多言語化を制するものがグローバル化を制する

第8回

世界の主要言語を挙げることができるか

上田輝彦 2016年12月1日
 

前回、世界には3千から8千ぐらいの言語があり、滅びゆく運命にある少数言語が多いことを述べた。では逆に、世界で最も多くの人に使われている言語、トップ10位、さらにはトップ20位の言語を挙げることができるだろうか。おそらく知らない言語がたくさん登場することに驚かれることだろう。


まず、ネイティブ話者人口のトップ10位 (※)から見ていきたい。


1位:中国語 9.6億人

2位:スペイン語 4.1億人

3位:英語 3.6億人

4位:ヒンディー語 3.1億人

5位:アラビア語 3億人

6位:ポルトガル語 2.2億人

7位:ベンガル語 2.1億人

8位:ロシア語 1.6億人

9位:日本語 1.2億人

10位:パンジャーブ語 1億人


いくつかの言語を除いて、ほほ聞いたことがあるだろうし、どこで話されているかもおおよそ見当がつくだろうが、この中で、たとえばベンガル語やパンジャーブ語は一体どこで話されているか、ご存知だろうか。


ベンガル語とはバングラデシュ・インド東部で話されている言語である。実は日本語と語順が同じ。インド国歌およびバングラデシュ国歌の作詞作曲者で、アジア人初のノーベル文学賞受賞者でもあるタゴールはこのベンガル語ネイティブだ。以前、パキスタン領だったバングラデシュはベンガル語を守るために血を流し独立した。その言語運動を記念して2月21日はバングラデシュにて「言語運動記念日」という祝日となっている。また、それを受てUNESCO(国連教育科学文化機関)は同日を「国際母語の日」に制定した。


ちなみに、この言語運動記念碑のささやかなレプリカが池袋西口公園内にある。もしあなたが言語を取り扱っている人ならぜひ一度は訪れて欲しい(笑)。


次にパンジャーブ語。これは主にパキスタン東部のパンジャーブ州で話されている言語で、こちらも日本語と語順は同じである。パキスタンの人口の約4割を占めるのに同国の公用語になっていないのはベンガル語と対照的。在外インド人はこのパンジャーブ語を母語としている人が多い。


次に、11位以下20位(※)までを見てみるとこうなる。


11位:ドイツ語 9千万人

12位:ジャワ語 8.2千万人

13位:呉語(上海語含む) 8千万人

14位:マレー語 7.7千万人

15位:テルグ語 7.6千万人

16位:ベトナム語 7.6千万人

17位:韓国・朝鮮語 7.6千万人

18位:フランス語 7.5千万人

19位:マラーティー語 7.3千万人

20位:タミル語 7千万人


はたしてどの言語がどこで話されているかわかるだろうか。みなさんにとっておそらく馴染みが薄いだろうと思われる言語について以下簡単に述べていきたい。


まずは12位のジャワ語。あの「ジャワカレー」のジャワ。ちなみにジャワ島ではジャワカレーという料理にはお目にかかれない(笑)というのは余談だが、この言語はインドネシアのジャワ島で主に話されている。公用語であるインドネシア語とは全く別の言語で、インドネシアの公用語になっていないのはパキスタンにおけるパンジャーブ語と同じ扱いだ。


13位の呉語。これは上海市、浙江省を中心にした地方で話されている。上海語は呉語の一方言。会話上は中国語(普通語)と発音も単語も大きく違う。


14位のマレー語はマレー半島(マレーシア、シンガポール)とブルネイで主に話されている。インドネシア語と似ており、互いがマレー語とインドネシア語で会話しても互いの言い回しなどを理解しているため会話が成立する。


15位のテルグ語はインド南東部ハイデラバード等で主に使われている。日本語と同じ語順だ。東洋のイタリア語と呼ばれることからわかるように、日本人にとっては発音しやすい言語である。


19位のマラーティー語はインド中央西部ムンバイを中心に話されている。ヒンディー語と同じ文字を使い、ヒンディー語話者とは多少会話が成立する。


20位のタミル語はインド南東部チェンナイ周辺で主に話されている。日本語と同じ語順で、日本語と発音および意味が似ている単語も多いことから日本語の起源がタミル語にあると唱える学者もいる。


このように、日本ではあまり馴染みのない言語が上位20位にたくさん登場し、また、いずれも南アジアや東南アジアで話されている言語であることにさぞ驚かれたのではないだろうか。


これらの言語は、これまでは人口は多いものの一人当たりの所得が低く経済的に注目されてこなかった。しかしこれらの言語が使われている国/地域の多くは、将来的に経済成長が見込まれている。例えばインドは、2022年には人口が中国を抜き世界一になり、2030年にはGDPが日本を抜いて世界第3位になると予測されている。こうした流れが鮮明になるにつれ、個別の言語でマーケティングを展開する必要性も高まるだろう。自らに置き換えると理解しやすいと思うが、やはり自分の母語で触れる情報の方が親しみを覚えるものだ。そして、上記言語には個別にマーケティングをするに足る十分な規模がある。


5年後の2022年、13年後の2030年、読者にとって上記言語の位置づけはどうなっているだろうか。非常に面白くなりそうだ。


https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_languages_by_number_of_native_speakers


(次回に続く)

 
 

WIPジャパン株式会社
代表取締役会長 上田輝彦(うえだ てるひこ)

福井・兼業農家出身。中・高では卓球選手。数学・世界史・世界地理を愛好。上智大学(法学部)在学中、欧州各国や中国等を跋渉、その後、住友銀行(大阪)、英国ケンブリッジ大学大学院留学(歴史学部)を経てWIP創業。オリンピック関連調査を端緒として、多言語および海外市場を対象にした事業のみに特化し現在に至る。「グローバルビジネスほど面白いものはない」が信条。

一般社団法人クールジャパン協議会 専務理事

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