ヴィノスやまざき専務 種本祐子氏
はやいもので、このコラムでの私のエッセーも、今回が最終回となった。最後に、私が18年前に直輸入を始めたワインのことを振り返ってみたい。
お客さまのために「無名の産地でも安くておいしいものを」という気持ちで、初めて銀行から借り入れをしてワインを輸入した。6カ月で売る予定だったが、1カ月で完売した。そのワインこそが、フランスの蔵元「シャトーレゾリュー」のワインだ。
当時、日本のワイン市場では、フランスワインのほとんどが、ボルドー、ブルゴーニュといった有名産地のものばかりだった。安いワインといえば、生産地を特定しないブレンドワインに限られていた。
そんな時に「柔らかでなめらかでおいしい赤ワインが飲みたい。しかも1000円台で」というお客さまの声に、当時は無名だった南フランスのラングドック地方に買い付けに行った。そこで見つけたワインが、コルビエール村のシャトーレゾリューだった。
ラベルが赤かったことから、レゾ赤のニックネームで呼ばれるようになった。何の宣伝もしなくても、リピーターの口コミのおかげで、当社の売り上げナンバーワンの赤ワインとなった。実は、この蔵元のオーナーは、すぐ近くにもう1つの蔵を所有している。それがシャトーオリューロマネである。シャトーレゾリューとは違う土壌、違うブドウで、樹齢100年という古木から造られる濃厚で濃密な味わいのワインだ。
シャトーレゾリューのオーナー、ピエール・ボリー氏(右)と筆者
数年前に、このワインも扱いたいと希望したが、それはかなわなかった。シャトーレゾリューを買い付けに来る企業が後を絶たず、直輸入が困難だったからだ。しかし、この春から、やっとこのワインを扱うことができるようになった。待っていてくれたお客さまも多く、本当にうれしい。
当社は来年で創業100周年を迎える。いいワインを造るのには、何十年、何百年もかかる。まもなく当社も新入社員が入社するが、いいブドウの樹のようにじっくりと根を張った人材に育ってほしい。当社もそんな会社になりたい。
【プロフィル】
種本祐子
たねもと・ゆうこ 静岡県生まれ。1987年、実家のやまざき酒店に就職。88年にヴィノスやまざきを設立。日本ソムリエ協会認定シニアワインアドバイザー。
「フジサンケイビジネスアイ」