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【東日本大震災5年】被災地企業への支援多角化

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損保ジャパン日本興亜ホールディングスと第一生命保険が共同で開いた「東北3県復興支援マルシェ」=2日、東京都中央区

■販路開拓、ブランドづくりや新商品開発

 東日本大震災から間もなく5年。被災地企業への支援が多角化してきた。被災3県(岩手・宮城・福島)の特産品を紹介・販売するイベントから、産品の具体的な販路開拓への支援や広域でのブランドづくり、新商品の共同開発などへ取り組みが広がっている。インフラの復旧が進み、都市部では経済活動が回復する一方、沿岸部など被害の大きかった地域では人口減、働き手の不足などで経営環境は厳しいまま。原発事故の風評被害も残る。時間の経過とともに風化の懸念もある中、本格復興へ向けた模索が続いている。

◆都内業者と直接商談

 2月22日に東京商工会議所北支部が開いた「震災復興支援 東京北区・岩手ビジネス商談会」(東京都北区の北とぴあ展示ホール)。会場には、三陸のサケを使ったスモークサーモンやトマトなど農水産物を中心に生産する岩手の地元企業38社が出展。都内の卸業者など約50社の担当者との商談に臨んだ。

 「リアルな形での商談会にすれば、より多くの販路開拓につなげられる」(担当者)として、今回の商談会が企画された。北支部では昨年2月にテレビ会議方式で商談会を実施したところ、3件の商談が成立。産品への評価は高く、直接会って交渉すれば取引に結びつくとの期待があった。

 被災地の企業の中には従業員が数人のところも多く、東京のイベントには参加できないケースもある。このため商談会に先立ち、北支部の担当者らが被災地企業を直接訪問。商品の特徴などを聞き取り、商談会にどうしても来られない場合は、北支部の担当者が代わって商談にあたるなど支援した。

 三陸沿岸の水産加工業を盛り上げようと、統一的なブランドづくりを目指した官民一体の取り組みも始まった。

 今月、東北経済産業局が音頭を取り、青森、宮城、岩手などの自治体や商工団体が集まる広域の協議会が初めて発足した。共通のロゴマークなどによる三陸ブランドの推進や商談会の開催で、水産加工業者らを支援する。企業連携で取り扱う商品数を増やす。大量発注に対応できるなら勝機は十分にあるとみており、将来の海外市場開拓も見据える。

 被災地の企業と独自に連携する動きもある。JR東日本は、リンゴやサツマイモなど青森、福島、茨城各県の食材を使った菓子10商品を地元食品メーカーと開発し、今月29日から首都圏の駅ナカにあるコンビニエンスストア「NewDays」などで販売する。新ブランド「おやつTIMES」シリーズで、それぞれ200円前後。高級スーパーを展開する紀ノ国屋が味や製造方法を監修した。

◆特産販売会数多く

 一方、震災直後から各地に広がった被災地特産品の販売会は今も数多く企画されている。

 損保ジャパン日本興亜ホールディングスと第一生命保険は2日、東京・日本橋の損保ジャパン日本興亜日本橋ビルで「東北3県復興支援マルシェ」を開いた。

 損保ジャパンは、年に数回こうしたイベントを開催しているが、両社による共催は初めてだ。会場には岩手の「かもめの玉子ミニ」、宮城「萩の月」、福島「ままどおる」といった銘菓や地酒など約80種類の地元産品が並んだ。

 また、中小企業基盤整備機構も「みちのく いいもん うまいもん」と題した販売会を10~16日、東京・西新宿の京王百貨店で開く。約40社が参加し、地元以外の消費者にはほとんど知られていない、隠れた名品も数多くそろえるという。

■支援者との「ウィンウィン」関係必要

 被災3県では、今もプレハブで営業を続ける店が多い。地元で暮らす住民が減る中、被災地を訪れるボランティアや作業員も減っている。岩手県中小企業家同友会の田村満代表理事は「大型スーパーなどの進出もあり、経営環境は年々厳しくなる。このままでは、地域社会を支えてきた地元の商工業が成り立たなくなる」と危機感を抱く。

 特に沿岸部の水産業が受けた打撃は大きい。農林水産省が1日に発表した被災地の農林水産業の復旧状況によると、北海道を加えた7道県の被災漁港計319カ所のうち、233カ所(73%)は1月末時点で水揚げ機能が完全回復した。だが青森、岩手、宮城、福島、茨城の5県の水産加工業者へのアンケート(2015年11月~16年1月末実施、268企業が回答)で、売り上げが震災前の「8割以上に回復した」事業者は48%にとどまる。

 そこに震災5年の課題がある。潤沢な補助金などで設備の復旧は進んだが、肝心の需要がない。

 このため東商の商談会に参加した、しょうゆ醸造の八木澤商店(岩手県陸前高田市)の河野通洋社長は、「支援する、されるという意識だけの関係では長続きしない。お互いの強みを生かした『ウィンウィン』の関係を築きたい」と話す。

 被災地が需要減や人手不足をどう乗り越えていくのか。人口減に直面する日本経済の先行きを占うことにもなりそうだ。

「フジサンケイビジネスアイ」

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