ジャパン味噌プレス・藤本智子編集長
「婚活」ならぬ「ミソ活」に励む女性がいる。みその普及を目的とした情報紙を発行しているトランタンネットワーク新聞社の藤本智子さんだ。以前は外国人女性にも人気が高い東京のファッションビル「渋谷109」で店員をしていたが、今は180度違った形で日本文化の発信にたずさわっている。
4月4、5の両日に東京で行われた7人制ラグビーの世界大会「東京セブンズ」で、一風変わった催し物が行われた。派手な着物姿の「ミソガール」たちが登場し、7000食分の「みそまる」と呼ぶ食べ物を振る舞ったのだ。
みそまるは、みそにだしと具を混ぜ、団子状にしたものだ。花冷えの中、お湯をかけるだけで温かいみそ汁が味わえるとあって、イベントは大盛況だった。
このイベントを仕掛けたのが藤本さんだ。編集長として月刊情報紙「ジャパン味噌(みそ)プレス」を発行。大のみそ好きで、ミソガール第1号でもある。
◆研究者への取材契機
みそまるを考案したのもやはり藤本さんだ。中にはバレンタインギフトのようなチョコトリュフ風のものまである。「みそは空気のようなもの。今までのあってもなくてもいい存在から、なくてはならぬ存在に変えたい」と真剣な表情で語る。
5年前に母親が経営するトランタンネットワーク新聞社へ入社。取材活動の中で研究者と出会ったのを機に、みその世界へと引き込まれた。
みそ好きが高じて、東京農大の醸造学科に聴講生として通うほど。自宅の台所には約50種類を常備。朝5時に起き、みそ汁のだし用にかつお節を削ることから1日が始まる。その姿に、母の裕子さんも「打ち込む性格ではあったけど、こんなにのめり込むとは…」と驚く。
日本人のみそ離れは深刻だ。食生活が洋風化し、コメの消費量が減るのに合わせて、みそが食卓にのる場面も減っている。高齢化に伴う醸造所の後継者不足も懸念されている。
◆ミラノ万博に出展
もっとも、藤本さんは「みそのことを知らない人があまりに多い。きちんと伝えることができれば需要を喚起できる。伝えなければもったいない」と断言する。
その情熱と精力的な活動ぶりから、業界関係者のみならず、外部の協力者や応援団も増えつつある。3日間の期間限定とはいえ、1日に開幕したイタリア・ミラノ万博にも出展することが決まっている。
「この4年間、みそのことを考え続けているのに、毎日が新しい発見。海外にも情報を発信し、良さを知らしめたい」。ミソガールの目は海外にも向けられている。(井田通人)
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≪Q&A≫
■夢は女性たちの健康状態改善
--みその普及に尽くしている
「渋谷109で店員をしていたとき、外食中心の生活だったこともあって肌荒れに苦しんだ。ところがみそと出合い、食生活を変えたら肌がすっかり良くなった。そういう経験をしたので、みそだけでなく、食の大切さも訴えている」
--起業志向は
「何かやりたいとは思っていたが、明確な夢があったわけではなかった。まさかこれほどまでみそにハマるとは思ってもみなかった。みそと出合って初めて夢を持てた」
--みそ離れが深刻だ
「この40年間で消費量が約半分になり、何百もの醸造所がなくなった。このままではみそ文化が途絶えてしまう。なんとか若者や次世代へ伝えていくことはできないかと考えた。業界関係者には当初、『派手な衣装の女の子がいったい何をするつもり?』と訝(いぶか)しまれたが、『今までにない発想で熱心にみそを伝えてくれてありがとう』といわれるようになった」
--地域活性化にも熱心だ
「北海道から沖縄まで、みそのない地域はない。各地で『みそまるワークショップ』を開催し、地元のみそと食材を使った『ご当地みそまる』を提案するなど、独自のPR事業をメーンに収益基盤を確立したい」
--夢は
「第一に、これからお母さんになる女性たちの健康状態を改善したい。そのために情報紙の部数拡大も含め、伝える手段を講じていく。みそによって心も体も美しくなった女性と、世界に誇るみそを選ぶ『ミソインターナショナル』の開催も考えている」
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【プロフィル】藤本智子
ふじもと・ともこ 高校卒業後、アルバイトを経てアパレル会社に入社。2010年トランタンネットワーク新聞社入社。29歳。神奈川県出身。
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【会社概要】トランタンネットワーク新聞社 ジャパン味噌プレス
▽本社=横浜市神奈川区大野町1-8-406▽設立=1995年6月
▽資本金=1670万円
▽従業員=5人
▽事業内容=みその普及を目的とした情報紙の発行やイベントの主催など
「フジサンケイビジネスアイ」