知らなかったでは済まされない著作権の話 vol.3

第9回

外注で制作したデザインの著作権は会社のもの?外注先のもの?~著作権の帰属にまつわる話

堀越 総明 2015年2月20日
 

外注先が制作したデザインを勝手に自社カタログに掲載するのは著作権侵害!?


「イノベーション印刷」のA社長は、インターネットでの受注戦略が大当たりして、廃業目前だった業績を急回復させ、今日も意気揚々です。前回のコラムでA社長を裏切った元アルバイト社員Bさんが心から詫びてきたため、昔かたぎのA社長はすべてを水に流し、現在では忙しい時にデザインの仕事をBさんの会社に外注しています。

Bさん 「A社長、あのときはすみませんでした。」
A社長 「もういいんだよ、そもそも君がインターネットで注文を受けられるようにしてくれたから、いまの我が社があるんだよ。こちらのほうこそありがとな。」

そんなA社長の御恩に応えるため、Bさんはイノベーション印刷から受けた外注のデザインに気合いを入れます。そのため、イノベーション印刷は、デザイン力の評判がますます高まり、今期も大幅な増収増益を見込んでいます。
勢いに乗るA社長はこのデザイン力を武器に大企業のクライアントを獲得しようと考え、その営業ツールとして、これまでのデザイン実績をまとめた「デザインカタログ」の冊子を作成することにしました。

間もなく自社工場からA社長のもとに、刷り上がったばかりのデザインカタログが届きました。「いやー、B君のデザインは一際目を惹くね~!」と目を細めるA社長。大手エージェントに依頼して、精鋭の営業マンを新しく雇用し、大企業に攻め込む体制は万全です。
全社員による居酒屋での決起集会で盛り上がるA社長でしたが、その席上で、法学部出身の若手社員Cさんが話し掛けてきました。

Cさん 「あのー、このデザインカタログなんですが・・・。」
A社長 「どうだ、とても良く出来ているだろ。君も気に入ったかい?」
Cさん 「そうではなくて、この中に掲載しているBさんの会社が制作したデザインなんですが、Bさんに掲載の許諾はもらったんでしょうか?」
A社長 「許諾??もらうわけないだろ!だってそれはうちの会社がBさんの会社にお金を払って制作してもらったデザインだぞ。だから著作権はうちの会社にあるんだ!」
Cさん 「社長、それは違います。外注して制作してもらったデザインの著作権は外注先にあるんです。つまり、そのデザインの著作権者はBさんの会社なので、Bさんに無断でデザインカタログに掲載すると著作権侵害になります。Bさんは以前にも社長を困らせた悪い人です。きっとこのデザインカタログを見たら、法外な掲載許諾料を要求してくるんじゃないでしょうか。」
A社長 「ほ、ほ、法外な許諾料??外注のお金はうちが払ってるんだぞ!そんなわけない!うちの会社が著作権者だ!!」

外注したデザインの著作権者は外注先のデザイナーになります

確かにA社長はBさんの会社に外注費を支払ってデザインの仕事を依頼しています。それなのに納品してもらったデザインがA社長の自由にならないとすれば、「そんなおかしな話はない!」と思う人は多いのではないでしょうか。

法律では、著作権は原則として「著作者」に帰属することとなっています。そして、著作者とは「著作物を創作する者」であり、著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したもの」とされています。つまり、著作権は、思想又は感情を創作的に「表現した者」に帰属することになります。

それでは、イノベーション印刷が外注したデザインを「表現した者」は、誰でしょうか?イノベーション印刷はきちんと外注費を支払っていますが、実際にそのデザインを「表現した者」はBさんです。ということは、このデザインの著作権は、A社長の思いもむなしく、Bさん(またはBさんの会社)に帰属しているということになります。
つまり、著作権者であるBさんに許諾をもらわずに、このデザインを勝手にデザインカタログに掲載することは許されません。まさに、法学部出身のCさんの言う通りということになります。

