八楽の坂西社長(左)。英語以外にも中国語など多言語のニーズに応える翻訳サービス「ワールドジャンパー」を展開する
海外に進出する際には、ウェブサイトを通じて自社の取り組みをいかに訴求できるかが、重要な鍵となる。しかし言葉の壁は厚く、中小企業にとって英語に翻訳する作業は決して容易ではない。また、多言語化に対するニーズも増えており、ハードルがますます高まるのは必至だ。こうした流れを受けて注目を集めているのが、八楽(やらく)(東京都渋谷区)が提供する翻訳サービス「ワールドジャンパー」だ。
ウェブサイト上では、多言語化が著しい。八楽によると“台頭”しているのは中国語だ。英語のシェアは2000年の39%から10年は27%に低下したのに対し、中国語は9%から23%へと大きく伸びた。
ワールドジャンパーの特徴は日本語、英語、中国語、韓国語に対応したサイトを、最短1日で完成できる点。過去に翻訳された数百万事例に及ぶデータベースに基づき、機械翻訳、クラウド上を通じた人間翻訳を組み合わせることで「完全な文書とする」(坂西優社長)ことが売り物だ。効率性が高いことからコストも安い。すべて手動で行う翻訳会社は100万~500万円程度を要するのに対し、ワールドジャンパーは20万~120万円で済む。
すでに30社ほどがサービスを導入しており、ビジネス面での実績も残している。
例えば精密機械メーカーの場合、主要取引先であった大学の研究機関が予算縮小を強いられたので、海外市場の開拓に迫られた。ただ、同社の事業説明は、日本語でも難しい分野。そこで一般的な翻訳会社に見積もりを依頼したところ、数百万円との回答だった。あまりにも高価だったため、八楽の評判を聞きつけ、発注した。その結果、コストは半分で済み、海外市場からの信用力も確保。新規顧客の開拓にもつながっている。
材料の角張った部分をなめらかにするバリ取りの有力企業は、翻訳会社から八楽のサービスに切り替えた。コストが安く、翻訳の追加作業も手軽に行えるからだ。
一方、東京に拠点を置くビジネスホテルは、年々日本人の宿泊客が減少している点を考慮。多言語対応のサイトで、10%程度だった外国人比率の拡大を目指す。このほかにも、とくに東南アジアで人気が高い日本のお菓子の商品情報翻訳に対するニーズも高まっているという。
ワールドジャンパーはこれまで、情報発信分野に特化したサービスを展開してきた。これから本格的に着手しようとしているのが「『取引を行いたい』といった要請に的確に応じるコンタクトの分野」(坂西社長)。また、ツイッターなどSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)にも積極的に対応する考えだ。
「フジサンケイビジネスアイ」