多言語化を制するものがグローバル化を制する

第4回

視座を高く、視野を広く、視点を柔らかく(後編)

上田輝彦 2015年11月17日
 
【視野を柔らかくすること】

これは、いろいろな立場から物事を捉える・考えることを意味する。

私自身、3つの考え方の中でこれが一番難しく、かなり強く意識している考え方である。

人間は誰しも、自分が生まれ育った環境やこれまでの経験に囚われがちで、相当意識していないと、ついつい自分の慣れた視点のみで物事を判断しようとしてしまうからだ。

追って述べていくが、多言語化によって、視点を柔らかくする習慣を身に付けることができる。

言語や文化によって虹の色の数は違う、日本語は水と湯を区別するが英語ではwaterに形容詞を追加するだけ、という話は有名だ。

つまり最初に認識していただきたいのは、言語や文化によって、世界の切り取り方が異なるとういことである。

相手の言語が理解できなくても、まずはこのような違いがあるという認識を持つこと。そして、相手の立場からそのとき共にしている状況を見たり考えたりしたらどうなるのかと想像すること。この視点を持つだけで、コミュニケーションのあり方が随分と変わってくるはずだ。

弊社では、各自が担当する国や地域について最低20冊の文献に目を通すようにしている。根拠が薄弱な想像は、思い込みや妄想に過ぎない。ある文化、ある国の中でも当然いろいろな考え方や見方があるわけで、それらを知りつつ、さらにその通奏低音は何かに考えを巡らせる-この繰り返しが、異文化への理解と想像を豊かにしてくれるのだと思う。

もちろん原語で読む方が効果は大きいが、寸暇が勝負を分ける激しい競争の世界においては、それはかなり厳しい。

幸い、日本は翻訳大国だ。さまざまな言語の書物が日本語に訳されている。まずは日本語で十分なので、自分が向き合う国・地域の文化や考え方を知るために、新たな視点を身に付けていただきたい。

多言語化に取り組むことでこのような差異に気づくこと、それは自分の視点の数を増やし、価値観を柔軟で豊かなものにしてくれる。そしてそのような視点や価値観を持つことで、既存の製品やサービスへの見方も変わり、新たな提供方法が思いつく可能性が高まるし、新たな提供価値を見出せる機会も増えるだろう。

次回からは、グローバル化に対応し、チャンスに変えていくための最強にして必須の戦略「多言語化」について述べていきたいと思う。

 
 

WIPジャパン株式会社
代表取締役会長 上田輝彦(うえだ てるひこ)

福井・兼業農家出身。中・高では卓球選手。数学・世界史・世界地理を愛好。上智大学(法学部)在学中、欧州各国や中国等を跋渉、その後、住友銀行(大阪)、英国ケンブリッジ大学大学院留学(歴史学部)を経てWIP創業。オリンピック関連調査を端緒として、多言語および海外市場を対象にした事業のみに特化し現在に至る。「グローバルビジネスほど面白いものはない」が信条。

一般社団法人クールジャパン協議会 専務理事

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