■レポート概要
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1.はじめに
本レポートは、日本のバター市場に関する包括的調査を行ったもので、国内消費動向や生産・流通の現状、主要プレイヤーの戦略、将来見通しまでを網羅的に分析しています。近年、健康志向の高まりや食文化の多様化に伴い、従来のパンや料理への用途だけでなく、製菓・製パン業界、飲食店メニューの付加価値化、さらにはコンビニエンスストアのスイーツなど、バターの利用範囲が急速に拡大しています。その背景には、無塩バターや発酵バター、グラスフェッドバターなど、高付加価値商品への消費者ニーズのシフトが見られ、国内外のメーカーが差別化を図る競争環境が形成されています。本レポートでは、こうした市場の変化を踏まえ、データに基づいた各種指標を提示し、企業や投資家の戦略立案を支援します。
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2.市場規模と予測
日本のバター市場規模は、2024年時点で約500億円と推計され、2025年には約520億円、2030年には約610億円まで成長すると見込まれています。年平均成長率(CAGR)は約3.5%で、特に付加価値の高い発酵バターやグラスフェッドバターが高い伸びを示しています。市場全体に占める発酵バターのシェアは2024年時点で約12%ですが、健康志向や風味重視の消費拡大に伴い、2030年には約18%へと上昇すると予測されます。また、無塩バターと有塩バターの比率は従来通り無塩が優位ですが、有塩バターも料理用途での需要増加や洋菓子業界での採用拡大により、シェアを若干伸ばす動きが見られます。
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3.市場動向とドライバー
市場成長を支える主な要因として、以下が挙げられます。
健康・機能性志向の高まり:低温殺菌や発酵による乳酸菌成分を含むバターが注目され、健康価値を訴求した商品開発が進んでいます。
食文化の多様化:海外産バターやクラフトバターへの興味が高まり、専門店やオンラインショップを通じた新規ブランドが市場参入しています。
製菓・製パン市場との連携強化:業務用需要が拡大しており、中小ベーカリーから大手製パン・製菓メーカーまで、品質や風味にこだわったバターの採用が増えています。
D2C(Direct to Consumer)モデルの普及:生産者が自社サイトで直販するケースが増え、消費者のストーリー消費やサステナビリティ訴求が市場拡大の追い風となっています。
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4.製品カテゴリ別分析
本市場は主に以下のカテゴリに大別されます。
無塩バター:家庭用の基本商品で最も大きなシェアを占め、パンや料理用途に広く利用されています。食塩不使用のシンプルな味わいを求める消費者に向け、高品質生乳使用や短期流通の鮮度保証を強化した製品が増加しています。
有塩バター:料理やカナッペ、バターライスなど塩気を活かす用途で用いられ、塩分濃度や素材の産地にこだわったプレミアム製品が登場しています。
発酵バター:乳酸菌による発酵工程を経ることで香りとコクを引き出した商品で、シェアは拡大中です。特に、欧州製法を取り入れた本格派ブランドが高い支持を受けています。
グラスフェッドバター:牧草飼育の牛乳を原料としたバターで、オメガ3脂肪酸などの機能性成分が注目され、健康志向層やハイエンド市場を中心に需要が伸びています。
フレーバーバター:ハーブやガーリック、トリュフなどを配合した付加価値商品で、家庭用・業務用問わず、新たな味覚体験を提供する製品が増えています。
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5.流通チャネル別分析
流通チャネルは以下のように分類され、それぞれに特徴があります。
スーパーマーケット・生協:家庭用バターの主要販路で、プライベートブランド(PB)とナショナルブランド(NB)が競合しています。PBは価格訴求力、NBは品質訴求力で差別化が図られています。
コンビニエンスストア:小容量パッケージや使い切りタイプのバター商品を展開し、即食需要や新製品のテストマーケティングに活用されています。
業務用ルート:ホテル、レストラン、ベーカリー、製菓工場向けに大容量や専門性の高いバターが供給され、契約取引を通じた安定需要があります。
