災害用トイレ、地下水活用し衛生的に

株式会社井戸屋 掲載日:2016年2月11日


20160215-bsl1602110500001-p1.jpg
「井戸屋」が手掛ける防災用井戸。災害時の生活用水確保の必要性から注目が集まっている=神奈川県茅ケ崎市

「井戸さえあれば、生活用水が自由に使える。今後の災害対策にも大いに役立つはずだ」。こんな思いから設立された井戸掘り専門会社「井戸屋」(神奈川県茅ケ崎市)。1995年1月17日未明に発生した阪神大震災の被害を伝える新聞の写真に、綾久(あや・ひさし)社長(68)が心を激しく揺さぶられたのがきっかけだった。

◆「阪神」が契機

写真は、生活用水を求めて並ぶ被災者の姿と、都会に残った井戸の周囲で洗い物をしながら、ほっとした表情を見せる主婦の姿を映し出していた。

もともと、建設会社を経営していた綾社長だったが、同震災を契機に、「災害発生時、井戸はまさに“命の水”を供給する」として、「忘れ去られていた井戸の存在」に着目。狭いスペースでも井戸掘りが可能な技術を独自開発し、震災翌年の9月にグループ会社として「井戸屋」を設立した。

非常時の生活用水の確保のため、個人住宅の庭や公園など、さまざまなニーズに応じた井戸掘りを次々手がけ、現在までに首都圏を中心に約2000件の実績を誇る。最近では、長年使用されていなかった古井戸を復活させようとする動きも増えているという。

2011年3月11日の東日本大震災では発生直後から被災地入りした。津波で壊滅的な被害を受けた宮城県石巻市では沿岸部から高台へと集落の移転を図るプロジェクトに工学院大学(東京)と産学連携で参加した。水道が敷設されていない高台に井戸を掘るなど、生活用水の確保に奔走。被災地での活動を通じて、目の当たりにしたのが「トイレ問題」だった。

震災の避難所に設置されたトイレは仮設トイレがほとんどで、汚物が滞留することによる衛生状況の悪化が指摘されていた。その結果、「トイレに行きたくない」と排泄(はいせつ)を我慢したり、飲食物の摂取を控えて体調を崩す被災者が相次いだのだ。

「日常生活で最も水を消費するのはトイレ。日本人は衛生的な生活に慣れており、災害時であっても、普段家庭で使用しているような水洗トイレを整備する環境づくりが重要」と力を込める。

◆太陽光でくみ上げ

そこで開発したのが「災害用トイレシステム」だ。深さ30メートルの井戸を通じて得た地下水をポンプでくみ上げ、災害用水洗トイレに使うもので、公園や病院、集合住宅などでの設置を目指している。トイレは組み立て式で通常はケースに防災倉庫で保管。災害時にはスパナを使って約10分で設置できる。トイレ全体を使用する際はテントで覆って個室化する。平常時は、下水管につなげた管の上にベンチを置いたり、自転車置き場にしたりすることで用地を有効活用できる。災害用トイレとして政府の助成金対象ともなっている。

手動でも井戸水のくみ上げは可能だが、太陽光発電装置を組み合わせることで得た電力でモーターを回し、ポンプを動かせるのがミソ。普段は公園にある樹木への散水や、小川のせせらぎとして使用することも提案する。井戸水を使用することで水道料金の大幅な削減を図れることも魅力の一つだ。

同システムは、14年2月に茅ケ崎市内の公園に設置されたことを皮切りに、神奈川県内を中心に団地や介護施設などでの採用が相次いでいる。

綾社長は「清潔な地下水が安定的に供給できる日本の国土は井戸の普及にもってこい」と強調、「人口が密集している首都圏などで震災が発生すれば、トイレ不足は深刻。災害用トイレの普及を通じて、社会貢献を果たしたい」と話している。(川上朝栄)

