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【学生シーズ特集】ぴっ鳥帽:密着中の安心感を提示する帽子型デバイス

産学連携情報

電気通信大学  情報理工学域1類メディア情報学  3年 水田柚花

【学生シーズ特集】ぴっ鳥帽:密着中の安心感を提示する帽子型デバイス
概要:本提案では長時間の接触を通し安心感を与える新しい装着型生物感提示とそのプロトタイプを提案する。

詳細内容


・はじめに
 生物との触れ合いに癒し効果があることを利用して、機械等に生物らしさを付与してユーザに親しんでもらう試みが多く行われている。視覚的に生き物らしさを付与する他に、肌ざわりや柔らかさで生物感を表現する触覚的な提示も行われている。本提案では、接触面での生物感提示とそのプロトタイプを提案する。具体的には、生物との長時間の接触を再現し、一体感、相棒感、見守ってくれている感じをユーザに感じさせることを目指す。例えば、猫が膝の上で寝ているとき、猫との接触面である膝から猫の存在を感じてほっと安心する。(図1)また、アニメなどでは小動物のようなキャラクターが、主人公の肩の上に乗って相棒のように一緒に冒険している。このような、長時間触れていることで感じる安心感や相棒感の提示を提案する。また、そのプロトタイプとして、親鳥とたまごの長時間接触中の安心感を提示する帽子「ぴっ鳥帽」を提案する。なお、本プロジェクトはプロジェクトの立案段階から武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科の学生と連携して進めているものである。
・提案
 我々が提案する「生物との長時間の接触による安心感」の再現には、体温、適度な重さ、呼吸を感じる動きの3つの要素があると考える、今回は、中でも最も重要であると考える呼吸を感じる動きに着目して実装した。また、生物との長時間の接触は、寄生されている感じなどの不快感を生みかねない。これを防ぐために、外装をかわいらしくして、体験前にユーザがデバイスに対して良い印象をもつようにする。また機械音をなくし馴染みやすくする。さらにデバイスの形は、長時間の接触を必要とするため、何か他のことをしながら体験できる装着型が適している。装着時に他の動作の邪魔にならない場所として、肩の上や首回り、頭がある。今回は最初のプロトタイプとして頭を取り上げ、帽子型のデバイスにした。帽子型にするにあたり、親鳥がたまごを温める様子を模して、頭上の鳥がたまごを温めるようにしユーザの頭を温めてくれるイメージにして「ぴっ鳥帽」と名付けた。次項にそのシステム構成を示す。
・システム構成
 今回制作したプロトタイプについて、次ページの図2に外装デザイン、図3にシステム構成を示す。外装は、たまごを温める親鳥を模して、ユーザの頭を覆う大きな鳥のように見えるデザインにした。フェイクファーで覆うことで、見た目のかわいらしさと手触りの良さを実現した。この外装は武蔵野美術大学の学生により、デザイン・制作された。生物感提示には、伸縮するばねの形状記憶合金BioMetalアクチュエータを用いた。ユーザ頭部に触れるクッションの四隅にこのばねをつけ一定間隔で縮ませることで、頭上の鳥の腹部が呼吸で膨らんだり縮んだりしているかのような感覚提示を試みた。また、帽子内部にVp2振動子を組み込み、呼吸音に似た生物的な振動を再現した。さらにVp2振動子からランダムなタイミングで鳥の鳴き声を再生し、鳥らしさを加えた。
・プロトタイプ実験とフィードバック
 今年3月のインタラクション2018にてデモ発表を行い、実際に多くの人にプロトタイプを体験してもらった(図4)。「良いコンセプトだと思う」という誉め言葉の他、動きや他の機構に関するアドバイスを得た。動きについては、「ユーザの呼吸とリンクなど、インタラクティブにするとよいのでは」「より力強く筋肉的な動きだとより良い」「唐突な動きがあると生物感が増す」との意見があった。動き以外については、重さや温もりの実装があるとより良いとの意見もあった。また、「リスの尾などで首回りの接触を再現してはどうか」「『生き物に触れるとどうして安心するのか』を調べると研究がより深くなるのでは」との意見があった。これらの意見は今後の新しいプロトタイプ制作に活かしていく。
・関連研究
 本提案と関連する研究としてMummy Tummy〈1〉がある。これは、妊婦が感じる体の変化や胎児の成長を早送りで疑似体験できる腹部装着型デバイスである。母と胎児の関係は、本提案が着目する「長時間の接触状態での生物感」と似ている。しかし、Mummy Tummyは本来10か月にわたる妊婦体験を短時間で体験させている。そのため、接触状態が長時間続くことを重視している本提案とは異なっている。
・まとめと展望
 本提案では、、「生物との長時間の接触による安心感、相棒感」の提示とそのプロトタイプ「ぴっ鳥帽」を提案した。今後は、今のプロトタイプの改良と、新しいプロトタイプの制作をして、「生物との長時間の接触による安心感、相棒感」の提示の有効性を検証していく。具体的には、より力強く筋肉的な呼吸感提示の調査、重さや温もりなど他の要素の提示、首回りなど他の部位への装着を行っていく。商品化も視野に入れて、よりしっかりとした提示ができるデバイスを目指す。
 <参考文献>
〈1〉 Takayuki Kosaka,Hajime Misumi,Takuya Iwamoto,Robert Songer,and Junichi Akita.
“Mommy Tummy”a pregnancy experience system simulating fetal movement.2011.
※図1、3、4については、産学連携推進協会のサイトを参照ください

【お問い合わせ】

さらに詳しい内容は、一般社団法人産学連携推進協会へお問い合わせください。

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