「人と暮らしの未来を拓く」システムキッチン 新「STEDIA」が目指す、暮らしのイノベーション

クリナップ商品開発部キッチン企画課係長の関将見氏、デザイン課主任の竹内祥馬氏(右から) クリナップ開発企画部キッチン
企画課係長の関将見氏、
デザイン課主任の竹内祥馬氏
(右から)

クリナップは2022年2月1日、主力の中高級価格帯システムキッチン「STEDIA(ステディア)」をフルモデルチェンジし、受注を開始した。発売以来4年ぶりとなるフルモデルチェンジでは、人気のフラット対面キッチン、造作(ぞうさく)対面キッチンとは異なる独自の「デュアルトップ対面」を始めとする、数々の新機軸が盛り込まれている。

新「STEDIA」の開発を通じて、「理想の暮らしをがんばらずに実現する」というキッチンのイノベーションはどう進められたのか。新「STEDIA」開発チームのテーマリーダーを務めた同社開発企画部キッチン企画課係長の関将見氏と、デザインリーダーを務めたデザイン課主任の竹内祥馬氏に話を聞いていく。

新「STEDIA」の登場は「人と暮らしの未来を拓く」長期ビジョン実現の第一歩

商品発表会で新「STEDIA」に懸ける意気込みについて語るクリナップの竹内宏社長 商品発表会で
新「STEDIA」に懸ける
意気込みについて語る
クリナップの竹内宏社長

「『STEDIA』を業界ナンバー・ワンのキッチンにしよう』と私は申しておりますし、今、社員たちは間違いなく、同じ思いで取り組みをさせていただいていると思います。(今回のフルモデルチェンジによって)商品が変わろうが、『STEDIA』というブランドを業界ナンバー・ワンにしたいという思いは変わっておりません」

2022年1月26日、住設器機大手クリナップの竹内宏社長は、同社の旗艦ショールーム「キッチンタウン・東京」(東京都新宿区)で開催された新商品発表会で、こう述べた。

同発表会は、2018年の発売以来4年ぶりとなる、主力の中高級価格帯システムキッチン「STEDIA」のフルモデルチェンジに合わせて開催された。同社は2月1日、後述の「デュアルトップ対面」などの新機軸を盛り込んだ新「STEDIA」の受注を開始した。

クリナップは1983年に、「買えちゃうシステムキッチン」をキャッチフレーズに掲げ、中高級価格帯機種「クリンレディ」を発売。以来、「クリンレディ」はクリナップの主力商品としてベストセラーを記録。その後継機種である「STEDIA」は、「クリンレディ」とあわせて39年間、中高級価格帯のシステムキッチン市場を牽引してきた。過去39年に引き続き、今後3、40年にわたり同社の屋台骨を支え、市場を牽引する商品を目指し、フルモデルチェンジを遂げたのが新「STEDIA」である。

2月1日に受注を開始した新「STEDIA」の目玉は「デュアルトップ対面」。リビング側の対面カウンターをキッチン側よりも高くし、段差を設けることで生活感を隠す 2月1日に受注を開始した
新「STEDIA」の目玉は
「デュアルトップ対面」。
リビング側の対面カウンターを
キッチン側よりも高くし、
段差を設けることで生活感を隠す

コロナ禍の逆風も大きかったが、住設設備器機業界では需要回復の傾向が見えてきた。なかでもリフォーム需要の拡大取り込みなどが功を奏し、クリナップは2022年3月期第2四半期累計期間の業績予想(連結)を上方修正している。

同社は「人と暮らしの未来を拓く」をテーマに掲げる長期ビジョン、「クリナップ・サステナブル・ビジョン2030(CSV30)」を策定。その第1のステージとなる新中計「2021年中期経営計画(2021~23)」(以下、「21中計」)が、2021年4月にスタートを切った。

「21中計」には、「既存事業の需要開拓、低収益からの転換(戦略1)」と「新規事業による新たな顧客の創造(戦略2)」が盛り込まれている。その「戦略1」の筆頭に掲げられているのが、今回の新「STEDIA」のリリース。コロナ禍にともなうライフスタイルの変化やユーザー層の意識の変化を捉えたキッチン空間の提案を通じて、新たな飛躍を目指す。