【会社概要】井戸屋

▽本社=神奈川県茅ケ崎市堤587

▽設立=1996年

▽資本金=4000万円

▽従業員=13人

▽売上高=2億3400万円(2015年度見込み)

▽事業内容=井戸施工業


20160215-bsl1602110500001-p2.jpg
綾 久社長

■病院や老人福祉施設に売り込み

--災害用トイレの現状は

「東日本大震災では、停電、断水などが数週間にわたって続いた。特にひどかったのが避難所における非衛生的なトイレの環境で、段ボール箱にポリ袋を敷いたトイレなどを導入するケースが多く、悪臭の発生は避けられなかった。首都圏で同規模の震災が発生すれば、簡易トイレだけではまかないきれない。しかし現状では、衛生面の改善にまで着目している自治体は少ない。災害対策の中でもトイレ問題は後回しにされている印象だ。災害用水洗トイレの導入を自治体に呼び掛けていきたい」

--すでに災害用水洗トイレを導入したところではどのような反応が見られるか

「神奈川県茅ケ崎市の大型団地で先行的に導入したが、デモンストレーションを行ったところ、特に関心を寄せていたのが女性だった。震災が発生した場合、非衛生的なトイレに対する嫌悪感を最も示すのが女性だ。水洗化を図ったことで『ほっとした』との声が多い」

--井戸水を活用することによるメリットは

「まず、水道代の大幅なコストダウンを図ることができる。1人が1日で使用する水の量は約330リットルで、最も使用量が多いのがトイレだ。トイレはそもそも飲料用の水を使う必要がなく、井戸水で代用できる。職員100人規模の事業所の場合、水道水を井戸水に切り替えるだけで、年間100万円超のコストダウンが見込める計算だ」

--今後の展開は

「災害拠点病院や老人福祉施設など、災害発生時にライフラインが断絶された際のリスク対策として生活用水の確保が必要になってくる。これらの施設に対しては積極的に井戸水を活用した災害用トイレの導入を促していきたい。地域住民を守るためにも、井戸水活用のノウハウを伝えていきたいと考えている」

                   ◇

【プロフィル】綾久

あや・ひさし 国学院大文中退。建設会社役員などを経て、1996年に「井戸屋」を設立、社長就任。現在、総合建設会社「三和工業」(神奈川県藤沢市)の社長も務め、ミネラルウオーター販売なども手がける。68歳。徳島県出身。


                  20160215-bsl1602110500001-p3.jpg
女性でも簡単に組み立てられる災害用水洗トイレシステム「iDotecToilet(イドテックトイレ)」

  ≪イチ押し!≫女性でも短時間で組み立て簡単

 

災害用水洗トイレシステム「iDotec Toilet(イドテックトイレ)」。開発に向けて、井戸屋では宮城県女川町の社会福祉協議会などの協力を得て、東日本大震災発生時のトイレ状況に関するアンケートを実施した。

その結果、衛生面では「水洗化は必要不可欠」で、「短時間に組み立てることができる」ことも重要なポイントであることが分かった。それらの声に耳を傾けたうえで開発したのがこのトイレシステムだ。

工具があれば女性でも簡単に取り付け可能で、深さ約30メートルからのくみ上げは通常は手動ポンプ。利用者が増え、水が大量に必要になる場合などに備え、太陽光発電システムを組み合わせた電動ポンプを併設することも可能。停電時にも稼働でき、「新たな防災インフラ」として普及を目指す考えだ。

「フジサンケイビジネスアイ」

お問い合わせ先

株式会社井戸屋


 
キーワードからプレスリリースを検索する
タイプからプレスリリースを検索する
SPECIAL CONTENTS 新聞社が教える
プレスリリースの書き方

記者はどのような視点でプレスリリースに目を通し、新聞に掲載するまでに至るのでしょうか? 新聞社の目線で、プレスリリースの書き方をお教えします。

キーワードから新聞掲載情報を検索する