公益財団法人 横浜企業経営支援財団 理事長 小林英二氏
30周年を生かし「なんでも相談できる」をアピール ~支援メニュー拡充で中小企業の成長後押し~
横浜企業経営支援財団(IDEC横浜)が今年10月、現体制に移行してから30年を迎える。中小企業に寄り添う姿勢を堅持しながら、脱炭素化など環境問題や生産性向上を図るためのDX化、AI活用といった相談にも丁寧に応じる。小林英二理事長は「30周年を生かして、何でも相談できる団体であることをアピールし認知度向上につなげる」と強調。中小企業支援のハブ機能を磨き、経営の悩みや課題を解決に導く駆け込み寺として支援メニューの拡充に注力する。
- ――30年前に何があったのか
- もともと横浜市には「鶴見会館」「横浜工業館」「横浜市金沢産業振興センター」「横浜市中小企業振興事業団」という4団体があり、それぞれが中小企業支援に取り組んでいた。それらを1996年10月1日に統合し「横浜産業振興公社」として発足。2007年に現在の名称に変更した。30周年を「市内の中小企業・小規模事業者に寄り添い、支援する」という我々の原点に立ち返る起点にしたい。
- ――どんな相談に応じてきたのか
- 創業期から成長・発展、事業承継に至るまで企業のライフステージに応じて経営戦略、技術、販路開拓、資金など幅広くワンストップで支援してきた。困りごとがあれば、まずは我々に相談してほしい。内容に応じてIDEC横浜に登録している中小企業診断士や弁護士、税理士、デザイナーなどの専門家や他の支援機関につなぐことで課題解決をサポートしてきた。
- ――具体的には
- イベント開催を告知するチラシやパンフレットを自作したが納得いかず、デザイナーのアドバイスを求めたいという相談を受けた。紹介したデザイナーは「自社アピールより顧客目線が大事」「情報量が多く漠然としているのでターゲットを絞り込む」ことをアドバイス。そこでチラシを刷新するとイベント申し込みがそれまでの9倍に増加したという。「伝える」より「伝わる」が大事だと教わった。
- ――ものづくりの事例は
- 取引先が突如廃業して部品を調達できなくなったので新たな製造委託先を紹介してほしいという相談があった。「横浜ものづくりコーディネーター」が対応可能なメーカーを探し出し両社をマッチング、新たな代替企業にたどり着いた。サプライチェーンは突然途切れることがあり調達リスクへの備えは欠かせない。IDEC横浜の力を発揮できたと自負している。
- ――30年間の活動に対する自己評価は
- 私が着任した昨年4月以降でも米トランプ関税の発動、日産自動車の生産縮小、米・イスラエルによるイラン攻撃に伴う原油・ナフサ不足、熊本地震の発生と中小企業の経営に支障をきたす事案が相次いでいる。このように何かが起きると、常に中小企業に寄り添い、現場力と実践力を磨いてきた我々の出番がやってくる。中小企業支援のハブとして、例えば資金調達の相談を受ければ、横浜市や県、国の補助金メニューを確認したり、横浜市信用保証協会と連携したりして解決につなげる。我々だけで解決できないものは、ふさわしいところへつなぐ。この一環として横浜市とは日常的にやり取りしており、一心同体でパイプを太く、円滑にすることを心掛けている。着任からの1年半で、この重要性をすごく感じている。
- ――中小企業への支援メニューは増えているのか
- 事業承継やDX、AIへの対応など新たな課題が次々と生じており、それに応じて支援メニューも増えている。その一つが脱炭素経営支援だ。専門家による二酸化炭素(CO2)排出量の算定(訪問支援)から削減計画の策定(伴走支援)までアドバイスを受けながら取り組みを見える化し、企業価値の向上を目指す。2025年度は、訪問支援が402(目標400)、伴走支援が81(同80)と目標を達成した。伴走支援は26年度に100を目指す。ハードルを上げて取り組む。この前段となる「脱炭素取組宣言」を行った中小企業は現在約9400事業所で、これだけの数の事業所が脱炭素化へのやる気を示した。脱炭素経営に取り組めば大企業との取引につながり、企業ブランドも向上する。人材確保も期待できる。来年3月から、横浜で「グリーンエキスポ2027」が開催される。この機会も企業の脱炭素化に生かしたい。
- ――海外ビジネスへの支援も充実している
- 1987年に中国・上海に事務所を開設、中国でのビジネス展開を目指す企業をサポートしてきた。また海外展示会への出展支援も手掛けている。今年6月に台湾で開催されたスタートアップ特化型の国際技術展示会「InnoVEX2026」では横浜ブースを設け、海外展開を目指す企業の商談機会をつくった。また、米国ニューヨークのインテリア・雑貨関連の国際見本市への出展支援も行った。
- ――市内企業の育成については
- インキュベーション施設を運営しており、横浜新技術創造館では新技術開発・新事業展開を目指すスタートアップが研究開発に取り組んでいる。利用率はほぼ100%だ。将来有望な企業も少なくなく、成長したスタートアップには横浜に根を下ろしてもらいたい。これからもインキュベーションマネージャーによる支援など丁寧に取り組んでいくことで、スタートアップに選ばれる横浜を目指す。
- ――IDEC横浜が抱える課題は
- 一つは認知度向上で、継続的に取り組んでいく。そのために「困りごとを抱える中小企業が横を向いたらIDEC横浜がいる」「まずはIDEC横浜に相談に行こう」という存在にならなければいけない。いわゆる駆け込み寺だ。市内には約7万3000事業所があり、そのうち我々のメールマガジンに登録しているのは約9000事業所。我々がかかわる企業を増やす余地は十分にあるので、30周年を生かして新規開拓につなげていく。もう一つが職員の育成。30年前を知る職員は退職時期を迎えており、事業を引き継げる若手を採用し育てる必要がある。中小企業に寄り添っていくには、悩みを聞き出せる人間関係が大事になるからだ。人が財産であり、優秀人材を確保するためにもやりがいがあって、成長を感じられる職場環境にしていく。
小林 英二 (こばやし・えいじ)
公益財団法人 横浜企業経営支援財団 理事長
1963年5月7日生まれ。明治大学法学部法律学科卒業。1989年横浜市入庁。
議会局政策調査課長、総務局法制課長、港湾局みなと賑わい振興部長、総務局副局長、中区長などを歴任。
2025年4月から(公財)横浜企業経営支援財団理事長に就任。趣味は職員と話すこと。