中小企業基盤整備機構 高田坦史理事
■海外事業 ジェトロと相互補完
中小企業基盤整備機構(中小機構)の新理事長に、元トヨタ自動車専務の高田坦史氏が就任した。同機構としては、初めての公募による選出で26人の中から選ばれた。国は中小企業による海外事業の拡大を積極的に支援しており、高田氏が培ってきたマーケティングや販売などの経営手腕に期待が集まる。高田理事長に海外進出支援の方策などについて聞いた。
◆新たな需要取り込み
--就任に際しての抱負を
「日本には420万社の中小企業がある。数でいえば全法人の99.7%を占め7割の雇用を維持している。まさに日本経済そのもの。中小企業に活力がないとわが国の経済は元気にならない。中小機構は、中小企業の政策全般にわたって支援し実施する唯一の総合的な機関。中小企業に元気になってほしいという思いを第一に、業務に取り組んでいく」
--ただ、中小企業を取り巻く環境は決して楽観視できない
「円高に国内経済の縮小、高齢化に伴う人口の減少問題…。確かに難しい問題をたくさん抱えている。単に従来の政策を続けるだけでは対応が難しいというのが現状だ。その意味で、これからはどういった政策が効果があるのかを、真剣に考えていく必要がある」
--一方で、中小企業の海外進出が活発化している
「円高によって大企業が海外展開を加速する中、中小企業が行動を共にすれば空洞化につながるという議論がある。しかし、外に出ていって新しい需要を取り込みながら成長していけば、日本にお金が環流される。結果として経営の安定化につながり、新たな研究や事業に着手できるようになる。こうした視点で取り組んでいけば、そんなにマイナスになることはない。国内にいるだけでは出口はなかなか見えない。海外に活路を見いだすことはチャンスだと受け止めてほしい」
◆マッチングにも注力
--こうした動きに中小機構としては、どのような形で関わっていくのか
「海外支援については、まだ手探りの部分が残っている。一方、日本貿易振興機構(ジェトロ)は経験豊富で、大企業が海外進出するのに当たって、お世話になり、今は自前で進めている。しかし、中小企業にノウハウがそのまま適用できるとはいいにくい。このため、われわれとお互いに補完できるようにすることが一番良いのでは。実際にジェトロの助けを求めながら海外でのマッチングにも力を入れている。ただ、これだけではスピードが足りない。進出しようとする国で、どういった人・企業があるのかといった情報のネットワークをどれだけ持てるかがカギとなる」
--中国での反日デモなど、海外進出での不安要素が顕在化している
「100年、200年の歴史を誇る日本の中小企業は、結構たくさんある。海外では、こうした長寿企業に対して高い評価を与え、強い関心を持つ傾向が強い。他の企業がまねできない品質やデザイン、技術力を兼ね備えており、商品力も差別化が図られているからだ。例えば中国の場合、中小企業をどのようにして元気にするかが大きな国家政策となっており、こうした日本の中小企業の施策を参考にしたいという思いが強い。一緒にセミナーを開催したいといった話も寄せられる。周辺国とはビジネスを通じて、しっかりとしたパイプを形成していけるようにお手伝いしていきたい」(伊藤俊祐)
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【プロフィル】高田坦史
たかだ・ひろし 神戸大経卒。1969年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)。取締役、専務、トヨタアドミニスタ会長、トヨタモーターセールス&マーケティング社長などを経て2012年7月から現職。65歳。静岡県出身。
【会社概要】中小機構
▽本部=東京都港区虎ノ門3-5-1 虎ノ門37森ビル
▽設立=2004年7月
▽資本金=1兆1225億円(12年6月現在)
▽職員数=805人(11年8月現在)
▽事業内容=中小企業施策の総合的な実施機関。創業から事業再生、災害対策などのセーフティネット(安全網)まで、企業のライフステージや課題に合わせた支援体制を整えている
「フジサンケイビジネスアイ」