視野を広げるために本を読みたいが、多忙でなかなか良書にめぐり合えない-。そんなビジネスパーソンのニーズに応えるべく、書籍のダイジェスト版を配信しているのが情報工場(東京都港区)だ。近年はシャープなどの異業種企業とも連携。自社サービスの浸透を通じ、読書文化の振興に力を尽くしている。
情報工場が2005年の設立時に始めた主力サービスが、書籍や雑誌のダイジェスト版を提供する「SERENDIP(セレンディップ)」だ。出版社の元編集長や大学教授から成る「発掘チーム」が、役立ちそうな書籍を厳選。A4判3枚(3000字)のダイジェスト版を編集部員が作成し、メールで配信しているほか、情報工場のサイト上でも閲覧できる。
海外の書籍や雑誌も翻訳。自然科学や文化、歴史などビジネスに直結する内容以外も対象になる。週4本が新着情報として配信され、過去のダイジェスト版も閲覧できる。
ユニークなのは、ダイジェストながら作者独自の言い回しや文体を盛り込んでいる点だ。その方が感性を磨き、発想力を養えると考えているためという。
従来は法人営業に力を入れてきたが、最近は個人利用者の獲得にも力を入れる。昨年6月には“簡易版”として、新刊書を1200文字にまとめるスマートフォン向けアプリ「Quickreads(クイックリーズ)」の配信にも乗り出した。
一方、昨年12月にはシャープと電子書籍分野で提携。第1弾として、シャープが運営する電子書籍ストア「GALAPAGOS STORE(ガラパゴスストア)」内に、セレンディップの特集ページを開設。ダイジェストとともに紹介している「要旨」部分の転載を始めた。これにより情報工場はセレンディップの浸透が期待でき、シャープは読んだことがない書籍の購入が増えるとみている。
ほかにも昨年は、書籍の音声データをネット配信しているオトバンク(文京区)と提携。新刊ビジネス書などのダイジェスト版について、オトバンクのサイト上で文章と音声の両方を配信するサービスを始めた。
一方、情報工場がサービスの“窓口”として期待しているのが、福利厚生代行サービスを手がける企業だ。こうした代行会社が契約企業の社員に対し、セレンディップを割引価格で提供。昨年12月に提携したリラックス・コミュニケーションズ(新宿区)を含め、現在5社が情報工場のパートナーとなっている。
開始から10年がたち、セレンディップの利用者は約100社、4万人強まで増えた。「次のステップでは、英語や中国語、タイ語に翻訳したダイジェストを海外に配信していきたい」。藤井徳久社長は、日本文化の普及にも意欲を示す。(井田通人)
◇【会社概要】情報工場 ▽本社=東京都港区西新橋2-11-8 内田ビル5階 ▽設立=2005年11月 ▽資本金=4950万円 ▽従業員=9人 ▽事業内容=書籍のダイジェスト版提供など
「フジサンケイビジネスアイ」