「憧れの対面」をより身近に、キッチンの常識を覆す数々の新基軸

新「STEDIA」の商品コンセプトは、「“理想の暮らしをがんばらずに実現できる”キッチン」。対面キッチンに対する人気の高まりに応え、クリナップが新たに提案する「デュアルトップ対面」が、今回のフルモデルチェンジの目玉だ。

シンクやワークトップ(作業台)と対面側カウンターが一枚で一体化した「フラット対面」キッチンに似ているが、カウンターにわずかな段差が設けられている。この段差がポイントで、リビング側の視界からワークトップや手元を隠し、キッチンからリビングが見渡せる開放感も演出しているのだ。

掃除の手間を大きく軽減する、「がんばらなくてもすぐにキレイになる」機能も付加。たとえば、「美コートワークトップ」を標準装備し、「流レールシンク」にワイドタイプを追加。

美コートワークトップ サッと水拭きするだけで
油汚れが落ちる
「美コートワークトップ」を標準装備

蛇口からの水流が、料理中に出るゴミを排水口に向けてどんどん流す、流レールシンクの特徴はそのままに、シンクを従来タイプより大型にし、洗い物を一時置きしながら作業できるスペースを確保した。ワークトップには、同社の高級価格帯フラッグシップ機種「CENTRO(セントロ)」で好評を得たサッと水拭きするだけで油汚れが落ちる「美コート」を施している(美コートワークトップ)。

高さ(2360ミリ/236センチ)と大型の引き戸収納の「スライドパントリー」も新登場。デュアルトップ対面やキッチンの面材と合わせてコーディネートできるほか、上台・中台・下台を自由に組み合わせ、食器類やストック食品、家電、ゴミ箱までを収納可能。LDK(リビング・ダイニング・キッチン)空間をきれいに保つことに貢献する。

デュアルトップ対面は、デザイン面の自由度の高さも大きな特徴。たとえば扉カラーが45色、対面用カウンターもセラミック5色、コーリアン3色、アクリストン6色、メラミン5色と、色や材質のバリエーションが非常に広い。

また「デュアル」の名の通り、キッチン側とリビングまたはダイニング側の両方に顔を持つ独自の対面キッチンなので、キッチン側とリビングまたはダイニング側でそれぞれ印象の異なるコーディネートも可能。たとえば、リビング側の顔となる対面用カウンターとサイド化粧板、対面キャビネット、対面扉のカラーをナチュラルウッド調にし、キッチン側の扉色とサイド化粧板をクリスタホワイトにする。あるいは逆に、リビング側もキッチン側も木目調のチェリーブレンド色などに統一することもできる(Class4)など、「あなたらしい」リビング・ダイニング空間の実現をサポートする。

メインターゲットは3、40代の新築層と5、60代のリフォーム層。最近ではリフォームでも対面キッチンの需要が増えていることから、撤去が難しい構造壁を活かして「デュアルトップ対面」の設置を可能にするプランなど、リフォーム対応も強化している。

「“理想の暮らしをがんばらずに実現できる”キッチン」

新「STEDIA」の商品開発は、ユーザーの思考の流れと行動を分析し、理解することから始まった。5年以内にキッチン購入を検討した人などにアンケートを実施し、キッチンに対する意識を調査した。%

その結果、回答者が想い描く「理想的なダイニングキッチン」の要素は、「対面キッチン」(37.7%)、「開放感、明るい、等」(34.4%)、「収納量、整理しやすい等」(28.2%)、「掃除しやすさ、汚れにくい、清潔等」(23.9%)などであることがわかった。開発チームはその中で、「対面キッチン」「開放感」に対するユーザー層の漠然とした憧れに、特に注目した。

だが、同社による調査を通じて、意外な事実も明らかになっている。市場的にも、対面キッチンの人気は確かに高い。ところが、5年以内のキッチン購入検討者の42%がフラット対面を検討したにもかかわらず、実際にフラット対面キッチンを購入したのは、そのうち45%にとどまっていたのだ。

