企業がシステムを新規に構築する際、クラウドサービスの導入を前提とする「クラウドファースト」の流れが鮮明になっている。調査会社MM総研(東京都港区)によると国内企業のIT(情報技術)投資が約25兆円と横ばいで推移する中で、クラウドサービス市場は2013年度の6257億円から、18年度には1兆8000億円と2.9倍に拡大する。クラウドソリューション事業を手掛けるスマートバリューの渋谷順社長は「社会課題をクラウドサービスで解決する企業」を事業コンセプトに掲げる。
--町工場から業態転換した
「1928年に祖父が創業し、バッテリーの製造、輸出や自動車電装修理業を営んできた。しかし取引先から一方的に契約を打ち切られ、下請けの立場の弱さを痛感した。先が見えないと思い、自動車電話の販売、取り付けを手掛けたことが縁でNTTドコモ代理店の資格を得て、94年からドコモショップの運営を始めた。96年にインターネット事業を開始、企業や地方自治体向けにクラウドサービスを提供するクラウドソリューション事業に至っている。2013年には、自動車電装事業を売却した」
--日本のモノづくりが生き残るにはどうすればいいのか
「差別化したものをつくるしかない。コモディティー(汎用(はんよう)品)では駄目だ。製品単独ではなくネットワークと組み合わせることで、これまでにない画期的な商品を生み出すことができる。例えばiPhone(アイフォーン)はその成功例の最たるものだろう」
--クラウドソリューションが主力だ
「自治体や公的機関向けに広報広聴、防災、防犯、子育て支援などの住民情報分野でのクラウドサービスを手掛けている。当社のデータセンターは、大阪府立インターネットデータセンターをM&A(企業の合併・買収)で傘下に収めたことから、自治体の顧客が多い」
--モバイル事業は過当競争で厳しいのではないか
「地域に密着したドコモショップを運営しており、堺市に5店舗、大阪府岸和田市に1店舗を展開している。人口普及率100%を超えたため販売は横ばいで低成長だが、足元ではしっかり利益が出ている。キャリアショップの強みは顧客と直接接していることだ。これを活用して『情報インフラのコンビニ』にしていく。光回線やアプリケーションのような情報インフラだけでなく、将来的には電力などエネルギーの販売も想定している」
--業績の見通しは
「国内クラウド市場の広がりに伴い、営業利益で毎年20~30%の伸びを見込んでいる。モバイル関連は事業環境が厳しいが、横ばいは維持したい。16年6月期の売上高は、前年比3.7%増の66億6700万円を予想している」(佐竹一秀)
◇【プロフィル】渋谷順
しぶや・じゅん 大阪経大院修了。1982年菱和商工に入社。85年堺電機製作所(現スマートバリュー)入社。専務を経て、2003年4月から現職。51歳。大阪府出身。
◇【会社概要】スマートバリュー
▽本社=大阪市西区靭本町2-3-2 なにわ筋本町MIDビル4階
▽設立=1947年6月
▽資本金=2億5057万円
▽従業員=247人(2015年4月時点)
▽売上高=66億6700万円(16年6月期予想)
▽事業内容=情報通信サービスのクラウドソリューション事業、ドコモショップ運営のモバイル事業
「フジサンケイビジネスアイ」