千葉・幕張メッセで6月に開かれたIT関連の展示会では、監視ソフトをアピールした
IT(情報技術)サービス企業のコムスクエア(東京都江東区)が、2つの新規事業を順調に伸ばしている。成果報酬型の広告を電話に応用した「ペイパーコール」は、利用店舗が5万店を突破。また、サーバーやネットワークを監視するソフトウエア「パトロールクラリス」は導入企業が600社を超えた。合わせて売上高の約80%を占める主力事業に育っており、海外展開も検討している。
ペイパーコールは、インターネットのサイト上に表示された「予約専用番号」に電話を掛けてきた利用者が、どの広告やサイトを閲覧したかを把握できるシステム。専用番号はネット上でページが表示されるたびに自動的に変更され、閲覧者の固有番号となるため、サイト運営側は利用者が情報を閲覧した日時や、ポータルサイトで検索したキーワードも追跡できる。
サイト運営側は広告を出す店舗から固定的な費用を取らず、電話が掛かってきた回数に応じた成果報酬だけを請求する仕組みも可能。間違い電話を除くため15秒以上の通話だけを課金対象とし、広告料を1回当たり1000円にするといった運営方法も柔軟に設定でき、店舗側も費用対効果のメリットが大きい。
コムスクエアは通話の転送や録音サービスも提供し、専用番号への入電回数に応じてサイト運営側に課金する。サービスは2003年に始め、ポータルサイト国内最大手のヤフーの「Yahoo! ロコ」や結婚式場情報サイトの「みんなのウェディング」などが導入。専用番号への入電回数は累計1490万件に達し、「間もなく1500万件を超える」(上嶌靖社長)という。
一方、パトロールクラリスは通信障害やウェブ改竄(かいざん)といった50以上の異常を検出。管理サーバーにセットすれば、監視する機器1台ずつに専用プログラム(エージェント)を導入する必要がない「エージェントレス型」のうえ、操作が容易なことから運用者の人件費も抑えられ、導入した企業では監視費用が従前の半分になったという。
「ウェブサービスの監視に優れ、大手メーカー系が開発した従来のソフトではカバーできない監視項目も少なくない」(上嶌社長)と、製品の優位性は高い。05年の販売当初は低調だったが、ニフティやKDDIなど大手企業が相次いで導入したこともあり、事業の年間売上高は倍増ペースで伸びている。
同社の11年9月期の売上高は約10億円で、12年9月期は20%増の約12億円を目指す。パトロールクラリスは英語版も開発。パートナー企業と組み、12年から海外でテスト販売に乗り出す構えだ。(村山雅弥)
「フジサンケイビジネスアイ」