ジャクエツ・徳本達郎社長
ジャクエツが園舎の設計を手がけた新和さみどり保育園=福井県敦賀市
幼稚園や保育園向けに保育用品の製造販売を行うジャクエツは、施設設計も手がけ、業界トップ企業として顧客のあらゆるニーズに応えてきた。少子化で子供向けのビジネスに逆風が吹くなか、徳本達郎社長は「施設数はむしろ増えており、遊具などの需要は拡大している」と前向きに受け止める。
--事業内容は
「大正時代に福井県敦賀市で幼稚園を設立、越前和紙を使った教材も自前で作り始めた。その後は教材の外部提供を始め、現在は制服や遊具も扱うほか、施設設計も手がけている。情操教育の一環として園内に置く銅像などの備品も提供し、豊かな教育環境づくりをお手伝いしている。このほか、公園向けの遊具も柱の一つだ」
--売り上げ構成は
「グループ傘下に4事業があり、売上高の約55%を環境事業が占めている。この中には遊具や施設設計が含まれる。幼稚園・保育園は全国に私立が約2万カ所、公立が約1万6000カ所あるが、そのうち7割が当社の顧客だ。設計分野には1993年に進出し、これまでの約20年で334の施設を手がけてきた。クレヨン一本から建物まで一貫して提供できるのが強みだ」
--それ以外の強みは
「子供向けビジネスを展開する他の企業は地方の文具店などを代理店にしてきたのに対し、当社は全国約70カ所に自前の拠点網を築いている。建築士も全国に約30人いて、建て替えに関する顧客の要望を直接聞ける。幼稚園、保育園向けの事業に安全のノウハウは欠かせないが、子供の遊び方は家と外では全然違う。事故の予防につながる顧客の声を集められるのは当社だけといっても過言ではない」
--少子化で子供向けのビジネスは苦境が続く
「長年の事業展開で、出生数の変動という荒波をくぐり抜けてきた。設計分野に進出したのも、昭和30年代後半から急増した施設が平成期に入って老朽化し始めたから。特に都市部はむしろ施設がどんどん増えているし、子供一人にかけるお金も増加している」
--商品の魅力を高める工夫も続けている
「当社の制服は『ミラ・ショーン』などのアパレルブランドと連携し、運動しやすさと見栄えを両立させている。auの携帯電話などで知られる工業デザイナーの深澤直人氏に遊具のデザインを依頼したこともある」
--今後の事業拡大は
「(保育と教育の両機能を持つ)認定こども園が増え、待機児童の問題は解消されつつあるものの、今度は学童保育における小学校低学年の待機児童が問題になっている。公立小学校では夕方6時には迎えに行かないといけないが、それだと親はとても働けない。当社が運営のお手伝いをする機会が増えるのではないか」(井田通人)
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【プロフィル】徳本達郎
とくもと・たつろう 仏教大文卒。1986年ジャクエツ入社、2006年から社長。51歳。福井県出身。
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【会社概要】ジャクエツ ▽本社=福井県敦賀市若葉町2-1770 ▽設立=1949年1月 ▽資本金=4500万円 ▽売上高=175億5611万円(2014年7月期、グループ合計) ▽従業員=約600人(同) ▽事業内容=幼稚園・保育園を対象にした遊具の製造販売、施設設計など
「フジサンケイビジネスアイ」