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一般社団法人 産学連携推進協会     代表理事 黒瀬智恵、ソフィアプランニング インターン 島倉雄哉

最新の学術研究から「アイデアの種」を発掘する知とイノベーションのプラットフォーム

身近なキーワードで大学の最新の学術成果を検索できる「Answer Gate(アンサーゲート)」のトップページ(右下画像)
大学の窓口として産学連携をサポートしている一般社団法人産学連携推進協会では、各大学の膨大な研究成果を蓄積したデータベースと連携し、最新の研究シーズを身近なワードから検索できるプラットフォーム「Answer Gate」を2021年1月に開始する。それに先立ち、12月7―13日まで試行サービスを実施。黒瀬智恵代表理事と、同協会と連携し産学連携の推進を行っている関連企業ソフィアプランニングのインターン生・島倉雄哉氏(明治大学経営学部2年在学中)に話を聞いた。
身近なキーワードで最新の学術成果を検索できるプラットフォーム
――「Answer Gate」の特徴は?
黒瀬 当プラットフォームは、各大学の最新の研究成果(研究シーズ)を企業目線でわかりやすく紹介する窓口。全国の大学の膨大なシーズが何にどのように役立つのかを含めて、一般の方にもわかりやすく解説したデータベースを構築しています。 商材や業種などの身近なキーワードで最新の学術成果を検索できるのが特徴。自社の製品やサービスについて始終考え続け、「他社より一歩でも先んじたい」という思いを持つ経営者の皆さんに、当プラットフォームを活用し、新しい事業や製品・サービスのヒントとなる「アイデアの種」を見つけていただきたいと思います。
――どれだけの大学がプラットフォームに参加しますか?
黒瀬 現在、全国の15大学と「Answer Gate」プラットフォームを通じた包括的な協力・連携について契約を進めているほか、シーズごとに当プラットフォームへの情報開示を承諾していただいている大学が数十校あります。大学関係者から当プラットフォームに強い関心が寄せられており、当プラットフォームの立ち上げに合わせてシーズ集を刷新している大学も多く、サービス開始後さらに多くの大学の参加が見込まれます。
――検索を通じて、どういうジャンルのどんなシーズが見つかりますか?
黒瀬 従来の学術的な分類でジャンル分けを行うと、企業の皆さんが自分の望むシーズにたどり着くのが難しくなると思います。そこで、日本標準職業分類を参考に、わかりやすくジャンルを整理しました。 シーズは製造業の部品や材料、製品といった工学系のものが多いのですが、バイオ、ライフサイエンス、食品、資源・エネルギー業、農林水産業などのほか、教育、心理系を始めとする社会科学系の研究成果もデータベースに多数登録されています。 たとえば「食品」をキーワードに検索すると、「運動後の乳製品で生活習慣病を予防」「りんごの皮を利用した高付加価値食品素材」「『農業』と『ものづくり』の融合で生み出す新たな農業の未来」「もち性大麦で健康長寿」といったシーズのタイトルがヒットします。 タグ付けを工夫することなどによって、「コロナ」をキーワードに検索すると、空気清浄技術やろ過材のセラミックビーズ、あるいはライフサイエンス分野など、あるキーワードに関連する幅広いシーズ情報が得られるのが特徴です。
「食品」をキーワードに検索。難解なシーズ名や専門用語だけでなく、商材や業種といった企業視点のワードから最新の学術成果を検索できる 「食品」というキーワードから「乳製品で生活習慣病予防」や「高付加価値食品素材」、「健康長寿」といった関連シーズが見つかる
――社会科学系のシーズはどう役立ちますか?
島崎 地域振興や地方創生をテーマに、実際に現地で調査した内容を、論文や研究成果として発表している大学の研究者が数多くいます。こうした文科系の研究成果も、ビジネスや街おこしの参考として大いに役立つと思います。
――サービス体系は?
黒瀬 「Answer Gate」には無料会員向けと有料会員向けサービスがあり、無料サービスでは、検索でヒットしたシーズのタイトルと概要(100字まで)が閲覧可能です。 そのシーズの研究先の大学名を含めて、もっと知りたいという場合、有料会員に登録していただくと、大学のホームページ内にあるシーズデータベースにリンクし、詳細をご覧いただけます。 無料サービスでも、たとえば「空気」というキーワードでヒットしたシーズが、ペット向けの製品に応用できるかどうかなどを知ることができますが、有料会員から「そのシーズは赤ちゃん向けの製品にも使えるか」という問い合わせがあり、よりマッチしたシーズが「Answer Gate」のデータベースに登録されている場合、当方からメール等を通じてそのシーズをご紹介します。 さらに必要に応じて、会員企業の製品指向や営業戦略に沿う付加価値が提供可能な大学の専門分野や専門教授とをマッチングする「教授のお墨付き」サービスをご提案します。