ここで開発チームは、対面キッチンをめぐる理想と現実の存在に気付いた。

ユーザーの思考と行動を分析すると、対面キッチン購入の検討初期は漠然と情報収集し、想像を膨らませ、理想の空間や暮らし方に漠然とした憧れを抱く。次いで、検討中期に具体的な検討に入り、予算や実際の使用を考え始める中で、現実が徐々に見えてくる。検討後期には、検討したことを実現するため、詳細仕様を考える。

その中で、ユーザーが「フラット対面検討中に気になった(懸念した)こと」が、「水跳ね・油跳ね・匂い・音等」(48.0%、複数回答、以下同様)、「間取り・設備的に実現可能か」(44.4%)、「視線」(36.5%)、「価格」(33.1%)などだった。

これらはまさしく、対面キッチンの検討を進める中で見えてくる現実だ。ユーザーが行き当たる、こうした理想と現実のギャップを解消し、「“理想の暮らしをがんばらずに実現できる”キッチン」という、新「STEDIA」開発の方向性が見えてきた。

クリナップが社運を懸けて行った「STEDIA」のフルモデルチェンジは、実際にどう進められたのか。新「STEDIA」開発チームのテーマリーダーを務めた開発企画部キッチン企画課の関将見係長と、デザインリーダーに加え、「流レールシンクワイド」および「デュアルトップ対面」の担当を務めたデザイン課の竹内祥馬主任に話を聞いていく。

「デュアルトップ対面」キッチンが演出する「生活感を隠すキレイな空間」

「生活感を隠すキレイな空間」というコンセプトを打ち出しています。これは、フルモデルチェンジを通じて「STEDIA」がLD(リビング・ダイニング)空間により近づいたことと関係があるのでしょうか?

そうです。当社の従来商品では、フラット対面が、対面キッチンを検討されるお客様への主な提案になっていました。ところが、「(フラット対面の)開放感を活かしたい」反面、「リビング側から(キッチンで作業をしている人の)手元が丸見えになるのも嫌」だという声が、対面キッチンを検討するうえでの課題になっていたのです。

あとは、価格的な部分も購入のハードルになっていました。結果的に、フラット対面キッチンの購入を検討したお客様の半数以上が、フラット対面を選ばれなかったことが、調査結果で明らかになっています。

「生活感を隠す」ために、リビング側の対面カウンターをキッチン側よりも高くし、段差を設けています。この高さにもこだわりがありますね

竹内今回は、リビング側の対面カウンターとキッチン側の段差が低いロータイプと、段差が高いハイタイプの2パターンを用意しました。ロータイプはフラット対面に近い形で、段差をなるべく低くし、開放感を確保しつつも、ダイニング側の視界からキッチンの生活感が出る作業面やシンク内が程よく隠れます。ハイタイプは、作業をしている人の手元までをしっかり隠し、(段差の部分に大容量収納スペースやキッチン側コンセントを設けて)隠れた手元のスペースを有効的に使えるようにしてあります。

キッチンの背面にある立ち上がり部分のバックガードを利用し、視線を遮るのはもちろん、水や汚れがリビング側に広がらないことも含めて、高さを設定しています。

フラット対面に近い開放感を選ぶか、しっかり隠れた手元のスペースを有効活用するほうを選択するか、ということですね

竹内はい。その2軸で開発を進めています。同じ部材を使ってプランニングを行いますが、まったく違うユーザー層を想定しています。

結果的にフラット対面キッチンを購入されなかったお客様が、造作対面を選択するのが、今主流になりつつあります。大工さんがお客様の要望に応じて、I型のキッチンにダイニング側のカウンターを造作し、壁で手元を隠したり、カウンターやカウンター下収納を作る方が多いです。

ところが、たとえばお客様の理想の空間を提案するという意味で、キッチンの見栄えと造作工事のデザイン性を一致させることが難しい、というケースも少なからずあります。そこで、キッチン専業メーカーである当社が、お客様の理想の空間にマッチする対面キッチンを、1つの完結した既製品として提案することにメリットがあると考えました。

フルオーダーの造作対面ではなく、既製品であればお客様も完成形がイメージしやすいでしょう。ショールームでの展示や、お見積時に作成するプレゼンシートやカラーシミュレーションなどを通じた提案が、お客様がくつろぐリビング空間から見たキッチンのイメージと、ほぼイコールになります。

