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10代の起業家、目標は孫氏

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学生向けクラウドファンディング会社、GNEXの創業者で最高経営責任者(CEO)の三上洋一郎さん(ブルームバーグ)

 三上洋一郎さんは、次の孫正義氏になりたいと思っていた。そして、日本の富豪トップの座を争う孫氏に倣い、今年16歳で高校を中退した。現在は、インターネットで事業資金を募る学生向けクラウドファンディング会社、GNEXの経営に全ての時間をささげている。

 孫氏が会長を務めるインターネット検索サイト、ヤフー・ジャパンや人材紹介事業などを手がけるリクルートなど、スポンサー6社の出資を受けて彼が立ち上げたGNEXは、大学入試の情報を提供するアプリやスケジュール共有用のソーシャルネットワークなど、学生事業の資金集めを支援する。

 ◆ネット関連で勝負

 三上さんは取材に対し「孫氏は色々な事業に投資をし続け、会社や従業員、社会に利益をもたらしている。自分もそうした起業家になりたい」と語った。

 通信大手ソフトバンクの最高経営責任者(CEO)やヤフー・ジャパンの会長を務め、インターネット帝国を築いた孫氏は、16歳のときに日本の高校を中退し、米カリフォルニア州の英語学校に入学している。三上さんが孫氏とともに尊敬する英ロンドンのアプリ開発者、ニック・ダロイジオさんもティーンエージャーだ。ダロイジオさんが開発したモバイル向けニュース要約アプリ「サムリー」は米ヤフーに買収され、彼は昨年17歳にして億万長者となった。

 青山学院大学大学院の国際マネジメント研究科非常勤講師、熊平美香氏は「10代の若者はもはや大人からの指示を求めていない。10代の起業家は増えていくだろう」との見方を示した。

 2013年3月に自宅の寝室でGNEXを創業して以来、三上さんの会社には日本全国から13人の高校生や大学生が加わった。資金を必要としている学生主導の小規模なプロジェクトを探し出すため、15~20歳のスタッフとは無料IP通話サービス「スカイプ」を通じて連絡を取り合っている。

 三上さんの目標は、事業を拡大するため15年3月までにスポンサーを100社に増やし、2000万円の資金を集めることだ。

 調査会社マソリューションによると、クラウドファンディングは13年、全世界で約51億ドル(約5470億円)の資金を調達した。12年の調達額は約27億ドルだった。クラウドファンディングは、銀行やベンチャーキャピタルから出資を受けることができない小規模ビジネスに対し、不特定多数の個人から出資を募るという方法で資金調達を可能にしている。

 三上さんが早くから運営に携わる事業の一つが、学生に資金やスタッフ、オフィススペースなどを提供する「ブリッジキャンプ」だ。

 「若い起業家には共通の関心を持つ人々を見つける手段がない。だから、ウェブサイトを通じて資金面以外の支援も行えるようにした」と三上さんは話す。

 ヤフー・ジャパンやリクルートなどのスポンサーに対しては、プロジェクトの早い段階から若い才能と交流することができるようにしているという。

 「私たちは世界で戦うことのできる日本の起業家を支援していきたいと考えている。ブリッジキャンプへの出資を決めたのはそのためだ」とリクルート・テクノロジー・インスティテュートの岡本彰彦氏は語った。

 高校を中退してからの三上さんは、起床するとまず投資先の株価をチェックするのが習慣になっている。その後は、友人たちの授業が終わる午後まで、自分の仕事をする。彼が最初に株を買ったのは8歳のときだ。父親の書棚に並んだ株式投資の本を読んだことをきっかけに、太陽光発電機器を製造する国内メーカーの株式を購入した。

 13歳のときには、ホテルと旅行者や海外留学生を引き合わせる事業のアイデアを思いつく。宿泊仲介サイト「エアビーアンドビー」に似たこの事業で、三上さんは東京の小さなインキュベーター、サムライ・インキュベートから500万円の出資を引き出した。

 三上さんはまた、世界最大のクラウドファンディングサイト「キックスターター」を通じて、6つのファンドに約1500ドルを投資している。

 ウェブ関連のコンサルティング会社に勤める父親と専業主婦の母親は、息子が自身のキャリアを築くことを許し、三上さんを支えてくれている。

 「当初は、私の中にも賛成する気持ちと反対する気持ちの両方があった。最初は息子の計画を一蹴したのだが、彼は粘り強く、私の懸念を一つずつ晴らしていった。息子のように社会に貢献できる若者はもっといると思う」と父親の純市さん(44)は話す。

 ◆制度の緩和必要

 日本は若い起業家に対する法的規制を緩和すべきだと、若い三上さんは主張する。現在は、15歳未満の子供は会社を起こすことができない。

 安倍政権は制度改革などを通じて、起業家が事業を展開しやすい環境をつくるための措置を講じている。

 「ダロイジオさんのような人を尊敬しているし、彼のように日本で必要な変化を起こすことができればいい」と三上さんは考えている。

 孫氏が大学に入ったように、三上さんも経営学を学ぶため、来年度の大学受験を目指すつもりだ。孫氏は米カリフォルニア大学バークレー校で経営学の学士号を取得している。

 「世の中には、消防士や警察官、花屋やペットショップのオーナー以外の仕事もある。私の夢はプロの投資家になることだ。一度しかない人生、後悔して終わりたくない」と三上さんは語った。(ブルームバーグ Komaki Ito)

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