多言語化を制するものがグローバル化を制する

第10回

多言語化への投資、まずは「売上の1%」

上田輝彦 2017年4月19日
 
UNCTAD(国連貿易開発会議)の「World Investment Report 2016」によれば、2015年の世界のFDI(海外直接投資)残高は2000年と比べて3倍以上に増加、また、同じく国連機関のUNWTO(国連世界観光機構)の「World Tourism Barometer」によると、2015年に海外旅行をした人の数は過去最高の約11.8億人(前年+約5,000万人、2000年の約1.8倍)となっており、多くの懸案を抱えながらも、日々世界の国々・地域は相互の結び付きを強めています。

このように経済・文化の面において世界中がますます深く強く結び付き続ける状況下、世界中の企業等も多言語化への取り組みを強化しています。世界の言語サービス市場の規模は2016年に400億米ドル(約4.4兆円)、2020年には約450億米ドル(約5兆円)に達すると予測されています。

これは主に翻訳に限定した場合の数値で、多言語人材の獲得や研修などの従業員への多言語化教育、Webサイトやパンフレットなどのデザイン等の最適化(多言語化対応といった場合、今や言葉だけでなくデザインも含めた取り組みが必要です)などを含めると、さらに大きな数字になるでしょう。

日本においては、グローバル化や多言語化への対応は、ほとんどの企業・団体にとって長年の課題です。特に、今後、未曾有の数の外国人が日本に押し寄せてきます。この課題に取り組み、解消していくことはもはや「待ったなし」、現場の運営レベルを超え、経営や事業の戦略レベルで考慮すべきことになっていると思います。

当社にもこうした相談が増えてきていますが、私たちがお伝えしているのは、

・貴社のビジネスを多言語化するとどんなことが起きると思われますか?
・もし日本語市場以外の売上増にご関心がおありでしたら、売上の1%を多言語化に投資することをお勧めします。
・きっと十分ペイします。市場は日本語だけではありませんから。
・打ち手は沢山あります。経営戦略の次元から考え、手間・コストがかからず期待効果が高い項目から着実に展開していきましょう。

ということです。多言語化が何を指すかは、それぞれの顧客によって異なりますが、今のところ、わかりやすく「まずは売上の1%を多言語化の予算に充てて、第一歩を踏み出しましょう」というイメージの下にこうしたご相談やご依頼への対応を進めています。

上述したように、多言語化とは、単に自社の保有コンテンツなどを翻訳するにとどまりませんし、目的や課題によって焦点を合わせる領域や導入する施策も千差万別のため、一義的に定義できるものではありませんので、当事者はもとより相談される側も戸惑ってしまう場合が多いようです。

当社の場合は、「多言語化する目的」から「顧客にとっての多言語化は何を指すか」を特定し、導入計画を進めるようにしています。ケースによって、コンテンツの翻訳が中心であったり人材の採用が主になったり、また必要な予算も売上の1%を超えることもありますが、多言語化展開の第一歩として、「売上の1%を多言語化に回したときに何ができるか」という問題設定はシンプルで手を着けやすいのではないでしょうか。

戦略的な視点は必須ですが、まずは何よりも取り組んでみることが重要です。

 
 

WIPジャパン株式会社
代表取締役会長 上田輝彦(うえだ てるひこ)

福井・兼業農家出身。中・高では卓球選手。数学・世界史・世界地理を愛好。上智大学(法学部)在学中、欧州各国や中国等を跋渉、その後、住友銀行(大阪)、英国ケンブリッジ大学大学院留学(歴史学部)を経てWIP創業。オリンピック関連調査を端緒として、多言語および海外市場を対象にした事業のみに特化し現在に至る。「グローバルビジネスほど面白いものはない」が信条。

一般社団法人クールジャパン協議会 専務理事

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