オンライン販売:D2CサイトやECモールを通じ、希少品種や地方産ブランドのバターを直販する動きが拡大。サブスクリプションモデルによる定期購入が人気を博しています。
専門店・デリカテッセン:輸入バターやクラフトバターを取り扱い、試食販売やストーリー訴求を通じた顧客体験型の販売を実施しています。
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6.消費者行動分析
調査によると、購入時の重視点として「味と風味」「原料の産地・飼育方法」「価格」「健康機能性」の順に挙げられています。特に20~40代の女性やファミリー層では、健康価値を重視した発酵バターやグラスフェッドバターの購入意欲が高く、SNSによる情報収集や口コミが購買行動に大きく影響しています。また、簡便調理ニーズの高まりから、スプレッドタイプや常温で塗れるバターが新たなカテゴリとして注目されています。
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7.競合環境と主要企業動向
主要企業としては、雪印メグミルク、よつ葉乳業、明治、共働学舎新得農場などが挙げられます。雪印メグミルクはPB拡充による量的シェアの確保と同時に、海外製バターの輸入拡大で多様な製品を展開しています。よつ葉乳業は北海道産100%を訴求した高品質路線で差別化を図り、直営店やオンラインでの直販を強化しています。明治は発酵バター技術を活かした新フレーバーバターを投入し、製菓・製パン向けソリューション提案を強化しています。共働学舎新得農場などのクラフトバターブランドは、D2Cや専門店を通じた高付加価値市場で支持を得ています。
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8.規制環境と品質管理
バターは食品衛生法や乳及び乳製品の成分規格等により規制されており、乳脂肪分や水分含有量、微生物基準などが厳格に定められています。また、表示規制として、原料乳の産地表示や遺伝子組換え飼料の使用有無の記載が求められるケースが増加しています。品質保証の観点では、HACCP導入やISO22000認証取得が進み、トレーサビリティ確保による安心・安全訴求が各社で強化されています。
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9.地域別分析
地域別売上高では、北海道・東北が国内生乳生産の中心であることから原料調達地として優位性を保ち、加工施設の集積も進んでいます。関東圏では消費規模が最大であり、物流ハブを通じた広域配送体制が整備されています。関西・中部圏では地場企業による地域密着型ブランドが根強い支持を受けており、沖縄・九州では観光需要を取り込んだ限定商品や地元特産品とのコラボレーションが増加しています。
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10.将来展望と戦略的提言
2030年に向け、バター市場は以下の戦略に注力することが望まれます。
高付加価値商品の開発:発酵プロセスの高度化や機能性訴求による差別化製品を拡充すること。
D2C・サブスクリプションの強化:定期購入モデルやストーリー訴求型マーケティングで顧客ロイヤルティを醸成すること。
サステナビリティと環境配慮:再生可能エネルギー利用や包装材の軽量化、動物福祉に配慮した生産プロセスを訴求し、社会的責任を果たすこと。
輸出・観光連携の推進:海外需要増加を見据えた品質基準の統一化や、観光地での体験型販売を通じたブランド認知拡大を図ること。
デジタル技術活用:生産・流通の効率化や消費者向けプラットフォーム開発において、IoTやブロックチェーンによるトレーサビリティ強化を推進すること。
これらの取り組みにより、国内のバター市場は健全な拡大を続けるとともに、グローバル競争力を高めることが期待されます。
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■目次
要旨
1.1 調査背景と目的
1.2 調査スコープおよび対象期間(2019–2030年)
1.3 本レポートの構成および読み方
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市場構造
2.1 市場考察
2.1.1 日本のバター市場定義
2.1.2 バターと関連乳製品(チーズ、マーガリン等)のポジショニング
2.1.3 主要ステークホルダー(生乳生産者、メーカー、流通業者、最終消費者)
