地方のベンチャー企業トップが事業の将来性をアピールする「地方発!ベンチャー企業ミートアップ」=5月18日、東京都千代田区(関東経産局提供)
■東京のVCとの橋渡しに成果
関東経済産業局と中小企業基盤整備機構が、地方のベンチャー企業と東京のベンチャーキャピタル(VC)との橋渡し事業「地方発! ベンチャー企業ミートアップ」を2015年4月から共同で展開している。16回実施され、資金調達に成功したベンチャー企業など、成果が少しずつ出始めている。
5月18日、東京都千代田区で開かれたミートアップには4社のベンチャー企業トップが、集まったVCの担当者ら約70人を前に会社の概要や事業の将来性などについて約10分間説明した。
登壇企業の一つ、IT(情報技術)ベンチャーのエイ・オー・テクノロジーズ(AOT、千葉県柏市)の井上克己社長は「もう少し時間が欲しかった。でも必要なことは話せた」と語った。AOTは、画像や音声の認識やデータベース(DB)の検索や照合に優れた「メモリズムプロセッサー」と呼ばれる新たなコンピューター技術の開発に取り組んでいる。VCの担当者からは「この技術で人々の生活にどのような恩恵をもたらすのか」といった質問が次々と出されたという。
井上社長は登壇に当たり、中小機構から紹介された専門家の助言を受けながら説明資料や原稿を何度も書き直した。最初の原稿は8割が技術的な内容だったが「素人にもわかりやすく」「特許や開発状況も含めて説明して」などと指導を受けた。ミートアップ終了後も継続して的確な助言が得られたという。
井上社長に、ミートアップへの参加を打診した中小機構関東本部経営支援課の井上鉄也課長代理は「日を追うごとに内容がブラッシュアップされ、事業への熱い思いがより明確になった」と指摘する。
ITだけでなく、子育てや介護などの社会的課題の解決に取り組むベンチャー企業は、地方でも続々と誕生している。ユニークなアイデアに裏打ちされた技術やサービスを具現化するためには実証実験などが不可欠だが、それには大企業の協力や資金の調達が不可欠だ。
ただ、地方には起業支援に精通した人材が少なく、VCもほとんどが東京に集中しており、地方のベンチャー企業には成長の阻害要因となっている。
そこで関東経産局は「地方のベンチャー企業と東京のVCとの橋渡しができれば、地方から新たなイノベーションが起こせる上、地域経済の活性化につながる」(久世克行新規事業課課長補佐)と考え、ミートアップを企画。初年度の15年度は毎月、16年度以降は2カ月に1度のペースで開催してきた。
首都圏に偏在する起業支援人材に地方への関心を促す狙いから、参加するベンチャー企業には地元の支援機関の推薦を条件にしている。
これまで16回のミートアップが開かれ、50社以上の地方発ベンチャー企業が参加。このうち、IoT(モノのインターネット)ベンチャーのスカイディスク(福岡市中央区)が昨年ニッセイキャピタルから資金調達を実施するなどの成功事例も出ている。
久世課長は「テーマ別での開催も検討したい」とミートアップをより充実させる考えだ。
「フジサンケイビジネスアイ」