【作戦会議 成長へ次の一手】大栗芙実子氏×江幡哲也氏対談

新聞掲載PDF

20150522-bsg1505220500005-p1.jpg

■事業で「世の中どう変わるか」が大事

技術であったり、開発力であったりと確かな魅力ある経営資源を持っているのに、期待に見合う成果が得られない「もったいない企業」が殻を破るにはどうしたらいいのか。成長を促す方法を模索し、提案しているOKURICOMPANYの大栗芙実子社長が、総合情報サイト「All About」を運営するオールアバウト代表、江幡哲也氏と対談した。

大栗 見どころがあってもそれを生かせていない企業が多い中、江幡さんは、ビジネスを次々に創り出して成功させています。「立ち上げ屋」とも呼ばれていますね。

江幡 リクルートにいたころには、数え方にもよりますが、今でいうと30ほど新規事業を立ち上げました。好きなんですね。立ち上げて、成功させることが。新規事業という言葉の響きに誘われて気軽に取り組んでみる人は多いけれど、実際には立ち上げる段階になって成功の確率の低さを感じて多くの人がひるむのですが、ぼくはそれが嫌いじゃなかった。

大栗 成功の秘訣(ひけつ)を聞かれることが多いと思うのですが。

江幡 秘訣は一つしかなくて、それは成功するまでやるということです。やっている途中で失敗するとは思わない。

大栗 壁を経験したことは。

江幡 IT関連製品の導入担当者を会員にしたうえで、製品を提供する企業とマッチングをさせるサービスを作ったときには、会員集めに苦労しました。1995年のころで、まだインターネットで集められる時代じゃない。そこで幕張メッセなどの大規模イベントに、10人のアルバイトを動員して、イベント来場者に声をかけ、名刺交換をして、会員登録をしていきました。

大栗 地道にクリアしていったのですね。

江幡 未来を信じること、何をしてでも目標ラインを超えるために行動できることが、大事ですね。その苦しさをどう感じるかが、成功するかしないかの違いかもしれません。

大栗 アイデアは大切ではないですか。

江幡 大切ですが、アイデアだけなら今の時代は誰でも作れます。中学生、高校生でもビジネスプランを持ち込んできますから、アイデアそのものには優位性はない。事業にして、成功に導く部分こそ重要です。言い換えれば、成功の前に立ちはだかる壁を乗り越える具体的な行動こそが大事。アイデアだけなら「ゼロ」。カタチにさせて「イチ」です。

大栗 その事業に取り組む前に、取り組むかどうかを判断する基準がありますね

 

江幡 この事業があることで世の中がどう変わるかという点は不可欠です。私は「世直し」をビジョンにしているので、そこが特に大事です。その一つ手前で、世の中の大きな変化をどう捉えるか、ということを常に意識しています。だから目の前の面白そうなものに飛びついたということはありません。

大栗 中小企業の経営者にとっても大事な視点ですか。

江幡 そうかもしれません。技術とかアイデアとかの経営のパーツはそれぞれお持ちなので、それを花開かせるためのハードルを越えるには、その視点が大事なように思います。ただ、外部から助言することもできますが、それで万事うまくいく、といえるほど経営は単純ではないようなので、経営者自身が、具体的で強い志を持つことが大事でしょう。(村山繁)

20150522-bsg1505220500008-p2.jpg

◆多くの企業の成長を支援・指導してきた村田作戦社長、村田育生氏の見方

成功するまでやり切れれば、当たり前だが失敗はしない。しかし、やり切ることが難しい。やり切る源は経営者の志。高い志があれば、苦労を乗り越える動機を持てる。高い志とは何だろう。きっと個人的なことより、社会的なことだろう。起業の動機には個人的な野望が多いが、成功には、社会的価値を追求できるかどうか。そうなれば経営者だけでなく組織全体のやる気にも大きく影響するはずだ。

【プロフィル】大栗芙実子

  おおくり・ふみこ OKURICOMPANY代表取締役、ヒューマネイションズ代表取締役。東京音大卒。現在は、音楽・演出事業で独立。企業、商品、サービスのブランド力底上げや向上を、戦略の構築から具体化までトータルでデザインして提供するコンサルタントサービスを展開する。2011年から現職。33歳。東京都出身。

【プロフィル】江幡哲也

 えばた・てつや オールアバウト代表取締役社長。武蔵工業大(現・東京都市大)卒。リクルートでマーケティング、経営企画などを歴任、「キーマンズネット」など複数の新規事業を成功に導いた。1993年早大ビジネススクール修了。2000年、米アバウトドットコムとリクルートのジョイントベンチャー事業、アバウトドットコム・ジャパン(現オールアバウト)を設立し現職。05年、ジャスダックに上場。50歳。神奈川県出身。

「フジサンケイビジネスアイ」

おすすめコンテンツ

商品・サービスのビジネスデータベース

bizDB

あなたのビジネスを「円滑にする・強化する・飛躍させる」商品・サービスが見つかるコンテンツ

新聞社が教える

プレスリリースの書き方

記者はどのような視点でプレスリリースに目を通し、新聞に掲載するまでに至るのでしょうか? 新聞社の目線で、プレスリリースの書き方をお教えします。

広報機能を強化しませんか?

広報(Public Relations)とは?

広報は、企業と社会の良好な関係を築くための継続的なコミュニケーション活動です。広報の役割や位置づけ、広報部門の設置から強化まで、幅広く解説します。