実際に造作対面では、施工前のイメージと完成形との間にずれが生じることがあるという話も聞きます。(リビング空間とキッチンのデザインやコーディネートが)クリナップで完結し、価格競争力も高いという点で、サブユーザー(ハウスメーカーや工務店、リフォーム業者)様にとっても手離れがよく、受け入れられやすい商品になると自信を持っています。

お客様にとっての「理想の対面キッチン」がなかなか実現しない中で、クリナップさんが「デュアルトップ対面」を、フラット対面、造作対面に続く第3の対面キッチンとして、提案していくわけですね。

そうです。

「がんばらなくてもすぐにキレイになる」機能の数々

今回のフルモデルチェンジで最も訴求させたいポイントは何ですか?

そうですね。やはり顔になっているのは「デュアルトップ対面」ですが、一番の根幹は「美コートワークトップ」や「流レールシンク」だと思います。

クリナップさんお得意の「がんばらなくてもすぐにキレイになる」機能ですね

そうです。これは当社にしかない強みの部分で、これまでご採用いただいたお客様からも、非常に高い評価をいただいていました。

「美コートワークトップ」は、「CENTRO」で好評だったものを、今回「STEDIA」に展開しています。「流レールシンク」は元々「STEDIA」にも標準装備されていましたが、今回ワイドタイプを追加しました。

「流レールシンク」をワイドタイプにした点にもこだわりを感じます

ワイドにしたことで、従来タイプの「流レールシンク」の使い方をベースにしながら「生活感を隠す」点でも大きなメリットが生じると思います。

竹内コロナ禍で在宅時間が増えた結果、家事も増え、洗い物も増えるということは、もともと考慮に入れていました。実際、当社でも全社的にリモートワークを推進していた時期があり、私も自宅で食事をする機会が増えました。そうなると、1日3回分の食器がシンクにあふれ返るのです。

ワイドタイプは、いわゆる「お家(うち)時間」が増え、洗い物が増えたという背景から生まれたのですね

流レールシンク ワイドタイプ型 蛇口からの水流が、
料理中に出るゴミを
排水口に向けてどんどん流す
「流レールシンク」がワイドタイプに。
洗い物を一時起きしながら
作業できるスペースを確保

竹内はい。でもそれ以上に、従来タイプの「流レールシンク」を(新「STEDIA」に)どう活かしていくかという視点もありました。

ワイドタイプでは、たとえば洗剤ラックを奥に移動させればシンクの幅方向を広く使え、横に移動させればシンクの奥行きを最大限に活用できます。「流レールシンク」は、蛇口や排水口が片側に寄った形状のため、もう片側のスペースが大きく広がっています。ラックを移動させれば、その広いスペースを幅方向にも奥行き方向にも有効に使っていただけるようにしたことが、今回こだわったポイントです。

こうした、他社には見られない広々としたシンクを大々的に打ち出していきたい、という思いがありました。

よりリビングに近づいたキッチンデザインの世界

新「STEDIA」のデザイン面でこだわったのはどんな部分ですか?

竹内もともと、2018年9月に「クリンレディ」から新ブランドの「STEDIA」としてリニューアルした際には、LDK空間への調和を軸にデザイン強化を行いました。それにより、設備としてのキッチンのイメージから、空間的なイメージでの展開を始めたのです。今回のフルモデルチェンジでは、それをもっと進化させ、より空間に溶け込むような(キッチンの)プランニングなどができるようにしたいと思っていました。

よりリビング空間に溶け込むキッチンとは、どんなイメージですか?

