■レポート概要
本レポートは、日本のゲノミクス市場を対象に、2030年までの市場像を整理する内容です。医療分野を中心に、ゲノム研究と臨床活用がどのように進展しているかを俯瞰し、研究機関・大学・製薬企業・検査/解析サービス事業者などが関与するエコシステムを軸にまとめています。市場は「製品」と「サービス」に大別され、研究用途と臨床用途の双方において、どの領域で需要が強まっているかを具体的に描写しています。
また、日本が集団レベルのゲノム研究を推進してきた背景として、国家的プログラムによる基盤整備が重要な役割を果たしてきた点が強調されています。希少疾患の解明、がんゲノム医療の推進、精密医療の浸透といったテーマが、研究の枠を超えて医療実装へ向かう流れとして示されています。
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国家プログラムが支えるゲノム産業の推進力
日本のゲノム産業の発展を後押ししてきた要因として、感染症国際研究ネットワーク推進事業(J-GRID)や、希少疾病・未診断疾患対策推進事業(IRUD)が挙げられています。これらの取り組みは、ゲノミクスを国民の医療成果の改善に結び付けることへ強い重点を置き、医療現場における課題解決に直結する枠組みとして位置づけられています。
特にIRUDは、診断がつかなかった、あるいは誤診されていた患者の医療ニーズに応えるため、希少疾患の特定プロセスへゲノミクスを組み込むことを主目的の一つに掲げています。日本医療研究開発機構(AMED)が資金を提供するIRUDプログラムにより、病院・研究機関・ゲノムシークエンシング施設の連携が強化され、希少疾患の早期発見と治療の強化へつながる体制が整えられたと説明されています。
これらの国家的な枠組みは、研究の推進だけでなく、臨床現場でのゲノム活用を促す導線として機能し、日本がゲノム研究の推進国として基盤を築くうえで重要な意味を持つものとして整理されています。
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産学連携と主要な関与主体
日本におけるゲノム解読の取り組みでは、京都大学や東京大学などの大学に加え、武田薬品工業やアステラス製薬など大手製薬企業が重要な役割を担っている点が示されています。とりわけ薬理ゲノミクスや個別化医療の領域では、産学連携によって研究の質とスループットが大きく向上したと述べられています。
研究機関の側では、ゲノム研究を牽引する存在として理化学研究所が挙げられています。また、商業化・実装の観点では、シークエンシングキットや遺伝子治療プラットフォームといった重要なゲノム関連製品を製造・販売する企業としてタカラバイオが言及され、イノベーションと商業化の推進役として位置づけられています。
さらに、日本のバイオテクノロジー環境では、大学・製薬会社・診断サービス事業者の協力が促進され、ゲノミクスの利用拡大を加速する土台になっている点も説明されています。
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市場成長の見通しと医療ニーズの変化
本レポートでは、日本のゲノム市場が2025年から2030年にかけて、年平均成長率16.46%以上で成長する見通しが示されています。成長を後押しする複数の要因の中でも、最も重要な要素として日本の高齢化が挙げられています。高齢患者に特有の遺伝子プロファイルや分子プロファイルに合わせて最適化した精密治療への需要が高まり、ゲノム医療の役割が拡大しているという整理です。
加齢に伴う慢性疾患である、がん・心血管疾患・神経変性疾患などに対して、より良い治療法が期待されており、ゲノム医療は将来の医療計画において極めて重要な要素として扱われています。
また、アンチエイジングや長寿研究へのゲノミクス活用が日本で盛んになっている点も示されます。高齢化がもたらす課題に直面する中で、健康的な老化の遺伝的基盤や、生活の質を高め得る治療法を調査するために、ゲノム技術がより広く用いられるようになっているという流れです。
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がんゲノム領域の進展とデータ活用の枠組み
日本のゲノム産業における注目すべき進歩として、がんゲノム先端医療研究センター(C-CAT)構想に代表される、国立がんゲノム・スクリーニング・プログラムの導入が挙げられています。この枠組みは、個人のゲノムプロファイルに基づくオーダーメイドのがん治療を提供するという目的に沿って、全国のがん患者からゲノムデータを収集・解析することを狙いとしています。
