■継手技術で新規市場を創造
風呂場の専用アームにぶら下げたボトル。下部の樹脂部分を指で押さえシャンプーなどを取り出す
シャンプーやリンスなどを節約しながら楽しいバスルームを実現するエコボトルが6月に誕生する。仕掛けるのは、産業用ガスを制御する機器「流体継手」の設計・製造を手がける老舗の三輝(東京都大田区)。培った継手技術で水回り用品の新規市場を創造し、収益の柱に育てたい考えだ。
同社は1968年の創業以来、OEM(相手先ブランドによる生産)を中心に流体継手の製造で実績を積む。主力は、金属の溶接や切断に使う可燃性ガスを供給するガスボンベとバーナー(燃料供給装置)をつなぐ製品。毎月10万個を超えるペースで生産し、工業用ガス器具メーカーに納めてきた。
そこで培った技術を生かし、2009年に商品化した日用品が「詰め替えそのまま」と名付けたノズル(液体噴出装置)。これを、シャンプーなどの毛髪・全身用洗剤が入った詰め替え用パックに装着すると、使いたい分の液体だけ取り出せる。
具体的には、パックの注ぎ口を切り取り、そこにノズルをワンタッチで差し込みレバーを閉じる。次に、パックの反対側の隅を「フック」に固定して専用アームなどにつるす。
その後、ノズル前方にあるポンプを指で押すだけで適量が取り出せる。ポンプ部分には、継手製造で蓄積した「ガスの逆流を防ぐ技術」を応用した。
詰め替え用ボトルを不要にすることで環境問題に貢献できる上、詰め替えに伴いボトルに発生するカビを気にしなくてすむ。これに続く第2弾が、今回の「フロートボトル」だ。
新商品は、第1弾のポンプを役立てたボトル。シャンプーなどを入れた3つのボトルを、アームに通したフタに固定する。ボトルには、半透明の樹脂を採用しているため、液体の量を確認できるという。
1回の指の操作で放出する液体は約3ミリリットル。通常のシャンプー入りボトルは6ミリリットル程度が抽出されるため、液体の無駄な使用を減らせる。ボトル(3個)とアームを組み合わせ6000円前後で発売予定。年間で1万2000個の販売を目指す。
一般消費者と向き合う「BtoC」ビジネスの効果について阿部雅行代表取締役は「モノづくりの楽しみを社内で共有して組織を活性化できる上、企業ブランドの認知度や親近感を高めやすくなる」と話す。
目標は、日用品事業を売上高全体の5割を占める事業に育てること。4月に創業45周年を迎えた同社は、新たな歴史を刻むための成長戦略を着々と実践しつつある。(臼井慎太郎)
「フジサンケイビジネスアイ」