2.2 前提条件
2.2.1 通貨と換算レート
2.2.2 データ収集範囲と試算手法
2.2.3 経済・政策前提(輸入関税、補助金制度等)
2.3 制限事項
2.3.1 二次データのばらつきと精度
2.3.2 一次調査対象企業数の制限
2.3.3 予測モデルの前提仮定
2.4 略語一覧
2.4.1 用語・略語対照表
2.4.2 国際規格・コード(HSコード等)
2.5 情報源
2.5.1 一次情報(メーカーインタビュー、業界専門家ヒアリング)
2.5.2 二次情報(公的統計、業界団体資料、専門誌)
2.6 定義
2.6.1 製品カテゴリー定義(無塩バター、食塩バター、発酵バター等)
2.6.2 流通チャネル定義(スーパー、ディスカウントストア、EC、業務用卸)
2.6.3 地域区分定義(北海道、東日本、西日本、南日本)
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調査方法
3.1 二次調査
3.1.1 公的統計データ分析(農林水産省、総務省統計局等)
3.1.2 業界レポート・専門誌レビュー
3.1.3 オンラインデータベース検索
3.2 一次データ収集
3.2.1 主要メーカーへのインタビュー調査
3.2.2 小売チェーン・業務用卸へのヒアリング
3.2.3 消費者パネル調査・オンラインアンケート
3.3 市場規模算出手法
3.3.1 トップダウンアプローチ
3.3.2 ボトムアップアプローチ
3.3.3 クロスチェック・整合性検証
3.4 予測モデル構築
3.4.1 回帰分析モデル
3.4.2 シナリオ分析(ベースケース、楽観ケース、悲観ケース)
3.5 データ検証と品質管理
3.5.1 データクレンジング手順
3.5.2 専門家レビューセッション
3.6 報告書作成プロセス
3.6.1 草稿作成から最終納品までのフロー
3.6.2 品質チェック・校正手順
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日本の酪農業・バター産業概況
4.1 国内酪農業の現状
4.1.1 生乳生産量推移(全国・主要生産県別)
4.1.2 酪農家数と経営体制の変遷
4.1.3 生乳原料価格の動向
4.2 バター製造プロセス
4.2.1 原料処理工程
4.2.2 発酵・熟成技術
4.2.3 パッケージング技術
4.3 バター流通チャネル構造
4.3.1 産地直送モデル
4.3.2 卸売市場を通じた流通
4.3.3 小売チェーンとの連携
4.3.4 EC・D2Cモデルの台頭
4.4 輸入バター動向
4.4.1 主要輸入国別輸入量推移
4.4.2 輸入品種(塩・無塩・発酵)構成
4.4.3 関税・規制の影響
4.5 地域別生産・消費概況
4.5.1 北海道の生産シェアと特性
4.5.2 東日本(東北・関東)の需要動向
4.5.3 西日本(中部・関西・中国・四国)の消費傾向
4.5.4 南日本(九州・沖縄)の市場特性
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市場ダイナミクス
5.1 主要インサイト
5.1.1 健康志向・機能性志向の高まり
5.1.2 プレミアムバター・高付加価値商品の台頭
5.1.3 外食・業務用需要の変化
5.2 成長ドライバー
5.2.1 インバウンド観光需要
5.2.2 高級食材としての認知拡大
5.2.3 EC市場の拡大
5.3 抑制要因
5.3.1 生乳価格の上昇
5.3.2 国内酪農家の減少による供給制約
5.3.3 代替製品(植物性スプレッド等)の台頭
5.4 機会要因
5.4.1 オーガニック・特別認証製品の開発
5.4.2 コラボレーション商品(チョコレート、ベーカリー)
5.4.3 機能性表示食品への展開
5.5 リスク・チャレンジ
5.5.1 天候不順・疾病リスク
5.5.2 輸入規制強化リスク
5.5.3 為替変動リスク
5.6 サプライチェーン分析
5.6.1 原料調達ルート
5.6.2 製造拠点分布とキャパシティ
5.6.3 流通加⼯・輸送インフラ
5.7 政策・規制動向
5.7.1 農政改革と補助金制度
5.7.2 食品表示法・原産地表示規制
5.7.3 関税・FTA締結影響
5.8 消費者トレンド分析
5.8.1 購買チャネル選好(店舗 vs EC)
5.8.2 商品選択基準(価格・品質・機能性)
5.8.3 SNS・インフルエンサーの影響
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日本のバター市場概要