このような取り組みは、日本の医療システムにゲノミクスを統合するうえでの重要なステップとして位置づけられています。研究から臨床への接続を強め、ゲノム情報を診療へ活用していくための実務的な足場として機能する点が示されています。
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製品領域の構成と需要を支える用途
本レポートでは、製品別のゲノム市場は「製品」と「サービス」に分けられ、製品側では試薬・消耗品が大きな比重を占めると説明されています。具体的には、分子プローブ、PCRマスターミックス、シーケンス試薬、DNA抽出キットなどが挙げられ、病院や研究所でゲノム処理を行ううえで不可欠な要素として整理されています。
重要な製品カテゴリーとしては、ゲノムデータ解析用のバイオインフォマティクスソフトウェア、次世代シーケンシング(NGS)装置などのシーケンシングプラットフォームが含まれます。加えて、遺伝子編集技術、とりわけCRISPRに基づく技術が、高度な研究用途で普及している点も示されています。
これらの製品需要を押し上げる背景として、NGS、PCR、マイクロアレイなどの技術により、診断や個別化医療における解析がより迅速かつ正確になったことが挙げられています。主要なユーザーは、研究機関、バイオテクノロジー企業、診断ラボ、病院、製薬会社であり、用途はゲノム薬理学、希少疾患診断、腫瘍学研究などに広がっていると説明されています。
また、日本で関連製品を販売する企業として、タカラバイオ、シスメックス、理研ジェネシス、MBLなどが挙げられ、タカラバイオはPCR、遺伝子治療、NGSに関する試薬・機器・サービスを提供する企業として例示されています。
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サービス領域の構成と提供価値
サービス領域には、シークエンシングサービス、バイオインフォマティクス解析、遺伝カウンセリング、ゲノムデータストレージソリューションが含まれると整理されています。サービスの役割は、検体解析そのものに加えて、データ解釈、臨床や研究の要件に合わせた運用支援、継続的なデータ取り扱いに及ぶ点に特徴があります。
主要なサービス提供者としては、理研ジェネシス、マクロゲンジャパン、そして臨床・研究施設の要件に合わせたNGSサービスを提供する国際的プレーヤーとしてイルミナジャパンが挙げられています。利用分野は、腫瘍学、感染症、薬理ゲノミクス、農業ゲノミクスなど幅広く、精密医療への取り組み、再生医療、アンチエイジング研究においても普及が進んでいる点が示されています。
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技術トレンドと研究・臨床を変える主要技術
日本のゲノム産業を牽引する要因として、ゲノム研究と臨床診断に変革をもたらした最先端技術の活用が挙げられています。中でもトップ技術として次世代シーケンサー(NGS)が位置づけられ、全ゲノム、エクソーム、ターゲット解析におけるハイスループットなシーケンシングを可能にする点が強調されています。日本では、薬理ゲノミクス、希少疾患の同定、がん診断に不可欠な技術として整理され、C-CATのがんゲノムスクリーニングプログラムなど国家プログラムがNGS活用を後押ししている流れが示されています。
一方で、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)はゲノムワークフローにおける基本技術として引き続き重要であり、研究・臨床診断を支える手段として幅広く用いられています。日本ではタカラバイオやシスメックスがPCRシステムや試薬の主要サプライヤーとして挙げられ、感染症検査への応用も含めて、遺伝子増幅、突然変異検出、病原体同定に活用されている点が説明されています。
マイクロアレイは、NGSの普及により市場シェアが低下したものの、SNPジェノタイピングや遺伝子発現プロファイリングで依然として価値があり、学術研究や特定の臨床用途で使用が続いていると示されています。サンガーシーケンスは、NGSで得られた知見の検証や小規模解析で使用され、診断ワークフローで見つかった遺伝子変異の検証に有用な手法として位置づけられています。
さらに、フローサイトメトリーは補助的技術でありながら、がん生物学や免疫ゲノミクスに関わる細胞ベース研究に不可欠で、ゲノミクスと免疫療法を結び付けるトランスレーショナルリサーチで広範に採用されている点が示されています。加えて、CRISPR-Cas9遺伝子編集やシングルセルシーケンスなどの技術が、再生医療や精密医療の研究開発環境において重要度を増していることも述べられています。
