【知恵の経営】「人本主義」のオンリーワン企業

□法政大学大学院政策創造研究科教授 アタックスグループ顧問・坂本光司

 東北新幹線の二戸駅から車で10分ほど走ると、道路沿いに小松製菓という社名の会社がある。主製品は南部せんべいで、この分野では後発メーカーだったが、今や業界トップにまで上り詰めている。

 

◆新製品を追求

 同社の創業は、戦後の混乱が続く1948(昭和23)年。現経営者である小松務氏の母親のシキさんが1人でスタートさせた。小松シキさんは、自著「むすんでひらいて」(IBCビジョン)の中でも述べているが、幼少のころから筆舌に尽くしがたい苦労をした方である。

 苦労が実り、多くの支援者にも恵まれ、小松製菓は着々と成長発展し、今や社員数が240人、年間売上高が約30億円を誇る。

 とはいえ、南部せんべいの業界全体が成長発展しているかというと、真逆である。事実、業界の企業はピーク時の戦前には600社を数えていたが、その後は年々減少し、今や約50社にまで激減している。

 こうした中にあって、同社がゆっくりではあるが着実に成長発展してきた要因は多々あるが、ここでは2点を指摘しておく。

 第1点は、新商品開発への熱心な取り組みである。

 南部せんべいというと、種類が限定的で昔ながらの商品というイメージが強いが、同社は毎年のように南部せんべいにさまざまな新しい付加価値を上乗せして販売している。

 これまで同社が開発したオリジナル商品は55種類に上る。サイズやパッケージの違いを含めると、500アイテムは優に超える。こうした開発姿勢は、単にお菓子だけではなく、お菓子の製造機械にまでおよび、今や同社が使っている機械の大半は社内で製作された。

◆人間尊重経営

 第2点は、人物本位の「人本経営」の実践である。

 創業者である小松シキさんは、自身がでっち奉公先やしゅうととしゅうとめなどとの関係で、想像を絶するほどの肉体的・精神的な苦難に見舞われてきた。

 この経験をもとに、自身が経営者になると、社員と顧客を問わず、人間尊重・個性尊重の経営を貫いてきた。こうした経営姿勢は二代目である現経営者の小松務氏の代になると一段と充実強化されている。

 例えば、2002(平成14)年には業界に先駆けて、定年を一気に65歳に引き上げるとともに、1年更新とはいえ70歳までの雇用を保障している。

 そればかりか、「小松製菓退職年金制度」(幸せ会)を立ち上げ、80歳まで年2回、わずかとはいえ年金を支給している。しかも銀行振り込みではなく、自社運営の「四季の里」という名の和風料理店へ食事に招待して、手渡しているのである。

 その時のスナップ写真を見せていただいたが、年金を受け取る人の顔は満面の笑みであった。

 こうした企業を実際に目にすると、経営者の経営に関する考え方や手法によって企業の盛衰が決まると痛感する。

【会社概要】アタックスグループ   顧客企業1700社、スタッフ170人の会計事務所兼総合コンサルティング会社。「社長の最良の相談相手」をモットーに、東京、名古屋、大阪、静岡でサービスを展開している。

「フジサンケイビジネスアイ」

 
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