6.1 市場規模実績(2019–2024年)
6.1.1 年次成長率(CAGR)推移
6.1.2 主要セグメント別実績
6.2 市場規模予測(2025–2030年)
6.2.1 ベースケース予測
6.2.2 楽観ケース・悲観ケースシナリオ
6.3 流通チャネル別市場規模
6.3.1 スーパー/GMS
6.3.2 ディスカウントストア
6.3.3 コンビニエンスストア
6.3.4 EC/D2C
6.3.5 業務用卸・外食向け
6.4 製品タイプ別市場規模
6.4.1 無塩バター
6.4.2 食塩バター
6.4.3 発酵バター
6.4.4 高機能・機能性バター
6.4.5 オーガニックバター
6.5 用途別市場規模
6.5.1 家庭用(パン、料理、お菓子作り)
6.5.2 業務用(ベーカリー、製菓、外食)
6.6 パッケージ別市場規模
6.6.1 ブロックタイプ
6.6.2 スティックタイプ
6.6.3 チューブ・ディスペンスタイプ
6.6.4 その他パッケージ
6.7 地域別市場規模
6.7.1 北海道市場規模
6.7.2 東日本市場規模
6.7.3 西日本市場規模
6.7.4 南日本市場規模
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日本のバター市場セグメンテーション
7.1 流通チャネル別セグメント
7.1.1 スーパー/GMS
7.1.2 ディスカウントストア
7.1.3 コンビニエンスストア
7.1.4 EC/D2C
7.1.5 業務用卸
7.2 製品タイプ別セグメント
7.2.1 無塩バター
7.2.2 食塩バター
7.2.3 発酵バター
7.2.4 機能性バター
7.2.5 オーガニックバター
7.3 用途別セグメント
7.3.1 家庭用
7.3.2 業務用
7.4 パッケージ別セグメント
7.4.1 ブロック
7.4.2 スティック
7.4.3 チューブ
7.4.4 その他
7.5 価格帯別セグメント
7.5.1 プレミアム価格帯
7.5.2 ミドル価格帯
7.5.3 エコノミー価格帯
7.6 消費者タイプ別セグメント
7.6.1 健康志向層
7.6.2 グルメ志向層
7.6.3 コスト重視層
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市場機会評価
8.1 製品タイプ別機会(2025–2030年)
8.1.1 発酵バター市場の拡大可能性
8.1.2 オーガニック/機能性バター需要増加
8.2 流通チャネル別機会
8.2.1 EC/D2Cモデルの成長機会
8.2.2 業務用卸・外食向け高付加価値商品の展開
8.3 地域別機会
8.3.1 北海道観光需要を取り込む地域ブランド化
8.3.2 地方都市での地産地消プロモーション
8.4 消費者トレンドに基づく機会
8.4.1 健康・機能性表示食品の新規参入機会
8.4.2 コラボスイーツ・ベーカリー市場との連携
8.5 政策補助金・支援策の活用機会
8.5.1 農林水産省の補助金プログラム
8.5.2 地方創生・食ブランド支援策
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競争環境
9.1 ポーターの5つの力分析
9.1.1 既存競合他社の強度
9.1.2 新規参入の脅威
9.1.3 代替製品(植物性スプレッド等)の脅威
9.1.4 仕入先(生乳供給者)の交渉力
9.1.5 買い手(小売/消費者)の交渉力
9.2 主要企業プロファイル
9.2.1 雪印メグミルク株式会社
9.2.2 よつ葉乳業株式会社
9.2.3 森永乳業株式会社
9.2.4 明治乳業株式会社
9.2.5 未利用乳原料を活用する中小メーカー
9.3 競合比較マトリックス
9.3.1 製品ポートフォリオ比較
9.3.2 価格帯比較
9.3.3 流通チャネル戦略比較
9.4 M&A・提携動向
9.4.1 近年の買収・合併事例
9.4.2 戦略的提携・アライアンス事例
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免責事項
10.1 情報正確性について
10.2 本レポート利用上の注意点
10.3 発行者情報
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■レポートの詳細内容・販売サイト
https://www.marketresearch.co.jp/MRC-BF04G024-Japan-Butter-Market-Overview/