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株式会社プロジェクトニッポン ドリームゲート 代表取締役   松谷 卓也

大手企業とスタートアップの提携を通したイノベーションを目指して

大学、スタートアップ、大企業の3つのセクターをつなげる取り組みがイノベーションには不可欠
日本に起業文化を確立することをミッションとして、経済産業省後援の起業家支援プロジェクト「起ちあがれニッポン・ドリームゲートプロジェクト」の運営を2003年から行ってきた。経験を踏まえて「日本からグローバルイノベーションがなぜ生み出されてない要因を考えたとき、技術は大学、起業家マインドはスタートアップ、販路や資金は大手企業が保有している一方、この3つのセクター間の人材の流動性が極めて低く、それぞれがバラバラに存在し交じり合っていないことに気が付きました。」と続けた。イノベーションを生み出すためには、「3つのセクターをつなげる取り組みが必要不可欠と考えました。」と松谷氏は語る。
イノベーションリーダーズサミットは大手企業とスタートアップの提携により新事業を創出することを通して日本経済活性化や起業の活発化を目的としたイベントである。2014年からスタートして2022年3月開催予定の次回で9回目を迎える。
初回は入場者数約800名の規模でスタート、現在では約14,000名が参加するまでに拡大している。同じテーマのイベントの参加者数としてアジアで最も大規模なイベントとなっている。
世界的に見ても、類する「マッチングイベントは存在せず」、「大手企業100社以上とひとまとめに商談できるイベント」も見られない。この独自性が「海外の企業や機関からも好評を得ている理由と思います。」と松谷氏は目を輝かせた。
「前回はオンラインとリアルのハイブリッド型で実施しました」と松谷氏は8回目にあたる2021年のイノベーションズリーダーズサミットを振り返った。参加企業は大手企業が100社以上に上り、スタートアップ企業は700社を超え、うち、海外31ヵ国からを250社以上が参加した。
「地道に一件、一件のマッチングの質を高めて」参加企業の満足度を確保
前回の第8回は大手企業が100社以上参加、大手企業らの参加者は役員や事業の幹部陣などで構成され1社あたりで平均15人程度が参加している。スタートアップからみると、このイベントに参加すれば、大手企業のキーパーソンと直接商談ができるというメリットがある。質が高い商談をまとめてできる点は、スタートアップからも高く評価されているようだ。
スタートアップはベンチャーキャピタルや政府機関、大学、外国政府機関など100機関以上で構成されるアドバイザリーボードメンバーから目利きをされ推薦された企業のみが参加できる完全招待制で行われている。大手企業からみても、こうした高い事業性を持つ有望なスタートアップとまとめて商談できる点が評価されているようである。
「地道に一件、一件マッチングの質を高めているので必然的に満足度は高くなったのかと思います。」と松谷氏。大手企業とスタートアップの双方にとって、質が高く利便性あるビジネスマッチングの仕組みから、参加企業が順調に増えていっているようである。その中枢をなすのはパワーマッチングという仕組みが挙げられる。松谷氏曰く「お見合いサイトのような仕組み」を持つマッチングエンジンである。大手企業とスタートアップ双方が興味先に商談リクエストを行い、相手先が受け入れると実際に商談に進むプログラムである。
実際、昨年のイベントでは約2,700件の商談から協業案件が1,000件以上生まれており、現実のマッチングの成約実績も続々と増えている。連携のスタイルついては「協業といった比較的ライトな案件から、資本業務提携といった重みのある案件まで多様です。」と松谷氏。大手企業の継続参加意向は94パーセントを超えて、極めて高い満足度を誇っている。
「ディープテック領域」からの参加企業をもっと増やしたい
大手企業からは、主にスタートアップ探索を担当する「新規事業室やR&D企画室などの部署からの参加が中心」のようだ。1社から5つか6つの部署が参加しているケースが多くみられる。「国内の大手企業全体でいうと上場企業3,000社のうち、まだ参加企業は100社強です。これからも製造業を中心に参加企業を増やしていきたいです。」と松谷氏は語る。
大手企業は、「人工知能や画像認識などデータサイエンス分野及び、ヘルスケア、素材、エネルギー、ロボティクス、脱炭素といった領域」に関心が高くなる傾向にあり、「例えば、日本の自動車メーカーにスタートアップ企業が製造するチップが供給される」といった販路の拡大のように、イノベーションズリーダーズサミットを通して、スタートアップが大手企業に対する販路を活用できる利点も生まれている。
スタートアップの招聘に関し今後も注力していきたい分野が、「ディープテック領域」を松谷氏は挙げた。「大手企業の関心領域は様々だが、共通するのは高度な科学技術が求められるディープテック領域だということです。これらは、R&D機能を持つ日本の製造業と相性が良い」とさらなるディープテックスタートアップ参加への期待に触れた。
3年をかけて、海外の大企業と日本のスタートアップのマッチングにも注力していきたい
「国内企業と海外企業のマッチングも行っていきたい。」と松谷氏。「例えば日本のスタートアップがヨーロッパの大企業とマッチングするような事例です。これからはヨーロッパの医療機器メーカーや自動車メーカー、アジアの大手企業にも参加してもらいたいです。」と言う。
「アジアの新興市場は著しく成長しており日本のスタートアップにとってもとても魅力的な市場です。そうした地域の大手企業や財閥と日本のスタートアップのマッチングを手掛け、アジア進出の足掛かりになる活動をしていきたいです。」と松谷氏は目を輝かせた。
経済産業省後援起業家支援プロジェクトの運営を経て、大手とスタートアップのマッチングを通したイノベーション促進の場づくりに取り組む。
日本に起業文化を確立することをミッションに、この新たなステージで、イノベーションの場づくりを行う“イノベーションズリーダーズサミット”のさらなる発展・拡大が期待される。
パワーマッチング2021 海外スタートアップの参加状況
株式会社プロジェクトニッポン ドリームゲート 代表取締役 松谷 卓也
<経歴>
2003年、リクルート在籍時に「日本に起業文化を確立する」というビジョンを掲げ、経済産業省後援事業として「ドリームゲートプロジェクト」を発足。2004年、国から自立運営するための運営会社として、株式会社プロジェクトニッポンを設立、代表取締役就任。2014年1月、大企業とスタートアップのマッチングにより、日本から世界へ通じるイノベーションを創出することを目的に「イノベーションリーダーズサミット(ILS)」を発足。来場者数は1万人を超え、アジア最大級のオープンイノベーションイベントとなっている。
<学歴>
立命館大学理工学部卒、米バブソン大学起業家養成者プログラム「プライス・バブソン・プログラム」修了
<公職>
・2016年~2018年 NEDO 研究評価委員(助成金審査員)
・2018年~ 経済産業省 J-Startup推薦委員
・2019年 内閣府 日本オープンイノベーション大賞 審査員
・2005年 経済産業省-米商務省平沼-エヴァンズ・イニシアティブ訪米ミッションメンバー
<講師実績>
・2019年 森ビル主催「HIP Fireside Chat 2019」登壇
・2019年 経団連 スタートアップ委員会主催「スタートアップエコシステム構築に向けた取り組み」登壇
・2018年 EY新日本有限責任監査法人主催「EY新日本 企業成長サミット」登壇
・2017年 Basis Technology主催「BIG DATA ANALYTICS TOKYO」登壇

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