竹内もともとキッチンのデザインは、設備単体から空間に広がってきています。ところが実際には、(造作対面では)施工側で壁を設けてリビング側とキッチン側を遮断するプランが大半を占めています。そこで当社では、壁を取り払い、キッチン全体がリビング空間に入っていくことを重視してデザインを行いました。

最近、キッチン回りの部材や設備にこだわるお客様が増えています。インスタグラムなどのSNSを見て、「こんな空間を作りたい」とか「ここは白い壁紙ではなく、ちょっとこだわった素材で作りたい」というようにです。

そこで、デュアルトップ対面のリビング側の扉カラーは、今回キッチン側の扉として用意したバリエーションのほぼ全色を選べるようにしています。サイド化粧板もそうです。これだけ素材や色柄の組み合わせを自由に選べる工業製品は一部の自動車などを除き、ほかにはあまりないと思います。

デザインや、カラーバリエーションの選択肢の広さという意味でいうと、扉などの面材の木目や石目を、表現力の高いUV塗装で再現していますね

デザイン・カラーの細部にもこだわりが。たとえばClass3「ソナタ」では、UV塗装でチェリー材やウォールナット材などの色合いや木目、質感を再現。独自のハイマット(つや消し)仕上げと木口の面取り仕上げで、無垢材風のテイストを醸し出している デザイン・カラーの細部にもこだわりが。たとえばClass3「ソナタ」では、UV塗装でチェリー材やウォールナット材などの色合いや木目、質感を再現。独自のハイマット(つや消し)仕上げと木口の面取り仕上げで、無垢材風のテイストを醸し出している

竹内そうですね。たとえばClass3「ソナタ」のこの扉は、扉の担当デザイナーがかなりこだわって開発したものです。こういう木目の扉や、つや消しの扉は近年、空間になじむデザインを実現するために選ばれるお客様が増えてきており、「STEDIA」ブランドを立ち上げたタイミングで、バリエーションをかなり拡充した経緯があります。今回は、当社の強みの1つであるUV塗装で無垢材のようなマットな質感を実現し、カラーバリエーションに追加しました。

こういう取り組みも、見た目と機能をいかに両立させるかの追求だと思います。実際、今回のフルモデルチェンジでは、デザインと機能の両立という要素が、多くの部分で検討課題に上りました。

竹内ですから今回は、当社の強みである機能性を(ある意味、デザインで)隠していますが、逆に活かしているともいえます。実際、キッチンそのものは、耐久性や清掃性などの機能性に優れたステンレスでしっかり作り、対面カウンターやサイド化粧板などでその周囲をカバーし、意匠性を高めています。その意味で、リビング側とキッチン側の2つに分けてデザインしたことが今回のキーポイント。リビング側では理想を作り、キッチン側では現実をしっかり見ましょうということです。

主力商品のフルモデルチェンジに懸ける各部署の「思い」を1つに

開発のうえで大変だったことは何ですか?

自分としては、新「STEDIA」という商品を担当することは、やはり大きな仕事だと思って取り組みました。

主力商品ですからね

そうですね。ですから、新「STEDIA」の方向性を決めることに苦労はありました。何も見えない中で新しい方向を決めていくのは大変です。

というのも「STEDIA」は当社の中心的な商品であることはもちろんですが、価格帯が非常に広く、ハウスメーカー様から地場の工務店様まで、じつに多くの方が関わっています。つまり、それだけ多くの顔を持っている商品で、社内でも関わる人たちが非常に多いのです。

ですから今回の開発にあたり、社内でもかなり多くの要望をいただきました。販売台数や価格はもちろん、いかにお客様に選んでいただける商品を作るかということも含めて、答えがない中で模索を続けることは、とても難しかったと思います。

竹内さんはいかがですか?

竹内今、関さんも話した通り、「STEDIA」は会社の命運を握っている大事な商品で、どの部署でもみんな「こうすべきだ」という意見を強く持っています。そこをうまくまとめていくのが大変でした。

私はデザイン以外に「流レールシンクワイドタイプ」や「美コートワーク」も担当しましたが、たとえば「美コートワークトップ」を、販売台数の多い「STEDIA」に展開するには新たな設備投資が必要になり、会社に負担を強いることになります。

そこをどう説得していったのですか?

竹内振り返ると、導入シミュレーションをしっかり行ったことと、CGや試作品でのアウトトップが重要だったと思います。「デュアルトップ対面」についても、こういう格好いいキッチンが、これだけ競争力のある価格で実現でき、利益も確保できるんだということを、わりと早い段階で提案することができたのです。それを見て、各部署が納得して動いて下さったと思います。その結果、ではこれをどうやって作るか、売っていくかという、次のステップに踏み出すことができました。

「美コートワークトップ」の「STEDIA」での展開も、ある程度の利益が見込めなければ、大きな設備投資は承認いただけません。幸いなことに、会社として「では今回、やってみよう」という判断をいただき、竹内社長にも「新『STEDIA』を売ろう!」というメッセージを社内的にも強く発信していただきました。

キッチンは、お客様の自由な発想にもっと寄り添えるようになる

商品開発のうえで大切にしていることは何ですか?