――サービス展開のスケジュールはどうなっていますか?
黒瀬 2020年12月7―9日に東京ビックサイトで開催される「中小企業 新ものづくり・新サービス展」にWeb出展。 次いで、来年1月18日に「Answer Gate」を正式にスタートする予定。当初は無料会員サービスのみで、シーズのタイトルおよび概要100文字まで閲覧可能。来年夏には有料会員サービスを開始します。将来的には、登録企業から大学への研究開発の協力依頼や、大学から個別企業および特定業種へのシーズ提案にも対応。有料会員企業には自社で興味関心のあるカテゴリーを登録していただき、それにマッチしたシーズを当方からダイレクトに紹介していく予定です。
難解な研究シーズを企業目線でわかりやすく解説
――経営者やビジネスマンでも、難解なシーズのイメージをつかめる平易な解説を加えているのが大きな特徴です。
黒瀬 たとえば「形状最適化解析」という大学側のシーズ名を、ライターが「技術者の勘に頼らない部品設計を実現する」というタイトルに書き換え、その概要をわかりやすく解説しています。 島倉 「Answer Gate」のデータベースに登録されている大学等のシーズのリライトや解説を、私と関戸の2人のインターン生が担当しています。実際にリライトした文章を添削してもらうと、毎回赤字だらけになって戻ってきます(笑)。 いつも意識しているのは、研究者が見ている視点と企業の皆さんが見ている視点は大きく異なるということです。私たちは大学生でもあり、シーズ名や概要をリライトする際、研究側に引きずられがち。そうした中でも企業目線を失わず、自分たちがリライトした文章を、「専門知識を持たない企業の皆さんがどう受け取るか」を、私も関戸も想像しながら作業を進めなければならないところが難しいですね。
産学連携を通じて生まれる成果
――貴協会が進める産学連携事業で、最近どんなマッチングの実績がありますか?
黒瀬 たとえば先にも触れた「教授のお墨付き」サービスで、大きく動いている防災分野の事例があります。 お客様は国内で防災建築などを手がける建設業の企業で、2017年から同サービスを活用し、東北大学で都市防災の研究を行っている教授の監修を受け、防災シェルターを開発しました。 当初は商品開発が主な目的でしたが、産学連携を通じて教授たちとの交流を深める中で、同社社長が大いに刺激され、防災意識向上のための啓蒙活動の必要性を痛感。2020年10月に東北大学、東京大学など10大学の教授が参画し、NPO法人の設立に至りました。
「note」を活用しプラットフォームの周知を図る
――これから「Answer Gate」の認知度をどう高めていきますか?
島倉 「note」という文章、写真、音楽、映像などの配信サイトを利用し、私と関戸で「Answer Gate」のPRを始めました。「キャリアの地図(presented by Answer Gate)」というページで「産学連携の現状とその可能性」や「既存企画とAnswer Gateの違い」などの記事を掲載しており、今後コンテンツを増やしていく予定です。 「キャリアの地図」ではそのほか、学生を対象に中小企業の認知度を高めることを目的とした経営者へのインタビュー記事も掲載。実際に企業で働いている人にも話を聞き、働くとはどういうことなのか、働くうえでどんなことを意識していけばいいのかということを、就活生に伝える情報発信サービスを運営しています。
2人のインターン生が、「Answer Gate」のデータベースに登録されたシーズ名のリライトやシーズ概要の解説、同サイトのPRを担当。左から、中央大学商学部2年の関戸優紀氏、明治大学経営学部2年の島倉雄哉氏
――抱負を聞かせて下さい。
黒瀬 「Answer Gate」は、大学側での新たなシステム構築を必要とせず、既存のシーズデータベースにつながる窓口です。大学の最新の研究成果が一般にも広く認知され、応用される裾野を広げるためのお手伝いをしていきたいですね。
「取材・構成 ジャーナリスト 加賀谷貢樹」
大学卒業後、ラジオ・テレビなどのレポーターからマスコミ関係の仕事に従事。2011年、ソフィアプランニングを設立し代表取締役に就任。2014年、産学連携推進協会を設立。代表理事に就任し、現在に至る。

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