知らなかったでは済まされない著作権の話 vol.3

第4回

屋外のアート作品を写真に撮ってカレンダーを作っても大丈夫??~公開の美術の著作物等の利用にまつわる話

堀越 総明 2014年5月15日
 

中小旅行代理店が脱価格競争を目指した新企画「アートの旅シリーズ」!


中小旅行代理店に勤務するA山さん。これまでは店頭のカウンターで元気に接客していましたが、入社5年目の今年、企画宣伝部に異動になりました。毎日膨大な旅行のパンフレット作りに追われ、今日もボヤキながら仕事をしています。

A山さん 「それにしても、うちの会社は激安日帰りバスツアーばっかりだなぁ。イチゴ狩り、ブドウ狩り、ミカン狩り、桃狩り・・・、狩人でもあるまいし。」
B部長  「聞こえたぞ、A山くん。お客様を“あずさ2号”呼ばわりしちゃいかん!でも確かに君の言うとおりで、我社はどうしても価格勝負の商品しかないんだよな・・・。そうだ!君の若い発想で、斬新で魅力的なツアーを考えてくれよ!」

旅行代理店に就職しただけあって旅行が趣味というA山さんは、良い企画のアイデアをひねり出すため、これまでのプライベートの旅行で撮った写真をチェックしました。すると1枚の写真に目が留まりました。A山さんと友人のスナップショットなのですが、背景には有名なアート作品が写っています。
A山さん 「そうだ!『アートの旅シリーズ』を企画してみよう!日本全国の美術館、屋外アート作品を巡るツアーで、有名キュレーターがガイドで同行するっていう企画だったら、ちょっといい価格でもお客さんが集まるぞ。」

無料特典として作ったカレンダーは部長の一声で急きょ販売することに


早速、A山さんはB部長に報告に行きました。
B部長  「なるほど、アート狩りか・・・。」
A山さん 「・・・『アートの旅シリーズ』です!それからこの企画ですが、ツアーの申込特典として、日本全国の屋外にあるアート作品を撮った写真を使ってカレンダーを作り、それをプレゼントしようと思うんです。」
B部長  「でもアート作品の写真を使ったら、アーティストへの著作権使用料とかで高くつくだろ??」
A山さん 「ところが、友人の行政書士に確認したら、なんと屋外にあるアート作品は写真撮影も自由で、それでカレンダーを作って配布することも自由なんだそうです!」
B部長  「それは、タダってことか??」
A山さん 「そうです。」
B部長  「すぐやりなさい!!」

A山さんは、カメラマンと一緒に、全国の屋外にあるアート作品を巡り、やがてすばらしいカレンダーが完成しました。刷り上がったカレンダーを手に取り、そのあまりに美しい出来映えに、B部長は言いました。
B部長  「これはすばらしい!無料でプレゼントするのはやめて、ツアー申込者限定で有料販売しなさい!」

『アートの旅シリーズ』は受付を開始すると、順調に申込者数を伸ばしていきました。B部長の鶴の一声で有料販売になったカレンダーも、ツアー申込者の80%が購入するほどの好評です。
B部長 「A山くん、やったじゃないか!アート狩りは大成功だな。」
しかし、そんなある日、喜ぶ2人のもとに、カレンダーに掲載されたアート作品を制作したというアーティストの1人から電話が入りました。なんでも著作権侵害で訴えるぞとえらい剣幕です。
Aさんは毅然として、 「屋外にあるアート作品は写真を撮っても、カレンダーにして販売しても良いんですよ。」と説明したのですが・・・。

屋外にあるアート作品は原則として自由に利用ができます

A山さんが友人の行政書士からきいたように、確かに著作権法には、屋外に恒常的に設置されているアート作品の原作品は、いずれの方法によっても自由に利用できるとした規定があります。
「いずれの方法によっても」ですから、写真に撮っても問題ないでしょうし、カレンダーにして配布するのも問題ないということになります。アート作品は著作物ですから、著作権者に許諾を得ないと写真撮影などはできないというのが原則ですが、屋外に設置されているアート作品については、一般の人々が日常的に写真を撮ったりできるようにすることのほうがむしろ自然なことですし、また著作権者も屋外にアート作品を設置した時点で、一般の人々が自由に利用することを受け入れているはずだというのが、こうした規定ができた理由といわれています。

屋外にあるアート作品といえども販売目的での利用はNGです!