最近のお客様はSNSなどで情報をよく調べていて、多くの知識を持ち、要望も多様化しています。そういう要望をどんどん取り入れ、現場でも売りやすく、商品をお使いになったお客様に細部に至るまで喜んでもらえるのが一番良いと思います。その意味で「STEDIA」は、とくに当社が得意とするキッチンの機能的な部分で、お客様の細かい要望にも応えていくべきだと考えています。

「STEDIA」はお客様のニーズに応え続けていく、進化し続けていくということですね

もともと「STEDIA」という商品名は、英語の「Steady(不変の・堅実な)」と「Diamond(ダイヤモンド)」を合わせた造語で、「システムキッチンに求められる機能やデザインを磨き上げていく」という思いが込められています。その名の通り、機能やデザインを磨き続けていくことが大切だと思います。

竹内さんがモットーにしていることは?

竹内今回の「デュアルトップ対面」でデザイン面が強化されました。でも実際にショールームを訪れるお客様の心を捉えるポイントは、機能面だと思います。専業メーカーとして機能面はしっかりおさえながら、それを活かすためにお客様にどう提案していくかがポイントになるでしょう。

ですから、「クリンレディ」から受け継ぐ機能性の高さは保ちつつ、SNS映えという意味でもリビング空間にしっかり溶け込み、「あっ、格好いいね」と思っていただけるデザインを実現する。そこで初めて、「流レールシンクワイド」や「美コートワークトップ」といった当社の独自機能を活かせるようになると思います。

その意味で、デザイン担当としては、キッチンの機能を活かすことを何よりも大切にする。逆にいえば、「STEDIA」の強みは機能面にあるので、デザインが先行しすぎて機能をそこなわないようにすることが、今回の商品デザインのポイントだったと思います。

これから、どんなキッチンを作ってみたいと思いますか?

そうですね、社内などからの要望としては、やはりキッチンの販売を牽引するような強いアイテムを求められることがあります。当社でいえば、1999年に開発した業界初の「フロアコンテナ」のようなアイテムです。これは、キッチンのデッドスペースになっていた足元部分を引き出し収納にするという革新的な試みで、多くのお客様からのご支持をいただき、今に至るまで、当社製キッチンに広く採用されています。そういう画期的なアイテムを開発できるといいですね。

竹内さんが作ってみたいキッチンはどんなものですか?

竹内一昔前は、たとえば白の扉とステンレスのワークトップがキッチンの売れ筋だと、決め打ちをすることも少なくなかったでしょう。ところが今では、消費者のニーズが多様化し、細部にわたり、さまざまなご要望が出てくる時代になっていると思います。その中で今回、対面カウンターやサイド化粧板、扉などの素材や色を自由に選んでいただけるようにしました。これも、カラーシミュレーションや見積時に作成するプレゼンシートといった販売ツールがしっかり整ってきたからできたと思うのです。

私はキッチンのデザインやレイアウトは、今後どんどん自由度が増す方向に進むと考えています。今、キッチンはI型やL型、アイランド型などのようにレイアウトがある程度絞られていますが、レイアウトももっと多様化していくでしょう。また、セクショナルキッチンのようにさまざまなユニットやパーツが独立し、組み合わせがもっと自由になって、さまざまなスタイルのキッチンが組めるような仕組みができていくと私は思います。

現在主流の簡易施工型キッチンの枠を越え、オートクチュールのような完全オーダーメードの部材型キッチンに近づいていくのかもしれません。

お客様の要望を細部に至るまで聞き、それらを実現することは非常に手間も時間もかかりますが、それは仕組みによって解決されていくでしょう。そういう中で、キッチンはお客様の自由な発想に、もっと寄り添えるものになっていくと思います。

取材・構成:ジャーナリスト 加賀谷貢樹