また、日本は第3世代シーケンシングとして、ロングリードシーケンス技術の導入にも投資してきた点が示され、希少疾患や遺伝性疾患に関わる複雑なゲノム領域の解読で重要な役割を果たす技術として整理されています。
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成長を阻む制約とインフラ面の重要課題
本レポートは、日本が急速な高齢化という固有の課題に直面している点にも言及しています。ゲノミクス主導の医療が求められる局面が増える一方で、訓練を受けた専門家の確保、データ保存能力、そして通常の臨床治療へゲノムデータを統合する体制など、ゲノム・インフラに負担がかかる構図が説明されています。
成長を維持し、公衆衛生上の成果を高めるというゲノミクスの可能性を最大限に引き出すためには、これらのインフラ上の不足に対処することが重要であるという問題意識が示されています。研究・臨床の両面でゲノミクスの利用が拡大するほど、運用体制やデータ取り扱いの基盤強化が、市場の持続的な発展に直結する論点として浮かび上がります。
■目次
1. レポート前提情報
0.1. 本レポートの考察
0.1.1. 歴史的年:2019年
0.1.2. 基準年:2024年
0.1.3. 推定年:2025年
0.1.4. 予測年:2030年
0.2. 本レポートの対象分野
0.2.1. ゲノミクス市場の価値とセグメント別予測
0.2.2. 様々な促進要因と課題
0.2.3. 進行中のトレンドと開発
0.2.4. 注目企業
0.2.5. 戦略的提言
0.3. セグメント区分(製品・サービス別)
0.3.1. 製品
0.3.2. サービス
0.4. セグメント区分(技術別)
0.4.1. 次世代シーケンサー(エヌジーエス)
0.4.2. ピーシーアール
0.4.3. マイクロアレイ
0.4.4. サンガーシーケンス
0.4.5. フローサイトメトリー
0.4.6. その他
0.5. セグメント区分(用途別)
0.5.1. 診断薬(腫瘍、循環器、希少疾患、感染症、その他)
0.5.2. 創薬・医薬品開発
0.5.3. プレシジョン・メディシン
0.5.4. 農業・動物ゲノム
0.5.5. その他の用途
0.6. セグメント区分(地域別)
0.6.1. 北
0.6.2. 東部
0.6.3. 西日本
0.6.4. 南地域
0.7. レポートのアプローチ
0.7.1. 二次調査(第三者情報源の収集・分析)
0.7.2. 一次調査(主要プレーヤーへの電話インタビュー等)
0.7.3. 消費者の地域別・階層別・年齢層別・性別でのセグメンテーション
0.7.4. 二次ソース情報の検証
0.8. 対象読者
0.8.1. 業界コンサルタント
0.8.2. メーカー
0.8.3. サプライヤー
0.8.4. 関連団体・組織
0.8.5. 政府機関
0.8.6. その他ステークホルダー
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2. 要旨
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3. 市場構造
2.1. 市場考察
2.2. 前提条件
2.3. 制限事項
2.4. 略語
2.5. 情報源
2.6. 定義
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4. 調査方法
3.1. 二次調査
3.2. 一次データ収集
3.3. 市場形成と検証
3.4. 報告書作成、品質チェック、納品
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5. 日本の地理
4.1. 人口分布表
4.2. 日本のマクロ経済指標
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6. 市場ダイナミクス
5.1. 主要インサイト
5.2. 最近の動向
5.3. 市場促進要因と機会
5.4. 市場の阻害要因と課題
5.5. 市場動向
5.6. サプライチェーン分析
5.7. 政策と規制の枠組み
5.8. 業界専門家の見解
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7. 日本ゲノム市場概要
6.1. 市場規模(金額ベース)
6.2. 市場規模および予測:製品・サービス別
6.3. 市場規模・予測:技術別
6.4. 市場規模・予測:用途別
6.5. 市場規模・予測:地域別
