ボルテージ・津谷祐司会長
ボルテージは「恋愛と戦いのドラマ」をテーマにした恋愛ゲームのアプリを制作している。恋愛小説のように読み進めながらゲームを楽しめるのが特徴で、スマートフォンの普及に伴って業績も順調に伸びている。津谷祐司会長は、米国をはじめとした海外での事業拡大を重点課題に掲げる。
--もともと映画監督を志望していたというが
「子供の頃から洋画が大好きだった。とくに『ジョーズ』や『ET』を制作したスティーヴン・スピルバーグや『スター・ウォーズ』のジョージ・ルーカスに感化され、監督に憧れていた。大学卒業後、博報堂に入社して9年目にUCLA映画学部大学院に留学。実際に俳優やスタッフを雇って短編映画を制作する。その過程で、日本人の監督・プロデューサーとしてハリウッドでのし上がっていくのは不可能に近いことも分かり、3年半で日本に戻ってきた」
--その経験は事業でどのように生かされたのか
「NTTドコモの関係者から『映画に携わっていたのであればストーリーゲームを手掛けませんか』という誘いがあった。プロデューサーを務めヒットにつながり、携帯電話ゲームの世界で頭角を現した。一般的なクリエイターと異なり、ストーリーを作って映像演出に凝るといった発想が強く支持された。これを契機にベンチャーキャピタルから話があり、ボルテージを設立する。映画の世界を知らなければ起業していない」
--設立でき順調に成長路線を歩んだのか
「4年目まで赤字だった。いよいよ危ないというときに、着メロ関連の事業で開花し2006年から恋愛ドラマアプリに経営資源を投入する。以降、売上高は加速度的に伸びている」
--ボルテージの作品の特徴は
「美少女を主役とした“乙女ゲーム”の制作会社が多いが、特定層をターゲットにしているため市場に広がりはない。一方、当社の作品はテレビドラマに近く、普通の感覚の層にアピールしている。男性向けゲームはメジャー企業が圧倒的な強さを見せており、女性ものにしぼった戦略が功を奏している」
--今後の経営課題は
「海外事業の強化だ。米シリコンバレーに拠点を置いて30人の社員を抱えているが、日本のものをそのまま持っていっても受け入れてくれないことが、よく分かった。例えば日本のゲームの場合、登場人物は平面的な画像。しかし米国では立体が好まれる。女性のキャラクターが弱いと、苦情が寄せられる。日本人と米国人の間で異なる感覚を、うまく融合させることに腐心したい。売り上げに占める海外比率は約10%。シンガポールや香港といったアジアの英語圏でも事業を強化し、2年後をめどに30%まで拡大する」(伊藤俊祐)
◇【プロフィル】津谷祐司
つたに・ゆうじ 東大工卒。1985年博報堂入社。社内ベンチャーの立ち上げなどを行い、99年にボルテージを設立し社長。2013年から現職。51歳。福井県出身。
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【会社概要】ボルテージ
▽本社=東京都渋谷区恵比寿4-20-3 恵比寿ガーデンプレイスタワー28階
▽設立=1999年9月
▽資本金=9億752万円
▽従業員=391人
▽売上高=100億円(2014年6月期連結)
▽事業内容=映像ソフトの企画、製作
「フジサンケイビジネスアイ」