世界の観光客はこの10年間、リーマン・ショック後の2009年を除いて毎年増加している。20年には13年と比べ、25%増の13億人に拡大すると見込まれる。日本でも東京五輪開催が決まり、訪日外国人が増加することが確実視されている。旅行関連市場への追い風を受けて、オンライン旅行代理店を手掛けるアドベンチャーの中村俊一社長は「旅行業にとどまらず、地球最大の予約プラットホームになることが目標」と意気込んでいる。
--サービスの自動化を徹底している
「オンライン旅行代理店は数多く存在しているが、意外にもIT化は進んでいない。大手では航空券手配や決済を紙で処理することが今でも主流だ。それに対し当社は予約から手配、決済まで全て自動化し、約5分で完了する仕組みを整えた。このため、従業員1人当たりの取扱高は約5億7000万円と生産性は業界トップクラスに達している」
--具体的なサービス内容は
「搭乗日と出発、到着する空港名を指定することで、条件に合う航空券を一度に検索し、表示できる。海外航空券は手数料ゼロで業界最安値を保証している。日本の旅行会社がほとんど手掛けない海外出発も取り扱っているため、外国人利用客も多い。海外での現地ツアーも扱っている。日本の大手が販売する現地ツアーは割高だが、同じ内容のツアーを現地代理店の商品を販売することで安く提供できる。18カ国語で対応しており、世界中の約80社と契約し、約1230の商品を販売している」
--旅行業界も東日本大震災で打撃を受けた
「11年の東日本大震災と前年に日本航空が経営破綻したときが、最大の危機だった。毎日朝から夜までキャンセルの電話が鳴り続けた。倒産の危機を乗り越えるために知人の会社に社員を引き取ってもらい、人員を半分に減らした。それから効率を上げようと自動化を推し進め、これが今の競争力につながっている。その後は格安航空会社(LCC)の台頭で商品が拡充したこともあり、売り上げは右肩上がりで増えてきた」
--昨年12月に東証マザーズに上場した
「財務基盤が強化され、知名度を向上させることができた。この機会に新たな会社との取引を積極的に進め、商品ラインアップを充実させる。7月までに世界各国の市内観光やレストラン、劇場などの予約ができるサイトをオープンさせる。日本語を含む多言語で対応することで、世界各国の人がそれぞれの母国語で予約をすることができる。最終的には、世界を対象とした病院や美容院などといった生活関連全般の予約サイトを立ち上げたい。14年度の取扱高は120億円を見込み、19年度には約4倍の500億円に増やす計画だ」(佐竹一秀)
【プロフィル】中村俊一 なかむら・しゅんいち 慶大商卒。2004年在学中にモバイルコンテンツや電子書籍事業の旧アドベンチャーを設立し、社長就任。06年サイバートラベル(現アドベンチャー)を設立し、現職。32歳。北海道出身。
【会社概要】アドベンチャー ▽本社=東京都渋谷区渋谷3-15-3 土屋渋谷ビル5階 ▽設立=2006年12月 ▽資本金=4億9849万円 ▽取扱高=68億4513万円 (14年6月期) ▽従業員=15人 ▽事業内容=オンライン旅行業
「フジサンケイビジネスアイ」