知らなかったでは済まされない著作権の話 vol.3

第5回

ワールドカップの歴代優勝国データは著作権で保護される!?~データベースの著作物にまつわる話

堀越 総明 2014年6月17日
 

SEO対策でお店のホームページにワールドカップの面白データベースを公開!


街のスポーツ用品店「イノベーションスポーツ」を経営するA川さん。お店は小さいながらも50年間真面目に働き続け、同業のお店が廃業するご時勢にあっても、低空飛行ながら堅実に売上を確保してきました。
しかしそんなA川さんも年齢には勝てません。跡取りがいないA川さんは、自分の引退を見据えて、元気な若者のB山さんを雇い入れて、彼にお店を託そうと思っています。

A川さん 「B山くん、悪いがね、配達に行ってくれないか。車の調子が悪くてね、申し訳ないけど今日は電車で行ってくれよ。」
B山さん 「店長、わかりました!お届け先はどこですが?」
A川さん 「大塚だな、わかるかい?」
B山さん 「山手線で上野からだと、鶯谷、日暮里、西日暮里、田端、駒込、巣鴨、大塚ですね!」
A川さん 「・・・すごいね~、キミは電車の駅が全部言えるのかい!?」
B山さん 「電車の駅だけではありません。歴代横綱も全部言えます。明石、綾川、丸山、谷風、・・・・・・・朝青龍、白鵬、日馬富士、鶴竜!」
A川さん 「ほ、他は??」
B山さん 「歴代ダービー馬も言えます!ワカトモ、カブトヤマ、フレーモア、・・・・・・・オルフェーヴル、ディープブリランテ、キズナ、ワンアンドオンリー!」
A川さん 「・・・・・・わかった。」

少しオタクの気があるB山さんですが、若い感性を活かして、お店をワールドカップモードに模様替えしました。出場国の代表ユニフォームをディスプレイし、日本代表選手と同じモデルのシューズも取り揃えました。しかし、お客様はなかなかやってきません。

A川さん 「ホームページにもワールドカップ特集の告知はしているんだけどね・・・。」
B山さん 「店長、うちのお店のホームページは“ワールドカップ ユニフォーム”で検索しても300ページ目にしか出てこないですよ。もっとSEO対策しないと。みんながもっと興味を持って検索してくれるコンテンツをホームページ上で公開してみるなんてどうでしょうか?」
A川さん 「そうか、SOS対策か。」
B山さん 「・・・SEO対策です。」
A川さん 「そのSOS対策だけど、キミのオタク的な才能を活かせないものかね。」
B山さん 「そうだ!ワールドカップの歴代優勝国の面白データを、うちのお店のホームページで公開してみましょう。検索で結構引っかかると思います!」

せっかく作ったデータベースが同業他店のホームページで盗用されることに


それから3週間、B山さんは夜遅くまでデータの収集に励みました。優勝国のみならず、すべての出場国の選手データ、本大会全試合のスコア、地区予選のスコアはもとより、選手の血液型、好きな食べもの、好きな芸能人に至るまで調べ抜き、「イノベーションスポーツ」のホームページに公開しました。それぞれの項目ごとに絞り込んで表示することができる優れもののデータベースです。



すると、このワールドカップの面白データベースを目当てに、ホームページのアクセス数が急増し、それにあわせてお店にも多くのお客様が訪れるようになりました。
「キミのSOS対策はすごいじゃないか!」と喜ぶA川さんでしたが、ある日を境に、来店客数が減っていきます。一転して、「何かあったんじゃないのか?」とA川さんが不安になっていたところ、B山さんがその原因を突き止めました。
B山さん 「店長、これです!大手のウルトラスポーツのホームページで、僕が作った面白データベースがそっくりそのまま盗用されています!」
A川さん 「許さん、著作権侵害だぞ!!知り合いの行政書士に依頼して、警告書を作ってもらおう!」

創作性のあるデータベースは著作権の保護を受けることできます!


