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契約書なし取引はなぜ危険?“信頼関係”に頼る企業間取引の落とし穴
なぜ「契約なし取引」が起きてしまうのか
① 信頼関係への過信
長年の取引先や、気心の知れた担当者との関係では、「今さら契約書なんて堅苦しい」という空気が生まれがちです。しかし、会社同士の取引は担当者個人の関係とは別物。担当者が異動・退職した瞬間、その“信頼”は引き継がれません。
② スピード優先の現場判断
「とりあえず始めてしまおう」「契約は後で整えればいい」こうした判断は、特に以下の場面で起こりやすいです。
・緊急対応の仕事
・小規模案件
・単発のつもりだった仕事
ところが、こうした案件ほど後から追加作業や認識違いが発生しやすく、トラブルの火種になりやすいのが実情です。
③ 「毎回同じだから大丈夫」という思い込み
過去に同じような取引をしていたとしても、
・金額
・納期
・業務範囲
・成果物の扱い
は毎回微妙に違います。この「微妙な違い」が、後に大きな食い違いを生みます。
契約書がないことで起きる主なリスク
① 支払いトラブル
・支払期限の認識違い
・追加作業の費用を請求できない
口頭やメールだけでは、法的にも立場が弱くなることがあります。
② 業務範囲の食い違い
「そこまでやるとは思っていなかった」
「それは契約外だ」
契約書がないと、どこまでが業務範囲かの線引きができません。結果、無償対応が増え、利益を圧迫します。
③ 成果物の権利問題
制作物・システム・デザイン・文章などでは特に重要です。
・著作権はどちらにあるのか
・二次利用してよいのか
・改変してよいのか
これが曖昧だと、後から使用停止や追加費用を巡るトラブルに発展することもあります。
④ 情報漏えい・責任範囲の不明確さ
機密情報を扱う取引にもかかわらず、守秘義務の取り決めがないと、
・どこまでが秘密情報なのか
・漏えい時の責任はどこまでか
が不明確になります。企業としての信用問題にも直結します。
「信頼関係」と「契約」は対立しない
よくある誤解が、「契約書を出すと相手を疑っているようで気まずい」という心理です。ですが実際は逆です。
契約とは
・お互いの認識をそろえるための確認作業
・トラブルを未然に防ぐための“思いやり”
信頼関係があるからこそ、「念のため書面で整理しておきましょう」と言える関係が健全です。
すぐにできる現実的な対策
「いきなり分厚い契約書はハードルが高い…」という場合でも、次のステップから始められます。
① まずは“発注書・注文書”を必ず出す
契約書がなくても、
・業務内容
・金額
・納期
・支払条件
を明記した書面を残すだけで、リスクは大きく下がります。
② メール合意を“証拠レベル”に引き上げる
口頭ではなく、
「以下の内容で進めてよろしいでしょうか」
「ご承諾いただけましたら本メールへの返信をお願いします」
といった形で合意の履歴を残すことが重要です。
③ 継続取引先とは「基本契約」を結ぶ
毎回細かい契約を交わすのが難しい場合は、
・守秘義務
・責任範囲
・支払条件の基本ルール
などを定めた“基本契約書(マスター契約)”を一度締結しておくと、その後の個別案件が格段に楽になります。
④ 担当者任せにしない社内ルール化
「忙しいから後回し」が起きないように、
・一定金額以上は書面必須
・外注は必ず発注書発行
・NDAなしで機密情報を出さない
など、会社のルールにしてしまうことが再発防止につながります。
まとめ
契約書なしの取引は、問題が起きていない間はスムーズに見えます。しかしそれは、リスクが見えていないだけかもしれません。信頼関係は大切です。ですが企業経営においては、「信頼関係 = 何も決めないこと」ではなく「信頼関係 + きちんとした合意」であるべきです。トラブルが起きてからでは遅いからこそ、「うちは昔からこのやり方だから」を見直し、会社を守るための最低限の備えを整えていくことが重要です。
編集局の声
取引の現場では、「波風を立てたくない」という気持ちが判断を曖昧にしてしまうことがあります。しかし、契約や書面化は相手を疑うためではなく、お互いの認識違いを防ぎ、長く良い関係を続けるための土台づくりです。“言わなくても分かるはず”から“言葉にして確認する関係”へ。それが、これからの健全な企業間取引のスタンダードになっていくはずです。
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