3月に千葉・幕張で開催されたフーデックス・ジャパンの“SEKAIKIZUNA”ブース
3月に千葉・幕張メッセで開催されたアジア最大級の国際食品・飲料展「フーデックスジャパン」。その一角に「SEKAI KIZUNA」という大型ブースが登場した。仕掛け人は中小企業基盤整備機構(中小機構)。蔵元や食品メーカーなど41社が結集し、日本酒やケーキ、海産物の加工品など隠れた名産品の売り込みを図った。
主なターゲットは海外のバイヤーだ。日本市場は成長が見込みにくいので、海外で新たに販路を開拓したい。しかし、進出のノウハウは持ち合わせていない-。そんな中小企業の現状を踏まえた形で中小機構がブースを用意した。通訳も配置して万全な形で支援を行い、商談を進める光景が繰り広げられた。
2月に東京ビッグサイトで開かれたナノテクノロジーの展示会でも、13社による同様のブースを用意。出展者の間からは「東南アジアからのニーズが高まっているが、自社単独で対応するには限度がある。中小機構は熱心に対応してくれて助かる」といった声が聞かれた。
中小機構は、国際化を進める中小企業を対象とした支援活動に力を入れる。その一つが専門家による個別アドバイスだ。
課題を聞き、フェース・トゥー・フェースで懇切丁寧に対応することを売り物としている。2011年度の実績は前年度を1割程度上回って約3000件となった。これと並行する形で推進しているのが、国内・海外展示会への出展支援だ。
こうした支援活動は、ジェトロ(日本貿易振興機構)も積極的に行っており、そのスキームを活用して商談をまとめる中小企業も少なくない。
一方の中小機構のスタンスは「海外進出の意欲はあるものの、『どういった準備を行ったらよいのか』といったことも分からない顧客が対象」(国際化支援センターの新保章・海外展開支援課課長)という。
海外展示会の場合、ジェトロと連携しながら、約半年間にわたって綿密にサポートしていく。成約に結びついたケースは11年度の場合、海外が50件で国内は230件。新保課長は「成約だけでなく、来場者の反応を見て改良につなげるといった効果もある」と語る。
展示会だけではなく、FS(事業化調査)など、一歩踏み込んだ支援にも着手し始めた。FSは、専門家が携わり、部材調達などを含めて現地で成功するかどうかをチェックする。海外展示会を契機として引き合いがあり、新たな国での展開を見据えて、FSを依頼する企業も徐々に増えてきた。
中小企業の間で、海外進出を目指す動きが、加速するのは必至。こうした動きに対応するため、中小機構が課題に掲げているのは各企業内での人材育成だ。このため、10月から中小企業大学校を通じて、海外展開事業の責任者を対象とした研修をスタートさせる。
「フジサンケイビジネスアイ」