さて、A川さんは「著作権侵害だ!」と憤慨していますが、そもそもB山さんの作ったワールドカップの面白データは著作権で保護されているのでしょうか?
著作物とは、法律で「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と規定されています。B山さんの面白データの内容は、試合結果、選手のプロフィールなど単なる情報の羅列に過ぎず、B山さんの思想や感情を表現したものではありません。通常に考えれば、この面白データは著作物ではないと考えられます。

確かに、こうした個々の単なる情報、いわゆるデータについては、著作権では保護されていません。しかし、そのデータを集積してコンピューターで検索できるようにした、いわゆるデータベースについては、その「情報の選択」または「体系的な構成」に創作性が認められれば、著作物として保護されているのです。
B山さんが作ったデータベースは、「選手の好きな食べもの」や「選手の好きな芸能人」など、一風変わったデータが選択されています。また、データの選択がありふれたものであったとしても、「焼肉が好きで、ワンダイレクションのファンであるAB型の選手」のように検索項目で絞り込むことができるなど体系的な構成に工夫がみられるならば、やはりデータベースの著作物として保護を受けることができます。

創作性のないデータベースでも勝手に利用するには注意が必要です


ということは、どんなに膨大なデータを血のにじむような努力で10年かかって集積したとしても、ただデータの量が多いだけで、そのデータの選択や体系的な構成にまったく創作性が見られないデータベースは、著作物として保護されないこととなります。著作権法が保護するものは、あくまでも「創作」であって、「努力」や「根性」ではないからです。

ただし、創作性が認められず、著作物ではないとされたデータベースでも、勝手にそれを利用した人に対して、民法上の不法行為責任を認めて損害賠償を命じた判決も出ています。データを集積した人の「努力」や「根性」をまったく保護しないで、そのデータベースの自由利用を認めてしまっては、やはり不公平だということなのでしょう。ということで、いくら著作物性がないからといって他人のデータベースを無断で借用することには十分注意が必要です。

さて、A川さんから怒りの警告書を受け取ったウルトラスポーツは、素直に非を認めて、「選手の好きな食べもの」や「選手の好きな芸能人」などの特徴的な項目を削除し、通常のワールドカップのデータ集としてホームページに掲載し直しました。これにより、イノベーションスポーツのホームページのアクセス数は再上昇し、お店はまたお客様でにぎやかになりました。B山さんは「次は歴代横綱のデータベースを作ります!」と張り切っています。

※コラムは執筆時の法令等に則って書いています。

※法令等の適用は個別の事情により異なる場合があります。本コラム記事を、当事務所に相談なく判断材料として使用し、損害を受けられたとしても一切責任は負いかねますので、あらかじめご了承ください。

 
 
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ボングゥー特許商標事務所/ボングゥー著作権法務行政書士事務所
所長・弁理士 堀越 総明 (ほりこし そうめい)

日本弁理士会所属 東京都行政書士会所属 東京都行政書士会著作権相談員 東京都行政書士会任意団体著作権ビジネス研究会会員 株式会社ボングゥー代表取締役

「ボングゥー特許商標事務所」の所長弁理士として、中小企業や個人事業の方々に寄り添い、特許権、意匠権、商標権をはじめとした知的財産権の取得・保護をサポートしている。

特に、著作権のコンサルタントは高い評価を受けており、広告、WEB制作、音楽、映画、芸能、アニメ、ゲーム、美術、文芸など、ビジネスで著作物を利用する業界の企業やアーティスト・クリエイターを対象に、法務コンサルタントを行っている。

現在、イノベーションズアイにて、コラム「これだけは知っておきたい商標の話」、「知らなかったでは済まされない著作権の話」の2シリーズを連載し、また「ビジネス著作権検定合格講座」の講師を務める。

また、アート・マネジメント会社「株式会社ボングゥー」の代表取締役も務め、地方公共団体や大手百貨店主催の現代アートの展覧会をプロデュースし、国立科学博物館、NTTドコモなどのキャラクター開発の企画を手掛けた。


○ボングゥー特許商標事務所
http://www.bon-gout-pat.jp/


○ボングゥー著作権法務行政書士事務所
http://www.bon-gout-office.jp/

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