年に国際自動車に入社。2種免許は入社後に取得した。24歳。東京都出身。
「フジサンケイビジネスアイ」