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8. 日本のゲノム市場セグメント
7.1. 日本ゲノム市場:製品・サービス別
7.1.1. 日本のゲノム市場規模、製品別、2019年〜2030年
7.1.2. 日本のゲノム市場規模、サービス別、2019年〜2030年
7.2. 日本のゲノム市場規模、技術別
7.2.1. 日本のゲノム市場規模、次世代シーケンサー(エヌジーエス)別、2019年〜2030年
7.2.2. 日本のゲノム市場規模、ピーシーアール別、2019年〜2030年
7.2.3. 日本ゲノム市場規模:マイクロアレイ別、2019年〜2030年
7.2.4. 日本ゲノム市場規模:サンガーシーケンス別、2019年〜2030年
7.2.5. 日本のゲノム市場規模:フローサイトメトリー別、2019年〜2030年
7.2.6. 日本のゲノム市場規模:その他別、2019年〜2030年
7.3. 日本のゲノム市場規模、用途別
7.3.1. 日本ゲノム市場規模、診断薬別(腫瘍、循環器、希少疾患、感染症、その他)、2019年〜2030年
7.3.2. 日本のゲノム市場規模、創薬・医薬品開発別、2019年〜2030年
7.3.3. 日本のゲノム市場規模、プレシジョン・メディシン別、2019年〜2030年
7.3.4. 日本ゲノム市場規模、農業・動物ゲノム別、2019年〜2030年
7.3.5. 日本ゲノム市場規模、その他の用途別、2019年〜2030年
7.4. 日本のゲノム市場、地域別
7.4.1. 日本のゲノム市場規模、北別、2019年〜2030年
7.4.2. 日本ゲノム市場規模、東部別、2019年〜2030年
7.4.3. 日本ゲノム市場規模、西日本別、2019年〜2030年
7.4.4. 日本のゲノム市場規模、南地域別、2019年〜2030年
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8. 日本ゲノム市場機会評価
8.1. 製品・サービス別、2025年〜2030年
8.2. 技術別、2025年〜2030年
8.3. アプリケーション別、2025年〜2030年
8.4. 地域別、2025年〜2030年
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9. 競争環境
9.1. ポーターの5つの力
9.2. 会社概要
9.2.1. 会社1
9.2.1.1. 会社概要
9.2.1.2. 会社概要
9.2.1.3. 財務ハイライト
9.2.1.4. 地理的洞察
9.2.1.5. 事業セグメントと業績
9.2.1.6. 製品ポートフォリオ
9.2.1.7. 主要役員
9.2.1.8. 戦略的な動きと展開
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10. 戦略的提言
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11. 免責事項
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12. 表一覧
12.1. 表1:ゲノム市場の影響因子(2024年)
12.2. 表2:日本のゲノム市場規模・予測:製品・サービス別(2019年~2030年予測)(単位:百万米ドル)
12.3. 表3:日本のゲノム市場規模・予測:技術別(2019年~2030年予測)(単位:百万米ドル)
12.4. 表4:日本ゲノム市場規模・予測:用途別(2019年~2030年予測)(単位:百万米ドル)
12.5. 表5:日本のゲノム市場規模・予測:地域別(2019年~2030年予測)(単位:百万米ドル)
12.6. 表6:日本のゲノム市場規模:製品別(2019年~2030年)(単位:百万米ドル)
12.7. 表7:日本のゲノム市場規模:サービス別(2019年~2030年)(単位:百万米ドル)
12.8. 表8:次世代シーケンサー(エヌジーエス)の日本ゲノム市場規模(2019年~2030年)(単位:百万米ドル)
12.9. 表9:ピーシーアールの日本ゲノム市場規模(2019年~2030年)(単位:百万米ドル)
12.10. 表10:マイクロアレイの日本ゲノム市場規模(2019年~2030年)(単位:百万米ドル)
12.11. 表11:サンガーシーケンスの日本ゲノム市場規模(2019年~2030年)(単位:百万米ドル)
■レポートの詳細内容・販売サイト
https://www.marketresearch.co.jp/bna-mrc05jl068-japan-genomics-market-overview/