【35歳からの転職ウラ事情】(9)雇う・雇われる側の視点に隔たり

■ルーセントドアーズ社長・黒田真行氏

求人企業と求職者の間を橋渡しする転職エージェントをしていて感じることの一つに、「雇う側の視点」と「雇われる側の視点」の間に横たわるギャップの大きさがあります。

求職者が転職を検討する理由の多くは、人間関係と収入アップ。社風や人間関係は、実際に入社したり、配属先部署が決まったりしないと分からないこともあり、転職活動時の視点は、どうしても数字で測ることのできる「年収」に集中しがちです。業界や仕事内容も重要なのですが、求人選択時のスクリーニング項目となるため、年収ほど温度感は上がらないのが実態です。そして、この年収への視点が、雇用されている期間が長ければ長いほど「自分の経験(過去)に、いくら支払ってもらえるのか?」という文脈に陥りやすくなります。

一方、求人企業が人材を雇用する最大の理由は、労働力の拡充による収益の向上です。ちなみに労働力の拡充方法には、人材の雇用以外に、業務委託、代理店、フランチャイズ、業務提携など幅広い選択肢があります。これら雇用以外の選択肢の多くは、成果が上がればコストが発生する成果比例型になっています。雇用という方法だけは、経営者からすると先行投資的なリスクを含む労働力拡充手法ということになります(もちろん、従業員ならではのコミットメントの深さという利点もあるのですが)。そのため、経営者が雇用判断するときの視点は「この人は今後(未来)に、いくら稼いでくれそうなのか?」という投資的な観点になりやすいのです。まとめると以下のようになります。

【求職者視点】「過去の実績を基準に、自分をいくらで買ってもらえる会社か?」(過去×現時点の自分×値段)

【求人企業視点】「今後の成果予測を基に、いくらまでなら投資できる人材か?」(未来×適応変化の可能性×予測収益)

この両者の間に流れる“河”は、想像以上に深いというのがこの仕事を通じて感じる実感です。なにしろ、「今の自分はいくらもらえるのか?」を知りたい求職者と、「あなたへの投資はどれくらいの収益をもたらすのか?」を確認したい経営者とのコミュニケーションですから、当然すれ違いも多く発生します。これは、善しあしの問題というより構造的なギャップです。

逆に今後、転職を考える方には、このギャップを上手に利用していただきたいと考えています。1件の求人に平均27人といわれるライバル候補者の多くが、上記の求職者視点を持って面接に臨んでいるとすると、求人企業視点に寄り添った形でアプローチできるだけで差別化できるということです。営業職で言えば、「競合以上に顧客の立場に立って、課題を整理し、製品やサービスを提案していく」という行動に該当します。

この製品やサービスが、転職では自分自身に置き換わるだけです。この、能動的な売り込みアプローチは、想像以上に効果を発揮するはずです。

                   ◇

【プロフィル】黒田真行

くろだ・まさゆき 1989年リクルート入社。約30年にわたり転職・中途採用サービスの企画に関わる。2006年から8年間「リクナビNEXT」編集長。14年にルーセントドアーズを設立し、日本初のミドル向け転職サービス「Career Release40」(http://lucentdoors.co.jp/cr40/index.html)を提供している。

「フジサンケイビジネスアイ」

 
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