著作権とは、創作の意欲を失わせないために、著作者等に与えられた権利です


それでは、そもそもどうして「著作権」という権利があるのでしょうか?例えば、みなさんが、グラフィックデザイン、イラスト、写真、文章などの著作物を一所懸命に創作したとして、それを他人が勝手に利用したり、真似したりすることが自由にできるとしたら、どう思うでしょうか。どこかの大企業が、みなさんの著作物を勝手に使ってお金儲けしていて、みなさんには1円もお金が入ってこないとしたら、どう思うでしょうか。おそらく、みなさんは次に新しい著作物を創作するぞという意欲を失ってしまうことでしょう。創作の意欲が失われてしまっては、文化が発展することができなくなります。そのため、「著作権」という権利で、著作者等の保護を図ることになっているのです。
つまり、著作権とは、Bさんのようなクリエイターを守る権利であって、その創作のためにお金を出した人を守る権利ではないのです。

そうは言っても、A社長は、自分の会社でお金を出した以上、納得がいきません。こうした場合には、Bさん(またはBさんの会社)と契約を締結して、そのデザインの著作権を納品と同時に譲渡してもらうとか、デザインカタログのような営業用の媒体への二次利用を事前に許諾してもらうなどの対策を取れば問題ありません。

外注先とは「著作権譲渡契約書」などを取り交わす必要があります!


ビジネスの世界では、グラフィックデザイン、写真、イラストなどは制作会社に外注して作ってもらうことのほうが一般的です。みなさんの会社のロゴマーク、ホームページなどもおそらく外部の会社に委託して制作しているのではないではしょうか。こうした外注のケースでは、特別な契約を交わしていない限り、これらの著作権は外注先の会社に帰属していると思って間違いありません。
外注先との関係が良好なときは大きな問題とはなりませんが、ひとたび外注先との関係が悪化したときには、これまでのロゴマークやホームページが突然利用できなくなるという事態になってしまいかねません。そうならないためにも、早い時期に、著作権に精通した行政書士に相談することをおすすすめします。

さて、Cさんに促されて、Bさんにデザインの利用許諾をもらいに行ったA社長でしたが、今ではすっかり善人になったBさんはニコニコ笑いながら、デザインカタログへの掲載を許諾してくれました。その後、A社長は、知り合いの行政書士に依頼して「著作物利用許諾契約書」を作成してもらい、念のため、Bさんに署名してもらったことは言うまでもありません。


※コラムは執筆時の法令等に則って書いています。

※法令等の適用は個別の事情により異なる場合があります。本コラム記事を、当事務所に相談なく判断材料として使用し、損害を受けられたとしても一切責任は負いかねますので、あらかじめご了承ください。

 
 
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ボングゥー特許商標事務所/ボングゥー著作権法務行政書士事務所
所長・弁理士 堀越 総明 (ほりこし そうめい)

日本弁理士会所属 東京都行政書士会所属 東京都行政書士会著作権相談員 東京都行政書士会任意団体著作権ビジネス研究会会員 株式会社ボングゥー代表取締役

「ボングゥー特許商標事務所」の所長弁理士として、中小企業や個人事業の方々に寄り添い、特許権、意匠権、商標権をはじめとした知的財産権の取得・保護をサポートしている。

特に、著作権のコンサルタントは高い評価を受けており、広告、WEB制作、音楽、映画、芸能、アニメ、ゲーム、美術、文芸など、ビジネスで著作物を利用する業界の企業やアーティスト・クリエイターを対象に、法務コンサルタントを行っている。

現在、イノベーションズアイにて、コラム「これだけは知っておきたい商標の話」、「知らなかったでは済まされない著作権の話」の2シリーズを連載し、また「ビジネス著作権検定合格講座」の講師を務める。

また、アート・マネジメント会社「株式会社ボングゥー」の代表取締役も務め、地方公共団体や大手百貨店主催の現代アートの展覧会をプロデュースし、国立科学博物館、NTTドコモなどのキャラクター開発の企画を手掛けた。


○ボングゥー特許商標事務所
http://www.bon-gout-pat.jp/


○ボングゥー著作権法務行政書士事務所
http://www.bon-gout-office.jp/

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