■安価なオンライン塾 業容拡大
オンライン学習塾「アオイゼミ」を展開する葵。中学生を対象にした高校受験向けのカリキュラムを中心に、無料の“オンライン授業”を提供してきた。今年4月からは大学受験向けのサービスも開始。業容の拡大を進めている。
代表取締役で塾長でもある石井貴基氏は「生まれや育ち、就職後の勤務地も北海道で、葵の創業で初めての東京暮らし」(石井氏)に。しかも石井氏にとって、教育関連のビジネスに携わるのもこれが初めてのことだった。とはいえ、ビジネスとしての将来性については確信があったという。
「起業前に就職先の保険会社で営業をしていた頃、顧客の家計の状態を見ていると、教育費が大きいことに気づきました。収入面で厳しい家庭も多く、安価な教育サービスに対するニーズが非常に高いと感じました」
東京などの大都市圏ならまだしも、地方ではこうした傾向がより強い。石井氏は、そうしたニーズに応えることで、起業は可能と考えた。
同社は基本的なサービスを無料で提供する。そのせいもあってか、1日当たりの受講者は3000人にものぼる。しかし、収入の確保は容易ではない。
「広告を入れようにも訴求相手は受験を控えた中学生です。彼らにはお金もありませんし、無料ゲームの広告というのも勉強と相反しそうで違和感があります」
無料のライブ授業の受講に加え、授業動画を見放題にした「スマホプラン」、さらに個別のサポートまで提供する「プレミアム」などのオプションサービスを用意。それらを主たる収入源とした。とはいえ、料金は「スマホプラン」の場合で月額900円、「プレミアム」の場合でも5000円。通常の学習塾が年間40万円程度といわれる中では、破格の低料金といえる。
もちろん、「安価だからといって、内容が悪ければニーズはつかめない」(同)。講師は大手予備校などからヘッドハンティングして採用している。サービス面でも、今後「プレミアム」には「入試対策動画の視聴」や「学習レポートの送信」といったメニューを加えるなど、内容の強化を進める。ほかにも「特別授業」と銘打ち無料で専門家が進路相談に応えるメニューなどを提供。今後も、安全・安心なネットとのつきあい方などを伝授する「リテラシー教育」などを追加していく考えだ。
日本には中学生と進学希望の高校生が合わせて700万人程度いるとみられる。5年後には、このうちの7人に1人、1日当たり100万人の受講者獲得を目指したいという石井氏。将来的には、資格試験などにも対象の幅を広げ「ネット教育サービス市場でのナンバーワン企業を目指す」と意気込む。(青山博美)
【会社概要】葵
▽本社=東京都中野区中野5丁目52-15 中野ブロードウェイ503号室
▽代表者=石井貴基氏
▽設立=2012年3月
▽従業員=21人(アルバイトを含む)
▽事業内容=「アオイゼミ」のシステム・アプリの開発