しかし、この規定には一定の例外があり、その中の1つに、専らアート作品を販売目的で写真撮影したりして絵ハガキやカレンダーなどを作成したり、その絵ハガキやカレンダーなどを販売したりすることはできないという規定があるのです。
この例外規定ですが、あくまで「販売目的」での利用を禁止しているので、営利目的であっても販促品などのように無料でお客様に配布するようなケースは、これに当てはまらず、自由に行って良いということになっています。ということは、B部長が余計なことを言わず、カレンダーを無料でプレゼントしていたら、著作権侵害とはならず、アーティストからクレームを受けることはなかったということになります。

ここで、少し補足しておきますが、例外規定で禁止されているのは「専らアート作品を販売目的で複製」した場合ですので、例えば美女の写真のカレンダーなどで、写真の背景として屋外にあるアート作品が写っている場合などは「専ら」とはならないため、例え有料で販売しても著作権侵害にはなりません。
また、「屋外」というのは、原則として一般の人々が自由に出入りすることができる場所をいいますので、いくら屋外といっても入場料を払って入るような美術館の敷地内などに設置してあるアート作品は、「販売目的」でなくても勝手に写真撮影することは法律上認められていません。

さて、A山さんに余計なことを言ってしまったB部長は反省し、カレンダーに掲載したアート作品の著作権者に深くお詫びしながら利用許諾を受けてきました。ところが、最初は怒っていたアーティストの人たちも、カレンダーがその後も順調に売上を伸ばし、しっかりとライセンス料を受け取ることができたためご機嫌になり、今ではカレンダーの第2弾を製作する話も持ち上がっています。

※コラムは執筆時の法令等に則って書いています。

※法令等の適用は個別の事情により異なる場合があります。本コラム記事を、当事務所に相談なく判断材料として使用し、損害を受けられたとしても一切責任は負いかねますので、あらかじめご了承ください。

 
 
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ボングゥー特許商標事務所/ボングゥー著作権法務行政書士事務所
所長・弁理士 堀越 総明 (ほりこし そうめい)

日本弁理士会所属 東京都行政書士会所属 東京都行政書士会著作権相談員 東京都行政書士会任意団体著作権ビジネス研究会会員 株式会社ボングゥー代表取締役

「ボングゥー特許商標事務所」の所長弁理士として、中小企業や個人事業の方々に寄り添い、特許権、意匠権、商標権をはじめとした知的財産権の取得・保護をサポートしている。

特に、著作権のコンサルタントは高い評価を受けており、広告、WEB制作、音楽、映画、芸能、アニメ、ゲーム、美術、文芸など、ビジネスで著作物を利用する業界の企業やアーティスト・クリエイターを対象に、法務コンサルタントを行っている。

現在、イノベーションズアイにて、コラム「これだけは知っておきたい商標の話」、「知らなかったでは済まされない著作権の話」の2シリーズを連載し、また「ビジネス著作権検定合格講座」の講師を務める。

また、アート・マネジメント会社「株式会社ボングゥー」の代表取締役も務め、地方公共団体や大手百貨店主催の現代アートの展覧会をプロデュースし、国立科学博物館、NTTドコモなどのキャラクター開発の企画を手掛けた。


○ボングゥー特許商標事務所
http://www.bon-gout-pat.jp/


○ボングゥー著作権法務行政書士事務所
http://www.bon-gout-office.jp/

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