いつまでも歳を取らず長生きをすること。いわゆる「不老長寿」は、人間の永遠の願望ともいえる。この古来からのテーマに、日本システム企画社長で一般財団法人150歳の会理事長の熊野活行氏が挑戦している。特殊な電磁波などを活用した物理的、科学的なアプローチで老化の原因の一つとされる「活性酸素」を低減し、さまざまな疾病の原因をもとから断とうというものだ。熊野氏は、この挑戦の結果として健康寿命が延びれば、日本の労働人口の減少は緩やかなものになり、日本の経済社会の活性化にもつながると強調する。
健康であり長寿であることは多くの人にとっての願いですが、熊野さんによる実現に向けたアプローチはこれまでにない発想と技術に基づいています
日本システム企画社長
一般財団法人150歳の会 理事長
熊野活行氏
人間の寿命はさまざまな要因の中で伸びてきました。今後も伸びていくことでしょう。その生命の最長寿命、いわば「生命時計」の期間は目下のところ150年ぐらいだろうと思います。そういう意味でいえば、いま進めている研究は永遠に生きるためのものではなく、「生命時計」上の最長である150歳まで生きることを目指すものです。
現在の世界の最長寿は120歳前後です。平均寿命ということになると、世界トップレベルにある日本でも80歳代。これを150歳まで伸ばすためにはどうしたらいいのか。そのために、老化と寿命に関していくつかの研究を続けてきました。
その過程や大学を交えた研究成果などについては、学会などでも発表してきましたが、ポイントとしては人の老化に酸化が大きく関係しているということです。要は、体内の活性酸素による酸化、特に血管の酸化を抑えることができれば、さまざまな疾病の発病を抑えることにもつながることでしょう。
そういう意味では、日本システム企画が展開しているビルの配管などのさびを抑える装置「NMRパイプテクター」とも通じるものがありますね
2022年3月25日(金)発売。
全国の書店や、Amazon、楽天などの
ネットショップで購入可能。
基本的な考え方は同じです。パイプテクターはビルなどの配管のさび対策ですが、これをいわば“血管のさび対策”に活用する格好です。実際に、このパイプテクターを使用してさまざまな研究が行われ、実際に結果も出ています。
このアプローチが優れているのは、さびというか、酸化の元になる活性酸素を物理的に抑えているという点です。薬品などを用いる方法もありますが、薬品だと肝臓に負担をかけるなど、良いことばかりではありません。パイプテクターのような原理だとそういう心配がない、というメリットがあります。
こうした技術が実用化できれば、健康寿命がますます伸びるのではないかと期待しています。この技術や取り組みについては、近く刊行する書籍『血管のサビを防止する方法』に詳しくまとめました。そちらを手に取っていただければ、より詳細なイメージがつかめると思います。
それ以上に、この挑戦には大きな経済効果を期待しています。成果を“日本社会に夢をもたせる”ことにつなげたいと思っています。
少子高齢化は日本の大きな課題ですが、健康寿命を伸ばすことで超高齢社会下の課題に変化を及ぼすことができそうです
今の日本には夢がありません。先行きが今より良くなっていく、という感じもしません。実際にバブル経済の崩壊後は経済的に拡大したり発展している実感の希薄な社会になっているように思います。これでは20~30歳代の若者がかわいそうです。そうした若者に夢や希望を与えることはできないでしょうか。
健康寿命が延びることで、少なくとも日本社会の閉塞感を改善できるのではないかと考えています。
たとえば、寿命が1.5倍に延びることで労働人口が1.5倍に増えるとどうなるでしょう。経済活動がより活性化するのではないかと思います。多くの経験を持つ高齢者が経済社会に残ることにもなります。その経験や知見を活用しない手はありません。労働人口の増加は納税者の増加にもつながりやすい。少なくとも、年金の受給予備軍を抑えることにはつながりそうです。
健康寿命が延び、かつ、健康寿命と寿命の差が縮まると、さまざまな福祉サービスにかかる公的支出も抑制できそうです
例えば高齢者向けの医薬品代。これは国内で年間41兆円という規模にのぼっており、増加を続けています。こういうものの増加を抑制することにもつながります。
高齢化しても健康であることが重要です。健康状態が良くないと精神的にも弱くなります。自分が老化を自覚し、障害を抱えるようになると、いろいろできる能力や経験があってもなかなかやる気にならないでしょうから。
血管のさびを防ぐことが健康寿命を延ばすこと、ひいては日本社会の活力を高めることにつながる。おもしろいですね
戦後の日本は活力だけはありました。高度経済成長期などは、けっして豊かではなかったですが将来に夢をいだけました。今日よりは明日のほうがよりよくなっていく。そう思える社会でした。いまはそれがない。労働力が減り、消費も減り…。健康寿命が延びれば、この悪循環にも変化が起きます。寿命が延びたら、好循環につなげていかなくてはいけないと思います。血管のさび防止は、その前提となる健康長寿化に向けた挑戦。ぜひとも実用化したいと考えています。
【プロフィール】
熊野活行 くまの・かつゆき
東京理科大工学部卒。1972年大日本印刷入社。88年日本システム企画を設立し社長。日本モンゴル友好交流協会と日本ミャンマー友好交流協会の会長。150歳の会、理事長。